米国で物価上昇が続いているようです。1月のCPI 消費者物価指数は市場予想を上回り、前年同月比で7.5%と、40年ぶりの上昇率になったそうです。
米消費者物価7.5%上昇に加速-40年ぶりの伸び率、予想も上回る - Bloomberg
米債券市場では10年物国債利回りが上昇し、株価は下落し、円安が進むとのパターンになっています。
ブルームバーグによれば、物価上昇が続いていることで、最近の賃上げ効果は一部薄れ、家計の購買力は損なわれているといいます。米金融当局に利上げ開始を一段と促す格好となっているといいます。
米アマゾンは基本給を2倍強に引き上げ
そんな中、米アマゾン・ドット・コムが基本給の上限を従来の2.2倍に引き上げるといいます。その額はなんと年35万ドル(約4000万円)になるそうです。
Amazon、米で基本給上限4000万円に 人材確保へ倍増: 日本経済新聞
対象は、事務職や技術職など。コロナ禍からの経済再開で労働市場が逼迫、採用競争力を高めるとともに他社への人材流出に歯止めをかけるためといいます。
米国内の採用難は幅広い職種に及ぶ。アマゾンは21年の年末商戦に向けて米国内で梱包や配送業務に携わる社員らに平均18ドルの最低時給と最大3000ドルの入社時一時金を用意した。事業拡大に向けて大量採用を続ける一方で、従業員の定着が課題となっている。(出所:日本経済新聞)
ストックオプションによる報酬の魅力が薄れるなか、基本給の低さへの不満が高まり、幹部らの離職が増えたことも一因のようです。
かつて株主第一主義を貫いていた米国でさえ、労働環境の影響もあるのかもしれませんが、従業員の給与を考え、また、そうした従業員の声を聞いている企業もあるということなのでしょうか。
地に落ちる日本の平均賃金
日本の賃上げはどうなっていくのでしょうか。政府は分配戦略を掲げ、賃上げや人への投資などを挙げています。
しかし、企業の利益は過去20年間で約2倍になり、株主配当は6倍以上に膨れ上がったそうですが、従業員の給与は一向に上がっていないといいます。その平均賃金はG7 主要7カ国で最低水準となり、隣国韓国にも追い抜かれたといいます。
政府は株主偏重の資本主義による弊害を問題視し、転換を繰り返し訴えています。
首相は企業の自社株買いに言及し、自社株買いの制限は、新しい資本主義を実現する観点から「大変重要なポイントでもある」と述べ、関連したガイドラインが必要でないかとしたという。企業が投資家から資金を調達すべき株式市場が投資家に資金を供給する場所になっているとして、自社株買いを批判した立憲民主党の議員に対する回答でした。
企業が政府の要請に応じ、また、歪んだ資本主義を正し、今求められているステークホルダー資本主義への転換を推し進めていくことはできるのでしょうか。何かしらのインセンティブ、誘因がないと進まないのでしょうか。
賃上げへの誘因
日銀は、国債を無制限に買い入れるオペ(公開市場操作)を週明け14日に実施すると発表したそうです。日本経済新聞によれば、金利上昇を抑えるためといいます。これを受け、日米の金融政策の方向性の違いが意識されたことで円安が進行したといいます。
こうしたことを続けていて、景気は上向くのでしょうか。結局、景気は企業の活動が活発になり、お金が適正に循環しないと上向くことはありえないのではないでしょうか。
やはり人に投資し、R&D研究開発をさかんにし、設備投資を進めなければ、企業が成長することはないように思われます。どこかでボタンを掛け違えているように思えてなりません。
まずは、企業自ら将来不安を払拭し、従業員の声に真摯に耳を傾け、人への投資から始めるべきなのでしょう。
BS-TBSの「報道1930」に出演した宮沢自民党税制調査会長が次のように述べています。
日本はいままで社員の教育、人への投資は職場でOJT(オンザジョブトレーニング)だった。これだと前のレベルよりは上に行かないわけで、外でどう鍛えていくか、または新しい人材を採用するなど徹底的にやらねばならないのは間違いない。今年賃上げ税制やったが、これは長続きしない。(出所:TBS NEWS)
また、 デービッド・アトキンソン氏は、社会人になってからの教育への政府支出が必要であることを指摘し、欧米に比べものにならないほど遅れているといい、「日本人は、学校を出た時の教育のまんまで何十年も働きます」といっていました。
個々人の問題もあるのかもしれなませんが、企業側からの仕掛けも必要となっているのではないでしょうか。ないものねだりしていてはいつまでも持続的な成長などあろうはずがありません。
「参考文書」
米長期金利上昇、2年半ぶり2%台 円は116円台に: 日本経済新聞
分配の次は財政出動強化、首相に助言の原氏が分析-新しい資本主義 - Bloomberg
いくら財政支出をしても給料は上がらない。デービッド・アトキンソン氏 日本に足りない「人財への投資」【報道1930】|TBS NEWS
岸田首相が自社株買い規制に言及、「ガイドライン」検討-株価下落 - Bloomberg