インドが小麦輸出の制限を検討していると、ブルームバーグが報じている。それによれば、深刻な熱波で農作物の生育が打撃を被ったことが理由という。高騰している食品価格がさらに高騰し、逼迫している世界の供給が悪化する可能性があるという。
インドが小麦輸出制限を検討、熱波で生育に打撃-国内供給を優先か - Bloomberg
インドでは3月に観測史上最高の暑さを記録し、小麦の収穫量見通しに影響が出ている。インド政府は今期の小麦生産を過去最高の1億1100万トンと予測していたが、1億500万トンに下方修正したことを食料省が4日、明らかにした。(出所:ブルームバーグ)
市場は正直なものだ。こうした情報が流れると、直ぐに反応、また値を上げたという。
インドの熱波は気候変動の影響なのだろうか。こうしたことはこの先恒常的に起きる可能性があるのかもしれない。足元では、これに国際情勢の影響が加わっている。家計を直撃するばかりでなく、食糧事情が貧弱な途上国への支援にも影響を及ぼす。SDGsの進捗に遅れが生じるのだろうか。誰が後れを挽回するのだろうか。
インドネシアはパーム油を禁輸にし、国内供給を優先させている。厳しい状況なのだから仕方がないのかもしれない。市場供給量が減り、一方で円安が進めば、調達は厳しくなるばかりである。半導体不足ではないが、資金をいくら積んでも物が手に入らない状態になれば、その影響は甚大だ。
オーガニック、有機農業
国産化を進めれば対策になるのかもしれないが、即効性はない。しかし、長い目でみれば、進めておいた方がよいのではなかろうか。ただ現実にはそうはうまくいかないのかもしれない。
農林水産省は昨年5月、持続可能な食料システムの構築に向け「みどりの食料システム戦略」を策定した。中長期的な観点から、農機の動力を化石燃料から電気・水素に転換することや食品ロスの削減などの目標を掲げた。温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を狙う。また、この戦略の法制化も今国会で成立したという。
河北新報によれば、この新法では30年後の2050年に有機農業の面積比率を50倍に拡大するとしているという。
有機農業の耕地50倍へ 東北の農業関係者「絵に描いた餅」 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
有機農業は、化学合成した肥料や農薬を使用しない農法。労力や時間の負担が大きい。国内認証制度「有機JAS規格」を取得するには植え付け前に2年以上、化学合成肥料の利用を避ける必要がある。(出所:河北新報)
「有機」や「オーガニック」と表示するには認証の取得が必須だが、認定には一定の費用がかかり、書類準備の煩雑さがあるという。こうした背景があってのことか、取得を目指す農家が多くないという。
有機農法は高騰する化学肥料や農薬を使わない代わりに手間が増える。「作っても売れなければ、農家の生産意欲を維持できない」、有機は高価になりがちだが、逆に有機ならでは良さはある。売る努力、販促が必要なのかもしれない。
一方、有機農業に積極的に取り組み農家もあり、その声を河北新報が紹介する。
黒石市の農業佐藤拓郎さん(40)は耕作地65ヘクタールの約25%で有機農法を実践する。生産工程を管理する専用アプリを使い、田んぼの水位も機器で調整。雑草を生えにくくする自動ロボットの活用も視野に入れる。
立ちはだかるのは、機械導入にかかる多額の費用という。(出所:河北新報)
国も目標達成のためには、ICT情報通信技術を活かした「スマート農業」が不可避とし、レーザー光を駆使した病害虫の防除、AI人工知能を活用した土壌診断といった新技術の導入が欠かせないとしているという。
食料品の価格が高騰ばかりでなく、食糧の流通量が減ることは世界的な危機を招き、私たちの生活にやがて影響するようになる。もっと農業が注目され、活性化しないといけないのかもしれない。
長野県の農業ベンチャーはリモコン操作で水田を動き回り、田の水を濁らせて光合成を阻害し、除草する機器を開発しているという。
勘よりデータ 「10年早い」土佐のハウス農業 IoPで生き残りへ | 毎日新聞
また、高知県には、経験や勘だけに頼らない農業を進める農家があるという。データを活用し効率的な栽培を行い、またそれをデータとして残し、共有することで新規就農のハードルを下げているという。農業のデジタル化も進み始めているということだろうか。
☆
様々なものがデジタル化され、効率化、便利になっていく。それはそれでいいことなのだろう。それに濃淡が生じることもやむなしなのかもしれない。
SXとデジタルマーケティング|【第1回】SDGsを推進する「SX」とは? マーケターは何をすべき?|講談社SDGs by C-station
ただそれでいいのだろうか。優先順位が高いものがなおざりにされ、安易なものばかりが優先され、そこに多くの人が群がっていないだろうか。それでは進歩などありえず、DX デジタルトランスフォーメーションなどもおきないのだろう。
「参考文書」
「有機農業はいいが大事なのは農家の所得確保」 「みどり戦略」めぐり討論 【農協研究会から】|JAcom 農業協同組合新聞
リモコン型除草機開発 水田動き回り、濁らせ光合成阻害 長野の農業ベンチャー / 日本農業新聞