Up Cycle Circular’s diary

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【脱炭素で苦境の太陽光発電】大型倒産が相次ぐ予想とその理由

 

 電力のまったくない土地に、一から電力インフラを構築しようとしたら、どんな仕組みを作るのだろうか。化石燃料が豊富に産出される地域でなければ、わざわざそれを輸入し、活用しようなんて考えないのだろう。まして、最近では、世界のほとんどの国や地域で、再エネが最も安い電力になっているという。その土地の条件に見合う再エネを導入するのが極めてリーズナブルなことなのだろう。

 しかし、FIT 固定価格買取制度が足かせになり、国内の再エネ価格は高止まりし、未だに石炭が最安値だという。朝日新聞GLOBE+は、FIT制度が導入された当初、高額の認定を受けながら、太陽光パネルなどの導入コストが安くなるのを待ってから稼働する事業者が相次いだことを指摘する。

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 なんともお寒い話だ。企業として儲けることはできるかもしれないが、それが自分の家の光熱費を高くし、国民みんなに迷惑をかけ、地球温暖化防止まで邪魔することになる。 「公正」のかけらもないのだろうか。

 

 

 太陽光発電所の建設を規制する条例が相次いでいると朝日新聞が報じる。この2年あまりで2倍以上になり、規制を設ける自治体の数が146市町村にのぼるそうだ。エネルギー白書が指摘するように、もともと敵地不足なのに無理して拡大しようとすれば、環境破壊につながる開発が多くなっているということなのだろう。

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 太陽光発電施設による土地改変の実態を、国立環境研究所が明らかにした。

 0.5MW以上の発電容量をもつすべての太陽光発電施設を地図化し、規模や分布の特徴を調べたという。それによると、二次林や植林地、草原、農地など、里山の自然に該当する場所で建設が多いことがわかったという。また鳥獣保護区や国立公園など、自然環境の重要性が認識されている場所でも、1,027の施設があり、その面積は約35 km2になるという。

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パネルが設置されやすい場所を、気象条件、地形、社会的条件に基づいて予測するモデルを構築し、将来の再生可能エネルギーの導入拡大に伴う生態系の損失面積を予測した結果、自然保護区での建設規制や都市への誘導策により、樹林・草原・農地の損失が抑制できることが示されました。 (出所:国立環境研究所)

 自治体規制があって当たり前なのだろう。

 朝日新聞太陽光パネル関連事業者の声を伝える。自治体の規制条例で「計画を途中で断念した案件もある」、「計画の中身で判断するのではなく、開発そのものを制限してしまうところもある。ある程度の基準がないと、長期的な事業の安定性が揺るがされかねない」と不満を述べているという。

 また、関係する企業でつくる「太陽光発電協会」は「地域ごとにバラバラの条例が林立していると、調査や手続きが煩雑になる」と懸念し、太陽光発電は風力や水力と比べると準備にかかる時間が短く、「足が速い太陽光のメリットがそがれかねない」と話したという。

「公平」であろうとの意識はあるのだろうか。

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  一方、その太陽光発電協会は、報道とは逆に「太陽光発電+蓄電池の組み合わせは、「分散型エネルギー」としてのポテンシャルが大きい」といい、「国のグリーン成長戦略の達成に向け、最大限貢献してまいります」と表明した。

地産地消型電源の普及拡大による緊急時対応力の強化」、「ポジティブゾーニングの浸透と地方経済活性化による地域との共生」とまで、意見表明している。

 環境を守ろうとする条例に不平をいう理由はないのだろう。

 

 

 環境省は、都市型の太陽光発電を促進しようとしているのか、自家消費型の太陽光発電を搭載した「ソーラーカーポート」や、水上太陽光電設備の導入を支援する補助事業を行なう。 

 東京ガスは、太陽光発電と大容量蓄電池を初期費用を0円、月額料金で利用できるサービス「あんしんWでんち」を始めた。 

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 初期費用0円の場合、15年契約で月額11,900円、太陽光発電サービス料金が28.30円/kWhで利用できるという。まだ少し高価とも感じるが、無秩序に自然環境に太陽光パネルが設置されることの抑制に役立てばいいのかもしれない。

 

  

 そうした中、再生可能エネルギー事業のテクノシステムが倒産した。

 帝国データバンクによれば、電力買い取り価格の低下に比例する形で粗利益率が低下、発電用地の先行取得に伴う年商規模の借り入れ負担も重荷となっていたという。

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 この間、多数の取引金融機関から資金調達して繰り回していたが、次第に資金繰りに支障を来すようになり、2020年以降、取引先への支払遅延や返還金請求訴訟が散発していたという。

 この件に絡んで、SBIホールディングスの子会社SBIソーシャルレンディングが廃業した。これら会社が太陽光発電事業に取り組んだ動機とは一体何であったのだろうか。

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(資料:帝国データバンク

 こうしたことは氷山の一角なのだろうか。

 帝国データバンクによると、ここ最近、太陽光関連業者の倒産が高止まっているという。

年々引き下げられてきた産業用の買取価格は13円、家庭用も21円まで低下。コスト低減も進んでいるため、10%前後の一定の投資利回りは確保されているものの、この数年来、市場の縮小傾向が続いている。

2022年春に予定されているFITに替わる新制度、FIP(発電事業者が自ら電力市場で電気を売り、市場価格にある程度連動した補助金を受け取る)で市場原理が導入されれば、淘汰は一段と加速しかねない。(出所:帝国データバンク) 

www.tdb.co.jp

「脱炭素社会の掛け声が強まるなか、本来なら再生可能エネルギーの主役たるべき太陽光関連業者のこの現状はまことに心細い限りだが、自家消費型への転換やコーポレートPPA(発電事業者と、新電力や最終需要家の長期・固定価格の売買契約)の本格普及、更なるコストダウンによる価格競争力の向上が市場再活性化の鍵となるだろう」とTDBは指摘し、「関連業者もこれまでの成功体験に捉われることなく、大胆に、柔軟にビジネスモデルを変化させていく必要がある」という。 

 公正・公平を旨とする業界になることはできるのだろうか。健全化に向かえば、再エネ価格も適正化されていくのかもしれない。

 

www.nikkei.com