世界の畜産・酪農大手20社が排出する温室効果ガスの量が、ドイツや英国の経済活動による排出量を上回っていることが、欧州のNGOが公開した報告書でわかったという。
温室効果ガス排出量、畜産・酪農が独経済活動上回る 写真1枚 国際ニュース:AFPBB New
AFPによると、畜産・酪農大手20社の温室効果ガスの排出量は二酸化炭素換算で9億3200万トンにもなるという。このうち4分の1以上はブラジルの世界的食肉加工大手JBSによるものだったそうだ。これと同じ測定基準で計算すると、ドイツ全体の排出量は9億トン余り、フランスや英国の排出量はその半分程度となるという。
畜産の温室効果ガス排出量はの世界の全排出量のうち14.5%占めているというが、食肉需要は減少するのではなくまだ増加傾向にあるという。食肉生産量はこの先も増加し、2029年までに、現在の3億2500万トンから、さらに4000万トン増加すると予測があるそうだ。
ぞっとする、おそろしいニュース。いくら二酸化炭素の排出削減に努めても、これでは台無しになってしまいそうだ。
そればかりでない。このために飼料用大豆などの増産も必要になる。すでに約120万平方キロもの農地が大豆の生産に割り当てられ、その9割以上が飼料になっているが、大豆需要の増加が満たすために森林伐採を加速し、土地開拓により生物多様性も脅かされているという。
AFPによれば、国際NGOのミート・アトラスは、現在の条件で生産が続けられ、予想通りの速さで生産量が増加すれば、SDGsの2030年までの達成は不可能だと予測しているという。
東京都八王子の市立浅川小が5月から「ビーガン(完全菜食主義者)給食」を月1回提供しているという。
SDGs学ぶビーガン給食 環境意識、多様な価値観も | 共同通信
共同通信によれば、一人一人の食生活が環境に与える影響を意識し、多様な価値観を学ぶ狙いもあるそうだ。普段の給食に完全菜食を採り入れる例は珍しいという。
こうした取り組みが少しづつ増えればいいのかもしれない。みなが月1回でも週1回でも菜食の日を設ければ、その分、食肉需要は減少する。需要が減れば、やがて過剰な生産はなくなり、適量生産で落ち着くようになっていくのかもしれない。
肉好きの母と同居するようになって、肉を食する日が増えているので、こうしたことを言うのは忍びないが、結局は人々の心がけ次第なのだろう。
ゴールドウインが15日から、リサイクルポリエステルを使用し、自社開発した素材「ENERGY COCOON(エナジーコクーン)」を使った服の販売を始めると発表した。
最近、リサイクルポリエステルをよく耳にするようになった。それだけ衣服などに利用されるようになっているのだろう。「リサイクルポリエステル」と検索しても、たくさんの商品にヒットする。リサイクルポリエステルの価格が低廉化し、入手性も改善したのだろうか。
人々が協力することでリサイクルのもとになるペットボトルや古着が十分に集められば、大量生産するが可能になり、バージンポリエステルと同じように利用できるようになるのかもしれない。 こうしてリサイクルポリエステルもいつしか陳腐なものとなり、エシカル消費も徐々に生活の一部にとけ込んで行く。
過剰にものを作ったり、余らせたり、無駄やロスを生み出した行き過ぎた資本主義は、その経済の原理に従って解決されていくのかもしれない。
作り手はリードタイムの短縮、徹底的にムダを排除したバリューチェーンを心がけ、生産履歴を追いかけることのできる倫理的なサプライチェーンの構築が求められるのだろう。実需と生産が一致すれば余剰は生まれない。今ならデジタル技術がそれをアシストしてくれそうだ。
消費者は、人間の欲望に乗じたマーケティングに騙されることなく、自身の生活信条に従って暮らせば、やがて社会は適正な量の物品が流通する社会になっていくのかもしれない。
東洋では、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」といい、過剰も不足もよくないといわれる。東洋、西洋の区別なく倫理学の主要な概念の一つはこの「中庸」といわれ、アリストテレスの倫理学でも、「過大」と「過小」の両極端を悪徳とし、正しい中間(中庸)を発見してこれを選ぶことにあるという。
「身の丈を知れ」と古人はよくいったものである。みながこの倫理を仕事や生活に活かすことができるようになれば、行き過ぎは収まり、適度な資本主義になるのかもしれない。それを「脱成長」と呼んでもいいのではなかろうか。