Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

マーケティングの父が語る「脱成長」、エシカル消費に変化も

 

 エシカル消費の認知度が上がってきているそうです。しかし、その価格はまだ割高で、質を落としたくないという顧客ニーズに応えながら、今ある製品・サービスをエシカル消費にすることはできるだろうかと、日本経済新聞は疑問を投げかけています。

エシカル消費、カギは価格と機能 植物由来の靴など: 日本経済新聞

エシカル消費」、自然環境や労働者に配慮した製品・サービスを選んで消費することとし、オールバーズやJEPLAN(旧日本環境設計)の取り組みを紹介しています。

「環境配慮などに先駆的な企業は機能性やデザインの魅力を磨き、顧客づくりを広げている」と、記事は述べ、長期的には消費者が手に届く範囲を広げていくことも重要と課題指摘しています。

 エシカル消費が拡がることを願いつつも、野放図に拡大路線に走れば、批判がある大量生産・大量廃棄にまたつながっていかないかと危惧したりもします。

 

 

地球を温暖化から守るために、進んで生産と消費の速度を落とす企業があるかといえば、おそらくないだろう」(出所:日経ビジネス)。

 これが現在、企業が抱えるパラドックスなのかもしれません。

ほとんどの企業は高い利益を追求している。必要な資金を得るには投資家を満足させるだけの利益が求められるし、働いている人に仕事とお金を提供したりするためにも、企業は利益が必要なのだ。(出所:日経ビジネス

 経済成長の追求に対する批判が強まり、成長の原動力となる重要な役割を担ってきたマーケティング担当者が非難されるようになってきているといいます。

 これまでのマーケティングは科学的手段を使って、消費者が無限に買い続けるようにしてきたからそうです。

 

 

 「マーケティングの神様」、「近代マーケティングの父」と呼ばれ、最新のマーケティング理論を提唱してきた経営学者のフィリップ・コトラー教授が「脱成長」について言及しています。

特別寄稿フィリップ・コトラー氏「脱成長に向けた5つの視点」:日経ビジネス電子版

成長は、政治においても、経済においても、社会においても、疑う余地のない目標である。しかし、この目標は、資源が枯渇する世界では、最終的に災いをもたらす。だからこそ、低成長への移行がその答えになる。(出所:日経ビジネス

「より賢明な成長へ移行するための道しるべとなるのが、ウェルビーイング(心身の健康や幸福)、公平性、持続可能性の促進であり、私たちの目標は、より持続可能で公平な成長経路を受け入れることである。人々はよりスリムで、より幸せで、より健康的で、より満足のいく生活を送る必要があるのである」と、コトラー教授は指摘します。

 また、コトラー教授は、過剰な消費を止め、脱成長に転換していくためにできることとして、「計画的陳腐化をカットする」「広告を削減する」「所有から使用へ転換する」「食品廃棄物をなくす」「環境破壊的な産業を縮小する」の5つをあげています。

 ただ、地球を守るために消費を抑制するには、まだ答えが見つかっていない問題があると指摘し、5つの視点「消費を抑えることで、経済は十分な雇用を生み出すことができるのか?」「消費を減らすことを犠牲と考えるか、それともより良いライフスタイルにつながると考えるか?」「資本主義は、他のシステムに変える必要があるのだろうか?」「貧しい国の世界でも「レス・イズ・モア」は通用するのか?」「もし成長を減速させるのであれば、どの程度の速さで減速させるべきか?」をあげます。

 

 

ハーバード大学の研究によると、米国の若者(18~39歳)の51%が、もはや米国の資本主義を支持していない。「資本主義は善よりも害をなす」について、フランス人の69%、インド人の74%が同意している。2018年の米エール大学の調査では、「環境保護は成長よりも重要である」という声明に70%の米国人が同意している、と報告されている。(出所:日経ビジネス

 時代の要請が変れば、マーケティング理論も進化が求められるということなのでしょう。この先、コトラー教授がどんな理論を提唱するのか気になります。

サステナビリティとは、今日の私たちの経済活動が、次の世代に対して私たちの世代と同じかそれ以上の生活の質を残すことができるようにすることを指す」とコトラー教授はいいます。

 信奉者たちの心に変化は起きるのでしょうか。

 

「参考文書」

フィリップ・コトラーが語る「マーケティングは企業の成長エンジン!」