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10円を切る太陽光の買取価格、価格競争力を持たない再エネ開発業者はどうなるか

 

 再生可能エネルギーのFIT 固定価格買い取り制度での買い取り価格を協議する経済産業省の調達価格等算定委員会が開催され、2023年度の再エネ電源別の買い取り価格案が大筋で了承され、3月末までに正式決定となるそうだ。

太陽光買い取り9.5円、事業用23年度案 初の10円未満: 日本経済新聞

 事業用太陽光発電の23年度の出力: 50kW以上250kW未満の買い取り価格が1kW(キロワット)時あたり9.5円となり、初めて10円を切る。

22年度は250キロワット以上1000キロワット未満の太陽光であれば、安い価格で発電する事業者から順番に買い入れる入札で買い取り価格を決める。

ただ、既築の建物の屋根に太陽光パネルを設置する場合は入札の対象外とし、1キロワット時あたり10円で買い取る。企業の工場や倉庫の屋根への設置を促す狙いだ。(出所:日本経済新聞

 日本経済新聞によると、FIT制度を導入した12年度に40円だった固定買取価格は、25年度には7円まで下げていくことを目指しているという。

 

 

進み始めるか公共施設の太陽光パネル設置

 経済産業省の目論見もあってのことか、建物の屋根に太陽光パネルを設置することが増えているのか、横浜では市立小中学校の屋上などに太陽光パネルを設置することが進んでいるという。今年度中に11校に太陽光パネルを設置し、来年度には最大65校にまで設置を広げていくそうだ。

小中学校の屋上に太陽光パネル設置 校内には蓄電池も 神奈川・横浜:朝日新聞デジタル

 朝日新聞によると、東京ガス太陽光発電の設備を学校の屋上に無償で設置し、学校がそこで作られた電気を購入する。初期費用負担や維持管理をせずに再生可能エネルギーを利用できる仕組みだという。

校内には蓄電池も設置されている。災害などで停電した際には蓄電池からの供給で防災無線や一部照明、コンセントなどを72時間程度使用できるという。

作り出した電気を無駄なく活用するため、4月からは、週末や長期休暇など学校が休みの間に発電した電力を市内の他の公共施設に供給していく。(出所:朝日新聞

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価格競争力を持たない再エネ開発業者

 一方、価格競争力を持った太陽光発電所を建設できる企業が日本には数社しかいないという現状を「EnergyShift」が指摘する。

脱炭素バブルなのに太陽光業界が実はピンチな理由とは | EnergyShift

 EnergyShiftによれば、足もとでは太陽光パネルなど資材費が高騰し、自治体による規制強化も重なり、太陽光発電開発の難易度はあがる一方だという。

 

 

2022年からオフサイト型PPAが本格化し、年間100万kWを超える市場が立ち上がる可能性が浮上している。しかし、再エネ電力が欲しい企業に対して、1kWあたり10円を切るような太陽光発電所をつくれる企業は圧倒的に少ない。こうした事態が常態化すれば、日本企業の脱炭素化の足かせにもなりかねない。(出所:EnergyShift)

 記事を読めば、高価買取のFIT制度を利用した乱開発があったのだろうと想像してしまう。

 一方、経済産業省は「地上設置の10kW未満の申請が急増している」と指摘、「申請内容等を踏まえると、近接した10kW未満の複数設備(地上設置)で認定を取得し、地域活用要件を逃れるため設備を意図的に10kW未満に分割している疑いのある案件が見られる」といい、「地元とトラブルになる事例も生じている」という。

 倫理観を疑いたくなるような実態だ。

 買取価格の低下は企業にとっては切実な問題かもしれない。しかし、価格下落は市場原理からすれば、避けえないことなのだろう。姑息な手段に逃避するのではなく、調達コストの圧縮につとめ、効率化を図り、企業経営を健全化してもらいたいものだ。太陽光発電を増やしていかなければならないというニーズはあるのだから。