国内の鉄道会社で初めて東急電鉄は4月から、電車の運行に使う全電力を再生可能エネルギー由来に切り替えたといいます。
年間延べ8億人超の利用客が「温室効果ガスを排出しない」電車に乗り始めたと東京新聞はいいます。東横線や田園都市線など全8路線 計104.9kmが対象になっているそうです。
「実質100%再生エネ」電車…どう実現? 東急電鉄の全線で脱炭素化、温室効果ガス排出ゼロへ<まちビズ最前線> :東京新聞 TOKYO Web
短期間で「100%再生エネ化」を可能にした仕組みは、発電事業者から購入した「環境価値」によるものといいます。
環境価値とは「二酸化炭素(CO2)を排出しない」といった再生エネなどの長所に価格を付け、売買できるようにしたもの。石炭で発電しても環境価値を組み合わせれば、CO2を出さない「実質再生エネ」の電気とみなされる。環境価値がつくられた再生エネ発電所を特定することもできる。(出所:東京新聞)
東急電鉄によれば、この結果、年間で約165,000t-CO2を削減できる見込みといいます。
国がカーボンニュートラル宣言を行ったことのよい影響といっていいのでしょうか。共感でき、協力できる目標があれば、ことは目標に向かって前進し始めていくという典型例なのでしょうか。
東京新聞によれば、この他にも、敷地内に太陽光や風力の発電設備、蓄電池などを設け、電車のブレーキによって生じる回生電力も利用、消費電力の少ない新型車両をいち早く導入し、照明の発光ダイオード(LED)化や空調の効率化なども図るといいます。
こうした省エネ施策で消費する電力を低減できれば、発電する電力も抑制できます。また、設備が省エネタイプに更新されることで、経済活動の活発化にも貢献できるのでしょう。
カーボンニュートラル宣言、それはきっかけに過ぎなかったのかもしれませんが、きっかけがあれば、そこから新しいビジネスのアイデアが芽吹くのかもしれません。これまではみなが共感できるきっかけつくりができていなかったのでしょう。
太陽光発電所を運営するクリーンエナジーコネクト(CEC)が、休耕地などを活用して国内約700カ所に太陽光発電所を開設、発電した電力をNTTに供給するといいます。NTTも自前で太陽光発電所を運営しているといいますが、CECに開発の一部を任せて電源開発のスピードを速めるそうです。
伊藤忠系、NTT専用の太陽光発電所 約700カ所新設: 日本経済新聞
CECが設ける発電所は出力100キロワットほどとメガソーラーの10分の1以下の規模だ。立地を分散して複数拠点で運営することで、天候不順により発電量が急減するリスクを抑える。開発にかかる期間は約1年とメガソーラーより約8割短く、土地の造成による環境破壊のリスクも小さいという。(出所:日本経済新聞)
化石燃料は高騰を続け、またそれによる発電は設備の老朽化等によっても不安定さを増しています。それらに頼るよりは、自前の分散化電源の方が信頼さがあるのしょう。
総合商社の双日は、宮崎県など3県で「早生樹」ハコヤナギの植林事業を始めたそうです。成長後に伐採した木は、バイオマス発電用の燃料として利用していくといいます。荒廃した農地などに植林することで、土地の有効活用につなげて地方創生も後押しするといいます。
双日、バイオマス発電向けに植林 成長早い樹木を使用: 日本経済新聞
日本経済新聞によれば、ハコヤナギは成長が早く、植えてから伐採できるまでに5年ほどしかかからないといいます。成長に数十年ほどかかるスギに比べ、バイオマス発電の燃料用の木材として向いているそうです。ハコヤナギを安定的に供給できる国産燃料にしていくといいます。
まずは3県の耕作放棄地やゴルフ場の跡地などで植林する。山間部よりも伐採などの管理がしやすいことから、地方の産業育成にもつなげる。5月末には北海道の十勝地方でも試験的にハコヤナギを植林する。将来的には東京ドーム2100個分以上にあたる1万ヘクタールほどにまで植林の規模を拡大したい考えだ。(出所:日本経済新聞)
気候変動を抑制するために、2050年までにカーボンニュートラルを実現させる。目標が明確で、それが自らの問題とできれば、自ずと解決策は見つかるものです。それが他の社会課題解決に結びつき、なおかつ事業で成立できるのであれば、それこそがサステナビリティということなのでしょう。こうした事例が増えてきたということは、それだけサステナビリティを推進する環境もまた整い始めたということなのでしょうか。日本が再活性するきっかけになっていくのでしょうか。
「参考文書」
日本初、鉄軌道全路線を再生可能エネルギー由来の電力100%にて運行~日々の東急線利用がカーボンニュートラルの実現につながります!~|ニュースリリース|東急電鉄株式会社
双日、宮崎県、山口県、岡山県の3県にて地方創生のための早生樹事業を開始 | 双日株式会社