植物由来の新たなナイロン繊維を東レが開発し、事業化を始めたという。植物のヒマのセバシン酸、トウモロコシのペンタメチレンジアミンを原料としているそうだ。
植物由来100%のナイロンが誕生 サステナブルなアウトドア向け素材を東レが開発
Fashionsnap.comによれば、まだ原価は高く、3〜4割高で、「今後の生産量によってコストを抑えていきたい」と、東レが話しているという。サステナブルな素材として、アウトドア向けなどに提案していくそうだ。
石油から植物由来へ
従来のナイロンなどの合成繊維は石油由来だった。資源枯渇や地球温暖化などの問題が指摘されるようになり、持続可能な原料への転換として、植物由来化が進められている。
何の疑問もなく、いずれそうなっていくのだろうかと思ったものだが、いよいよ現実に始まると聞くと、原料、植物の確保問題が気がかりになる。
よかれと思ったことが後々問題になることは常にあるものだ。バイオエタノール、パーム油、そうしたものがその好例ではないだろうか。
地下深くから石油を採掘することも、地表に生える植物を利用することも資源の利用という意味においては同じことだ。厄介なことに植物利用は食糧問題に関連し、場合によっては森林問題にも影響している。植物自体はサステナブルかもしれないが、それを利用する産業が必ずしもサステナブルとは限らない。
衣服は捨てるものにあらず
フランスでは2022年1月から、衣類や繊維、電子・電気機器など家電について、売れ残った製品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける法律が施行となったそうだ。これは2020年2月に公布された循環経済に関する法律によるもので、過剰な生産、不適正な在庫管理による無駄な廃棄物の削減を目指し、循環経済:サーキュラーエコノミーを促すものだという。
世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革 | お金が集まる・逃げるSDGs | お金が集まる・逃げるSDGs | 週刊東洋経済プラス
東洋経済プラスによれば、アパレル大手のアダストリアは、フランスを皮切りに、世界的に同様の流れになると推測し、「各企業に一定のインパクトがあり、サステナビリティの観点からきちんと対応する姿勢が求められるようになる」と予測しているという。
売り切るアパレル
実際、アダストリアは在庫の焼却処分を行わないことを決め、売れ残り品を減らすための活動を始めたという。
在庫回転率の向上に最優先で取り組みはじめ、期末の在庫消化率が約95%となり、仕入れた製品の大半を1年以内に売り切れるようになったそうだ。
型番ごとの売れ行き動向を日々管理し、在庫が減らない商品は夏や冬のセールシーズンなどを待たずに値引きをかける。
動きが悪い商品の価格は早めに下げ、在庫水準に応じて商品別の値引率も早期に調整する。在庫をつねに軽い状態に保って過剰な生産も抑えることで、人気商品まで安売りする大規模なセールは減らし、業界では年始恒例の福袋販売も3年前に廃止した。(出所:東洋経済プラス)
在庫品の廃棄を減らすため、商品をできる限り期中に売り切る仕組み作りが各社共通の課題となると東洋経済プラスは指摘する。
作る側の努力と使う側の工夫で、ほんとうに捨てなければならないものを減らすことができればいいのだろう。長く着る、修理して着る、何か別なものに再利用する、アップサイクルする、そんなちょっとした工夫でモノは有効活用されていくものだ。
ファッションの未来
一方、ファーストリテイリングが2022年から中途採用の年収を最大10億円に引き上げ、デジタル化やEC 電子商取引、サプライチェーンに精通した人材を募集するそうだ。
ファストリ、中途人材に年収最大10億円 IT大手と競う: 日本経済新聞
「新たな価値を生んだり、事業を白紙から考えたりできる人」を求め、「ZARA」のような同業を競合とせずに、これからは衣服販売にも進出するアマゾンなどを競合と想定し、収益構造を変え、新たな事業モデルを構築を目指すとそうだ。
「どんなにデータを駆使しても、ファッションにおいて確実に売れるものを作るのは至難の業。その過程で生まれるブレや無駄が、ファッションにおける楽しみだ」と、とあるアパレル関係者の声を東洋経済プラスが紹介する。
そんなことを楽しみにしていたファッション業界に変化があってもいいのだろう。いつまでも同じ価値観をおしつけるばかりでファッションといえるのだろうか。
ファッションとは、流行りのスタイルや文化を意味する。自己を主張し、変化や新しさへの勇気を好む半面、慣習に従い、それを模倣することによって社会から逸脱することを避け、社会に順応しようとするという。
「参考文書」
植物から生まれた新たなナイロン繊維の開発、販売開始 ~100%植物由来のナイロン繊維「エコディア®N510」~ | ニュース一覧 | TORAY