Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

苦境の新電力、求められる脱炭素、FIP制度活用は新たな収益になるのか

 

 新電力の倒産が急増しているそうだ。帝国データバンクによると、2021年度の倒産件数が14件と、昨年の7倍になっているという。新電力約700社のうち、約4%に当たる31社が過去1年間で倒産や廃業、事業撤退などを行ったことが分かったそうだ。

新電力の倒産、過去最多の14件が発生 過去1年で累計31社が事業撤退 調達価格の高騰が打撃、供給1メガワット当たりの販売利益は9割超減|TDBのプレスリリース

これまで安値であることを理由に差別化を図り、顧客を獲得してきただけに十分な価格転嫁ができない可能性もあり、現状以上の市場価格上昇に耐えきれない事業者の倒産が今後も発生する可能性が高い。(出所:帝国データバンク

 

 

 倒産した新電力の多くは自前の発電所を持たず、調達の多くを卸市場に依存していたという。安値で差別化を図っていたのであれば、資源価格が高騰するこのご時勢では、厳しい状況であったのだろう。調達する電力が火力由来のものであれば、なおさらであったのではなかろうか。

 今後さらに、ウクライナ危機で世界的なエネルギー需給の逼迫が想定される。資源価格が高値圏で推移するようになれば、化石燃料に頼らない自前の発電設備がなくては、値上げに踏み切れなければ生き残りは厳しいのかもしれない。ただそれでは安さだけを売りにしてきた新電力の魅力は失せてしまう。

ゼロエミチャレンジ

「ゼロエミチャレンジ」という活動を政府が推進しているという。2050年カーボンニュートラルの実現に向けたイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、投資家等に活用可能な情報を提供する政府のプロジェクトだという。

CO₂フリー電気で脱炭素化を加速する[Sponsored] - 産経ニュース

このプロジェクトに挑戦する企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」と位置づけ、2020年度に320社、2021年度に624社の企業リストを公表しているそうだ。産経新聞がこの活動に取り組み企業を紹介している。

 中部電力ミライズはこのプロジェクトに参加し、CO₂フリー電力を販売しているそうだ。この電力を購入する愛知県豊田市の企業は、当初は費用負担が増える電力に興味を示さなかったという。

光熱費が上がる傾向にある中で、「愛知Greenでんき」を入れるとなるとまた費用が上がる。テナントに電気代の増加分を転嫁しにくいという問題がある。(出所:産経新聞

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「愛知Greenでんき」を拡販する中部電力ミライズも、脱炭素に取り組まなければならないと考えている企業は多いが、その導入時期は他の企業の様子を見て考える企業が多数を占めるという。しかし、昨年11月のCOP26を境に潮目が変わったという。

 地球にやさしい環境を作っていくことが、企業の価値向上になるという考えが着実に社会に定着し始めていることを実感したとい。電力会社のビジネスモデルが着実に変化していると、産経新聞はいう。

 

 

FIP開始、新たなビジネスモデルを始める好機になるか

 新たな再生可能エネルギーの買い取り制度FIP(Feed In Premium)が4月1日からスタートした。

 NHKによると、FIPとは、再エネの価格に一定のプレミアムを上乗せて買い取る制度で、大手電力会社による固定価格での買い取りが行われないことになるという。

 これが義務づけられるのは、4月以降に新設される発電所のうち、いわゆる「メガソーラー」と言われる1000キロワット以上の出力がある発電所。高騰するばかりの「再エネ賦課金」の負担を抑えようとして始まった制度と説明する。

再エネの負担減る? 新制度FIPがスタート | NHK

「再エネ賦課金」の制度が始まった2012年は、標準的な家庭の負担は年間684円だったというが、ことし4月以降には1万764円となり、15倍余りに膨れあがっているという。一方、再エネの発電コストは大きく下がり、この8年間で4分の1程度になったそうだ。

 色々な背景、様々な意見があるのだろうが、やはり制度の矛盾を感じずにはいられない。

「これまでは電力会社が再生可能エネルギーを買ってくれていたので、発電事業者はニーズや競争という発想が弱かったといえる」とNHKは指摘し、「これからは市場をより意識した業界へと変わっていく入り口にたっている」という。

電気をつくる人とまとめる人が手を組むことで、利用者のニーズに対応した新しい発想の再エネビジネスが登場しても不思議ではありません。(出所:NHK

 

 

 安さだけで事業を進めていた新電力が智慧を使って、その苦境から脱することにつながっていけばいいのかもしれない。

 安さを提供することも社会的に意義あることだが、そこに何かプレミアムを付加していくことがこれからは求められているのだろう。安易な儲けのためのビジネスではなく、社会課題の解決が何より求められることになるのだろう。

 ウクライナ危機、コロナ禍、様々な危機によって課題ばかりが次から次へと生まれている。誰かが解決に取り組まねば、閉塞感ばかりで息苦しい社会になってしまう。