国連のIPCC 気候変動に関する政府間パネルが9年ぶりに第6次の統合報告書を公表し、温室効果ガスの排出をこのまま継続すると「短期のうちに世界の平均気温の上昇は1.5度に達することが推定される」と指摘したといいます。
IPCC報告 “短期に気温上昇1.5度に到達 大幅な排出削減策を” | NHK | 脱炭素社会への動き
温暖化を原因とする異常気象により、海面上昇や洪水、熱波、干ばつなどが広範囲に拡大しているといいます。こうした異常気象による被害を減らす「適応策」も拡大しているが、既に適応の限界に達している地域もあるそうです。
「持続可能な未来を確保する機会の窓は急速に閉じつつある」と統合報告書は指摘、「今後10年間の選択と行動が何千年にわたり影響を与える」とし、排出削減や適応策を加速させることの必要性を強調しているといいます。
記事によれば、西村環境相は「温暖化を1.5度に抑えるには、日本を含めた世界全体の排出量を大幅に削減する必要がある。来月のG7=主要7か国の気候・エネルギー・環境大臣会合では議長国として、世界全体の脱炭素化に向けて国際社会をリードしていきたい」というコメントを出したそうです。
脱炭素、日本のG7共同声明案に反発強まる
一方で、4月15-16日に札幌で開催されるG7 主要7カ国の気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明のための議論が続いているといいます。
しかし、議長国 日本の提案する共同声明案に各国が反発を強めているそうです。
脱炭素で踏み込み足りず、日本の声明案に欧米難色-4月に閣僚会合 - Bloomberg
日本は、液化天然ガス(LNG)への投資や、発電用化石燃料の効率利用を支援する技術の普及を訴えるが、脱炭素を巡る踏み込みが足りないとの声が上がる。(出所:ブルームバーグ)
記事によれば、大臣会合に向けて修正される見込みといいます。
首相は先日のドイツのショルツ首相との会談後の共同会見で、「脱炭素化を進めつつエネルギー安全保障を確かなものするには、各国が自国の状況に応じて現実的な道を追求することが重要」と述べたそうです。
価値観を共有する国々の協調を謳いながら、脱炭素となると協調できなくなることが不思議なりません。
宝の山、日本の国土を7割を覆う森林
「国産林」を十二分に活用すれば、「低炭素社会」は実現できると、化学メーカ大手のダイセル社長の小河氏はいいます。
国産林を余すことなく活用すれば、日本が「再生資源大国」に生まれ変わる可能性がある。石油などのエネルギー資源に乏しい日本にとって、森林が資源になればまさに「宝の山」です。(出所:NEWSPICKS)
「バイオマスバリューチェーン構想」という仮説を推進するため、ダイセルが積極的に発信しています。
木材の価値を高めることで林業を活性化させ、健康な森を再生し、土砂災害を抑制し、腐葉土による栄養価の高い水が河川や海に流れ込んで豊かな生態系を取り戻すことができるといいます。その結果、水産業や農業にまで好循環を生み、地域産業も活性化させる。そんな未来像を描いています。
この仮説のコア技術は、京都大学、金沢大学との共同研究により進められている、常温で木材を丸ごと溶かす穏和溶解技術といいます。これにより環境負荷をかけない省エネルギーで木材を液状にし、機能性材料の原料とすることができるそうです。
また、農業や水産業から出る廃棄物に応用でき、キャベツの芯やたまねぎの外皮、水産業から出るカニの甲羅やエビの殻も原料にできる可能性があるといいます。こうした廃棄物を原料に、ナノファイバーや糸といった化学製品を作れるといいます。
こうした素材を活用すれば、一次産業の方が住む地域に、新たな特産品が生まれるかもしれません。農業や水産業の事業者も廃棄物を売ることで収入が増える。つまり地域全体のキャッシュフローが上がります。(出所:NEWSPICKS)
多くの企業が気候変動に関心を持ち、脱炭素社会の実現に貢献しようとしているようです。それなのに、政府はまた既得権益を優先させようとしていないでしょうか。このままでいいのでしょうか。
「参考文書」
温室効果ガス、2035年までに6割削減が必要 国連IPCC報告書 | 毎日新聞
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