Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

今必要なのはデジタル産業、そう主張する経産省の「DXレポート2.1」

 

 経済産業省が「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート2.1(DXレポート2追補版)」を公表した。

 正直にいえば、あまり「DX」という言葉は好きでもない。インターネットが登場し、30年以上の歳月が過ぎたというのに、今さらネットの有用性を説くことも時代錯誤が甚だしいと感じてしまうのかもしれない。前提に疑問を感じ、目的と手段を取り違えていないだろうか。

 そうはいっても、気にはなるので、こうしたレポートが出れば、目を通してしまう。国が何らの指針を出せば、否応なしに社会はその方向に引っ張られてしまう。

 

社会全体でデジタル化が進む中、企業としてもこの流れに適応し、データとデジタル技術を駆使して新たな価値を産み出すことが求められており、デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらすのがデジタル産業です。
デジタル産業は、市場との対話の中で迅速に変化する必要性や、1社で対応できない多様な価値を結びつける必要性からネットワーク型の構造となります。(出所:経済産業省

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(資料:経済産業省「DXレポート2.1」)

www.meti.go.jp

「デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらすのがデジタル産業です」

 インターネットが登場する前の社会と比較すれば、デジタルの活用は進んでいるのだろう。完成形などないはずだ。常にテクノロジーは進展する。

 急激に進歩する技術に社会が追い付いていないのかもしれない。手段ばかりも増えても、利用する方法が理解されなければ、意味がない。逆に言えば、社会の要求以上にテクノロジーばかりが進展しているともいえそうだ。 

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データとデジタル技術を駆使して新たな価値を産み出すことが求められており....」

 内容は理解はできるけど、データ重視の姿勢にも抵抗感があるのかもしれない。ネットを利用すれば、リコメンデーションばかり。便利と思うときもあるから、あってもいいのだろうが、あまりにも恩着せがましくなると嫌になる。あっ!と驚く気づきや発見をしたいときに、加工された情報かと思うと興ざめしてしまう。アルゴリズムに支配されたくないと思うのかもしれない。

 ある一定の規制は必要かもしれないが、ネット社会は自由であるべきではなかろうか。

 

 中国では、未成年のネットゲーム依存防止のため、プレイ時間を制限するという。利用できるのは、金曜日、土曜日、日曜日に、法定休日の午後8時から9時の1時間のみプレイ可能とするそうだ。ネットゲームを提供する全ての企業に対し、それ以外の時間は「いかなる方法でもネットゲームサービスを提供してはならない」と要求するという。身分証に紐づいた実名登録も厳格に実施し、従わない企業については「法や規則に基づいて厳粛に処理する」と警告しているという。

 行き過ぎのような気もするが、必要以上に過剰にサービスを提供することが有益とは言い難いような気もする。

 その中国では、個人情報保護法も成立し、11月から施行になるという。

差別的価格設定については、個人情報取扱者が個人情報を自動意思決定〔コンピュータプログラムにより個人の行動・習慣、趣味・嗜好(しこう)または経済、健康、信用状况などを自動的に分析し、評価し、かつ、決定する活動〕のために利用する場合、意思決定の透明性と結果の公正性・公平性を確保し、取引価格その他の取引条件について個人に不合理な差別的な取り扱いをしてはならないと定められた。(出所:JETRO

www.jetro.go.jp

 行き過ぎは何も中国ばかりではないのだろう。「アマゾンは、あなたについても多くのことを把握している」とwiredはいう。

アマゾンのアプリやサイトで何を検索したか、一つひとつのクリック、スクロール、マウスの動きまで、アマゾンのエコシステム内でとる行動のすべてが知られているのだ。(出所:wired)

 そのアマゾンのデータ収集は欧州で問題視され、その個人データの使用方法がEU欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)に違反したとして、ルクセンブルクのデータ保護当局が罰金4億2,500万ドル(約466億円)を科す用意があるという。

wired.jp

 個人的にトラッキングされたくないと強く思うが、ビジネスの立場にあればその利用を考えてしまうかもしれない。

 誰もが「データ、データ」「データ取集だ、データ収集」といい、それがあたかも金脈かのように語られる。そんなビジネス慣習に多少嫌気がさすこともあった。そう思うと、中国の規制強化も悪法とは言えないのではないかと感じる。

 

 

 WWW、ワールド・ワイド・ウェブを考案したのはティム・バーナーズ=リー。彼の働きがあったから、今日のネット社会があるといってもいいのだろう。

「ウェブは地球全体へと広がり多くの革新を生み出した一方で、憎しみを拡散し、違法行為を容易にもしている」とwiredは指摘する。

wired.jp

「個人情報を巡る自らの権利を主張することなく、ただやみくもに「同意する」をクリックするようなことも止めなければらならない」とバーナーズ=リーはいう。

 デジタル産業には、まず規範が必要ということなのだろう。