コロナ禍による物流や生産の混乱と円安で、衣料品関連の国内回帰が進んでいるようです。縫製加工賃も上昇基調にあるといいます。
国内の縫製工場はコロナ渦の間、マスクや医療用ガウンの製造で救われたそうです。再びコロナが拡大していますが、もう以前のようなことはなく、フル操業が続く状況になっているといいます。
国内定着への期待もあるようですが、その反面、また円高になったら、海外生産が主流となり、以前に舞い戻る不安もあるそうです。
<縫製トップに聞く①> 国内工場に受注が集中 工賃上がるも「まだ足りぬ」
「工場はフル稼働状態が続いているが、統計数字を見る限り、〝国内生産回帰〟という言葉には疑問を感じる」。外注先の協力工場が廃業するなど国内の生産能力が縮小し、「残っている縫製工場に仕事が集中しているだけでは」と指摘する。(出所:FASHIONSNAP.COM)
厳しい工賃に工員不足、そうした懸念材料がつき纏っているといいます。
「最近、国内回帰と思われる受注が入ってくるが、値段が安いしどう対応しようか悩んでいる」というある機業場の声を繊研新聞が紹介しています。
「そんなのは受けなければいい。海外で出来ないから日本に戻ってくるわけで、どうしても必要なら単価を上げてでもまた頼んでくる。自ら合わない値段で受けるのは自分の首を絞めるだけ」とバッサリと言い放つ声もあるそうです。
確かにそうだなと得心した一方で、何とかして受注を確保したいという機業場の気持ちもわかる。でもそれが自らの首を絞めてきたならなんともやるせない。ビジネスは、本来もっと対等な関係であるはずだ。(出所:繊研新聞)
「現状の低い水準の工賃のまま少し上げても意味がない。他産業と比べて若い世代が、『ここで働きたい』と思えるレベルまで引き上げないと今後、縫製工場は存続できなくなる」との声を紹介するのはFASHIONSNAP.COM。
日本の物づくりの縮図なのでしょうか。
関係するすべてのステークホルダーがWin-Winの関係になって成立するはずの「サスティナビリティ」。もっとSDGs的な視点での取り組みが増えれば、改善が期待できそうですが、なかなかそうならないことにジレンマがあるのでしょうか。参加するすべての人が理解、共感していなければ、実現することはあり得ないのでしょう。
今回の円安やコロナ禍による物流・生産の混乱で、やはり国内の生産基盤は重要と、思いを新たにした企業も多いだろう。
国内で物を作れるという強みは他に代えがたい。
機業場がその強みを生かして生き残っていく転機が訪れているように感じた。(出所:繊研新聞)
「サーキュラーエコノミー」、循環型経済に注目が集まっているといいます。服から服への水平リサイクルの動きもあります。繊維から生地、縫製工場の協力が求められます。またそれぞれがプラスアルファの役割をこなすことなくして実現することはないのでしょう。まずは国内から始めるべきことなのでしょう。
衣料品ばかりでなく、他の産業においても同じことがいえることのはずです。もうそろそろ動くときになっているのかもしれません。
「参考文書」
最強のBtoB:ヒト、モノへの成長投資で国内の強み拡大へ=永浜利広 | 週刊エコノミスト Online