Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

ispaceの月面着陸失敗、潰えたのか日本発イノベーションという夢

 

 民間初の月面着陸に挑んだ宇宙開発の「ispace(アイスペース)」の株価の下落が止まらないそうです。探査機の月面着陸の失敗を受けての失望売りといいます。

夢の途上か、はかない夢か

「ispace(アイスペース)」は、CEOの袴田氏がGoogle主催の「Google Lunar XPRIZE」に出場を目指すことが始まりといいます。

 このレースは、月面を500メートル以上走行し、高解像度の画像や動画データを地球に送信したチームが約2000万ドル(約26億円)の賞金を獲得できるというものだったそうです。

月面着陸に挑んだispace、CEOが振り返る13年の歩み | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 このレースでの優勝を目指し順調にスタートを切れたかというと必ずしもそうではなかったようです。資金調達難、そして、共同でプロジェクトを進めるはずの欧州のチームが解散することになり、何かも自分たちで進めなければならなくなったそうです。

これをきっかけにして袴田氏はispaceを設立し、他のチームと組んで再びレースへの参加を目指しますが、組んだチームが次々と離脱し、また目標したレース自体が「勝者なし」のままで幕を閉じることになったといいます。

 スタートから波乱含みだったispace、計画が頓挫したかのように見えましたが、思わぬ投資家が現れたことで、再び月を目指すことになったといいます。そして、2018年にNASAの月輸送計画にも参加することも決まり、今回のミッションにつながっていたといます。

 何事も順調に進むことはないようです。この道の先人たちも数多くの失敗を重ねているのですから。やはり事業が順調な軌道に乗るのには長い時間を要するものなのでしょう。これが、ものづくりベンチャーにおける現実のような気もします。まして宇宙という壮大な空間が対象なのですから。

再び日本から世界的な企業を

 日本から世界的な企業を再び生み出したいと、しっかりやれば日本人でも世界で負けないことを証明したいとの願望をもって、 2010年にテラ・モーターズとベンチャーが設立されました。この会社を率いる徳重徹氏は、日本経済を再建するのが自分の使命と信じるといいます。

テラドローン徳重社長「日本人が世界で勝てると証明する」:日経ビジネス電子版

 あのイーロン・マスク氏の背中を追い。新規事業を次々に立ち上げ、同時並行に成功させようとしているそうです。

僕はイーロン・マスクほどクレイジーじゃなかったから、当時は四輪をやる度胸がなかったんです。だから現実的な二輪、三輪車を取った。僕にとってこれはすごく悔しい経験でリベンジしたいんです。(出所:日経ビジネス

 その電動三輪車事業はインドで成功をおさめ、今では世界で年3万台を販売するに至っているといいます。それでもなお、それにとどまることなく、日本とアジアにおける充電インフラが遅れているとして、その整備に奔走し、「重要なのは筋の良いビジネスをやること。EV充電器は市場規模が大きく成長性があります」と語っています。

 その努力が実ってか、契約件数も3000カ所程度に増えているそうです。

(画像:テラドローン)

 10年くらい前のことでしょうか、徳重さんの講演会を一度聞きに行ったことがあります。語っていた詳細を思い出せませんが、熱く語っていたことだけは記憶に残っています。

実現可能性の高さと社会的なインパクトの大きさは負の相関にあります。起業家は実現可能性が低くても、インパクトが大きいところを狙わないと本当はいけないんです。ただ、コンサルの頭の良い人はリスクを取りたがらないから、ここを狙うのが苦手。ここは意思決定の場数を踏んで、最後に勘で勝負する世界です。(出所:日経ビジネス

 コンサルタント的な発想を批判し、それではイノベーションの実現は難しいといいます。また、歳を重ねて、新規事業とはどういうものか、やっと分かってきたともいいます。

 記事のよれば、テラモーターズのインドでの成功は、消費者のニーズや属性、悩みを分析し、「ファイナンスリースがあれば売り上げが大きく増える」と判断し、購入者向けの小口金融サービスも手掛けるなどして、ソフトとハードの両輪を回して規模を拡大していっていったといいます。

 事業を成長軌道に乗せるには、熱い思いやアイデア、実行力も必要なことなのでしょう。それが原動力になるのかもしれませんが、それに加え、自分以外の他者のために役立てることができるということがあって、物事は成就していくのかもしれません。

 求められている以上の質と量のサービスを行い、どこの誰よりも努力すれば、そこから利益を得ることができるということなのでしょう。徳重氏もマスク氏以上の努力があれば、それを乗り越えていくことができるということでもあるのでしょう。

イノベーション

 宇宙ビジネスの困難さを感じます。明確なマーケットは存在せず、誰のためのビジネスなのかがはっきりしませんが、それが未来を生きる世代には絶対に役立つものになると固く信じることができれば、それは実現に向かうのかもしれません。そうしたクレイジーさを持った人々も必要には必要なのでしょう。

 ただ、みなが同じように振舞う必要はないのでしょう。自分自身で信じることができ、それが他者のためになるような行ないをできる人が増えていけば、世界はもっと住みよくなるのでしょうし、日本ももっと元気になっていくような気がします。そうした中から、真のイノベーションが生まれるのでしょう。

 

「参考文書」

ispace株価、下落止まらず 米先輩企業が残した教訓 - 日本経済新聞

ispace、民間初の月面着陸に失敗 「次へ大きな一歩」 - 日本経済新聞