気球問題を端にして米中の対立がますます激化しているようです。ハイテク分野を対象にした経済安全保障の議論が、再生可能エネルギーやEV 電気自動車などにも波及し、国家をあげた覇権争いの様相を呈しているようです。
国がこうしたことにまったく無頓着とはいうことはないのでしょうが、もっと危機感をもって対応すべきのようにも感じます。
防衛力強化ばかりを強調したところで、食料がなければ人は死んでしまいますし、エネルギーがなくても同じです。また、仕事がなくなれば、生活の糧を失い、路頭に迷ってしまいます。
廃棄が続く生乳
ありとあらゆるものが値上げとなり、その歪みもまたありとあらゆるに現れてきています。
北海道では、搾ったばかりの生乳が、一部の農家で廃棄されているといいます。
飼料や肥料などの資材高騰に加え、電気代も高騰、それなのに乳価は上がっていないそうです。
生産調整のために、国内の酪農家が搾乳日数を減らしたり、牛を売却したりしている一方で、脱脂粉乳などは海外から輸入され続けているといいます。
北海道の酪農家らが農水大臣と面会し、要請書を手渡し、窮状を訴えたそうです。
経済安全保障、国産化
一方、農機大手のクボタは下水汚泥から化学肥料の原料となるリンを取り出す技術を開発したそうです。
クボタ、下水汚泥から肥料原料9割回収 中国依存脱却へ - 日本経済新聞
ウクライナ危機を発端にして肥料価格が高騰しています。またリンはその大部分を中国からの輸入に頼っているそうです。
危機に陥って始めて、これまでと同じ産業構造では国が立ち行かなくなると気づくものです。こうしたこと起点にして国産化が進んでいけばいいのでしょう。
今回のクボタの取り組みは、経済安全保障の観点からも中国依存を弱めることが可能になるといいます。
また、豆腐メーカーにおいては、国産大豆への切替が増加しているそうです。輸入大豆が高騰していることが理由といいます。
輸入大豆が価格高騰 豆腐メーカーで国産大豆の商品 増やす動き | NHK | 物価高騰
こうした動向を踏まえ、大豆の作付けが増え、国産大豆の供給量が増えていけばいいのでしょう。 海外への依存度が下がれば、それだけ食料安全保障が向上します。
進化する農業
耕作放棄地などの活用を目指して、早稲田大学とサステナジー、ソニーコンピュータサイエンス研究所がと共同で、ソーラーパネルの下で農作業するロボットを開発したといいます。
早大・ソニーが開発、ソーラーパネルの下で農作業するロボットの実力|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
記事によれば、半日陰を利用した農業で、発電と食料生産の両立を目指しているといいます。
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防衛力や原子力、こうしたことに国は積極的に予算をつけようとします。これらがまったく不要なことではないのでしょうけれども、それよりももっと優先的に取り組まなければならないことがありそうです。
農業の再興、サスティナブルな農業、政治の場で議論するには地味すぎるテーマなのかもしれませんが、この時局にあっては、積極的に議論の俎上にのせるべきのように思われます。
優先すべきテーマはこればかりでないのでしょう。もっともっとたくさんあるのではないでしょうか。今すぐにでも解決されるべきことが、一部の人たちの反対で時間を浪費するようになっています。このままでは持続可能な社会に近づくことはなさそうです。