毎年この時期になると、亡くなった父の山形の実家からさくらんぼが届きます。その年のできの良い品種が届くので、たいへん美味しくいただくことができます。今年はあまり出来がよくなく、また不作だったとの連絡がありました。
朝日新聞が「今年は1996年以来の不作が見込まれて、値段が上がり......」といいます。うなずける内容です。
記事は果物の産地が北へ移動していると指摘します。山形のさくらんぼ農家が北海道富良野で栽培を始めるともいいます。
その背景にあると言われるのが「地球温暖化」、和歌山の南高梅も昨年、過去10年で最少の収穫量で、その影響が指摘されたといいます。
気候危機ということなのでしょうか。送られてきた今年のさくらんぼをいだいて、そうなんだと思うばかりです。
オーストラリアでは、グレートバリアリーフのサンゴ礁が危機的な状況にあり、「危機にさらされている世界遺産」に登録すべきだと国連が勧告したといいます。
グレートバリアリーフは1981年に世界遺産に登録されましたが、近年は、深刻な海水温上昇により2016年、17年、20年とサンゴの白化現象が生じるようになったといいます。サンゴ礁の健全性は損なわれ、そこで生育する動物や鳥類、海洋個体群に影響を与えているとロイターが報じます。
環境保護活動家や研究者たちは、思い切った気候変動対策を打ち出し、地球温暖化ガスの排出量をさらに削減し、環境に優しい経済を生み出す必要があると指摘しているといいます。
こうしたニュースを目にすると、今始まった政府や企業の脱炭素活動はいったい何のためのなのだろうかと考えてしまいます。
気候変動の影響が顕在化しているというのに、今の対策だけでいいのだろうかと心配になります。10年後20年後を見据えた対策も必要なのでしょうが、足下での自然回復プログラムも必要のように感じます。今ある自然を保全することも脱炭素の目的のひとつではないでしょうか。対策に時間が要する間に、自然が失われないよう努めることも求められるはずです。
ナショナル ジオグラフィックは、「ミニ森林」を紹介し、それが世界で広がりつつあるといいます。
土地本来の若木を、間隔を詰めて植樹し、荒廃した土地に短期間で森林を再生させるのが「ミニ森林」、日本の植物学者である宮脇昭氏の活動を始まりだといいます。
1970年代から各地で植樹活動をおこなわれているこの方法では、幅1mの土地があればできるそうです。
「ミニ森林」は、大規模な炭素の固定は期待できません。有効な気候変動対策にはならないものの、生態系を豊かにし、自然の力を利用して都市部での熱波の影響を和らげ、土壌の保水力向上に期待があるといいます。
気候変動の解決は、炭素排出量を削減することだけですとナショナルジオグラフィックはいいます。
消費することを前提した技術開発ばかりでなく、自然回復のための技術開発を加速させるべきでもあると思えます。ミニ森林と脱炭素をセットで進める方法があってもよいのではないでしょうか。
CCUSやDACなど二酸化炭素を回収する技術が開発されています。しかし、CO2自体を上手に利用できなければ、どこかに貯留するしかありません。自然の力に頼った方が遥かに効率的なような気がします。自然は優れた力を有しています。植物は光合成を通して、二酸化炭素を吸収し、炭素を自然の中に貯蔵し、酸素を放出します。この力を利用しない手はないはずです。
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