米大手スターバックスの暫定CEOとして創業者ハワード・シュルツ氏が復帰する。3度目の登板になる。早速、数十億ドル規模の自社株買いの一時中止を表明したという。人材や店舗への投資を拡大するためとしている。
米スタバ、自社株買い停止 人や店舗に投資とショルツ氏 | ロイター
シュルツ氏らしい判断なのだろう。ロイターによれば、スターバックスは前CEOのケビン・ジョンソン氏の下、これまで2019年度と20年度に計120億ドル近くの自社株買いをしていたという。また昨年10月には、自社株買いと配当に3年間で200億ドルを投じると発表していたという。
シュルツ暫定CEOの自社株買い一時中止の発言を受け、ニューヨーク株式市場の取引開始後、スターバックスの株価は5%超下落したという。
自社株買い
「自社株買い」とは、自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。日本証券業協会によると、会社の発行済み株式総数が減少し、1株当たりの価値は高くなり、「1株当たりの当期利益」も増加することになる。自社の利益の一部を株主に支払うのと同じ効果となるため、配当と同様に株主還元策の一つとされているという。
昨今の自社株買いブームを見ていると、説かれるステークホルダー資本主義とは逆に、未だ株主第一主義から脱し得ていないと見えてしまう。シュルツ暫定CEOの英断で、スタバの業績は回復し、株主にも適正に、期待通りに利益できるようになるのだろうか。
スタバの株価は過去1年で約24%下がっていたそうだ。
スタバの強み、成長の原動力
Business Insiderによると、シュルツ暫定CEOは、4月4日に開催された同社の従業員向けのオープンフォーラムで、「最も重要なこととして、パートナー(従業員)のエクスペリエンスを再構築しなければならない」と述べたという。
復帰したスターバックスCEO、年内にNFTビジネスに参入することを表明 | Business Insider Japan
「それは賃金だけではない。それは店の環境、働く喜び、連帯感、充実感だ。そして最も重要なのは、『そこに何があるのか』という質問に皆が肯定的に答えられるようになることだ」(出所:Business Insider)
一方、「顧客はスターバックスの店舗を「サードプレイス」、つまり家庭や職場以外の社会的拠点として、同じように利用することは少なくなっている」と、シュルツは付け加え、「我々は、店舗体験を再定義し、再設計しなければならない」と語ったという。
スタバの強みを再定義し、そこから新たな成長物語を描こうということだろうか。
シュルツ暫定CEOは、スターバックスが今、供給網の問題や新型コロナのパンデミック、ウクライナ危機など緊張の高まりや政情不安の影響に直面しているとも指摘したという。そればかりでなく、労働組合結成の動きが全米で広がりをみせている。その理由には様々な要因があるのだろうが、近年の労組組織率の上昇は、求人数が失業者数を超えている熾烈な労働市場により引き起こされているとForbesは指摘する。
難しい時期でのCEO復帰である。厳しいビジネス環境、厳しい労働環境など、目まぐるしく様々なことが急激に変化する。しかし、こういうときだからこそ、すべてのステークホルダーが納得する解決策が求められている。
スターバックス創業者ハワード・シュルツ氏、原理原則を重視するその手腕に期待してみたい。
「参考文書」
労組結成の動き広がる米スタバ 他企業が学べる教訓 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
米スターバックス60店舗が労組を結成、諸悪の根源はアップデートしてなかった飲食DX?