Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

危機下の「三方よし」と「サスティナビリティ」

 

 アースディの4月22日、ウェザーニュースが「日本の大気汚染物質も減少」と報じた。

大気汚染物質の少なさを表す指数CIIが、昨年2019年3月の全国平均0.78から、今年2020年3月では0.81前後になり、0.03ポイント改善したという。

 ウェザーニュースによれば、中国大陸で大気汚染物質が減少し、越境汚染が低下したことなどが原因として考えられるという。(ウェザーニュースが解析画像は添付記事で確認できます)

※CIIは、オゾンやPM2.5などの大気汚染物質の少なさを表す指数で、NICT-情報通信研究機構による計算式をもとにウェザーニュースが独自で算出しています。値が高いほど空気がきれいなことを表しています(出所:ウェザーニュース 

weathernews.jp

 

 ベネチアの運河にクラゲとCNNが報じる。

www.cnn.co.jp

 

 アパレルのサスティナビリティをリードするステラマッカートニーはアースディを祝してメッセージを贈った。

 その内容をWWD Japanが紹介する。

 

私たちは、共により良い未来に向かうため、一時停止をしている今、これまで以上にお互いを思いやり、より意識的になる方法を学ばなければなりません」。

 

人々が活動を停止するなかで、野生動物たちの行動が活発化しています。ビーチから人々の姿が消えて、釣りや海洋の有害なプラスチック廃棄物が減少したことで、タイやフロリダでは、希少なウミガメの巣がこれまでの記録のなかで最も多く見つかっています。

 しかしこうしたポジティブな変化は永続的なものではなく、人々の生活は再び動き始めます。これまで通りの生活に戻る代わりに、この時間は成長する機会にもなり得るのです。

繁栄のために惑星を犠牲にする必要はないことを現実が証明しているのです。 (出所:WWD Japan)

 

www.wwdjapan.com

 

 

 

 ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、「新型コロナウイルス影響下における生産パートナーおよび工場従業員への支援について」発表した。

 

弊社の最も重要な責任のひとつが、商品の生産を担う人々の安全と安心を守ることであると認識しています。

新型コロナウイルス感染症の拡大が、人道的および経済的観点から世界に大きな脅威をもたらす中、弊社は、これらの影響を緩和する上でアパレルブランドが果たすべき役割は大きいと考えています。 (出所:ファーストリテイリング プレスリリース)

 

ファーストリテイリングのプレスリリースによれば、「サプライチェーンで働く人々の安全と安心のための対策」と「生産パートナーの財政的安定を支援するための対策」を行うという。

 

サプライチェーンで働く人々の安全と安心のための対策

工場従業員を感染リスクから守るため、工場内での手洗いや検温、マスクの着用等を工場に求めているという。一部工場に対しては、赤外線検温器を提供しているともいう。

また、この他、工場が休業を余儀なくされた場合の従業員への補償等に関するガイドラインを工場に提供するという。

 
生産パートナーの財政的安定を支援するための対策

・当初より、取引先縫製工場に対し、生産済みの商品およびすでに生産を開始している商品について、事前に合意された条件に則って支払いを行うことを確約しています。

・取引先縫製工場が購入済みの弊社商品向け生地や副資材についても責任を持って使用する方針で、万一不要になった場合には補償を行うことも確約しています。

ファーストリテイリンググループの「責任ある調達方針」に従い、取引先縫製工場の財務状況を把握し、必要に応じて支援を行うため、以下のアクションを含めて個別の協議を進めています。
 - 新型コロナウイルスの影響を原因とした工場の財務リスクの把握
 - 工場ごとのオーダー状況と生産キャパシティの把握によるリスク管理
 - 発注量減少による工場の財務上のリスクを軽減するため、通年商品を中心とした生産スケジュールの柔軟な調整と、取引先工場間でオーダーの再割り当て (出所:ファーストリテイリング プレスリリース)

 

 コロナが感染拡大を始め、世界のアパレルが商品の引取りを拒否したり、オーダーキャンセルが多発しているとの話を多く見てきた。

 未曾有の危機下において、ありがちなこととして片付けてはならない。

 業界では当たり前のことも、「商道徳」からすれば異常なことではなかろうか。

 何もファーストリテイリングが特別なことをやっているとは思わない。自分の経験からしても、ごく当たり前のことと思えることが、他の業界ではそうではなかったりもするのだろう。

 

 

 

  政府が配布するマスク、いわゆる「アベノマスク」の不良品問題で、このマスクを納品した興和伊藤忠商事が「未配布分を全量回収する」と発表した。

 

www.jiji.com

 

 両社は各々プレスリリースを発行、経緯と対応について説明する。

不具合品に対する説明責任は発注元で政府にあるので、公表できる範囲内での説明ということであろう。

 

布製マスク(ガーゼマスク)の対応について(興和株式会社)

 

 厚生労働省向けの布製マスクについて(伊藤忠商事)

 

伊藤忠商事によれば、政府からの強い要請を受け、受注した旨を説明したうえで、以下内容を公表した。今後は3重の検品体制を敷くという。

生産に関して

緊急事態により、世界的にマスク需給が逼迫し、国内のマスク専用工場には生産余力が全くなく、海外においても生産スペースの確保は極めて困難な状況となっておりました。かかる状況下、当社のネットワークにて海外の衣料品縫製工場に生産スペースを特別に確保しました。尚、製品の均一性を保つため、国内マスクメーカーより仕様書と生地の供給を受け、それに基づき生産を請負っております。(出所:伊藤忠商事プレスリリース)

 

 「糸」が始まりだったという伊藤忠商事の企業理念は三方よしだそうだ。

「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」

 

www.itochu.co.jp

 

初代伊藤忠兵衛が近江商人の先達に対する尊敬の思いを込めて発した

『商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの』という言葉にある

自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う「三方よし」の精神は、現代のCSRにつながるものとして、伊藤忠をはじめ、多くの企業の経営理念の根幹となっている。

 (出所:伊藤忠商事公式ページ 「近江商人三方よし」)

 

発注元である政府がきちんと説明すべきであろう。

 受注側が示した対応策の適正性の検証がなければ再発の可能性も否定できない。

再発だけは避けなければならないし、仮に再発すれば、その失望は大きくなる。

出てしまったこの問題の対応で信頼回復に努めて欲しい。 

 

 危機的な状況を理由に、「三方よし」や「サスティナビリティ」を蔑ろにしてはならない。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

dsupplying.hatenablog.com

 

www.stellamccartney.com

 

f:id:dsupplying:20200424085403j:plain