Up Cycle Circular’s diary

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【イノベーション】情報化社会、最適化社会から自律社会へ、AI、ロボットはその序章なのか

 

「スタートアップ育成 5 か年計画」を政府が発表し、スタートアップに挑む起業家の裾野を拡大させようとしています。上場で創業10年以内の企業評価額10億米ドル以上の「ユニコーン企業」が、日本ではわずか6社、米中に比し、極端に少ないことも、その背景といわれます。

これまでのスタートアップエコシステム

 冨山和彦氏、楠木建氏が名を連ねる日本取締役協会スタートアップ委員会が、「グローバルに飛躍する日本発ユニコーン企業の輩出を目指して、我が国ベンチャー・エコシステムの環境整備を図るための提言書」を公表しました。

我が国スタートアップ企業が世界で大飛躍する環境作りへの提言書を公表 - 日本取締役協会

「これまで少なくとも 20 年以上、経済成長のエンジンとしてのスタートアップ企業の重要性が叫ばれてきたにもかかわらず、他国と比較し、我が国において、経済成長に大きなインパクトを与えるスタートアップ企業が持続的に生み出される土壌が整っていない」と提言書はいい、「スタートアップ企業を生み出す起業家とその育成を支援する投資家その他ステークホルダーとの役割分担について根本的な誤解があるからである」と厳しく指摘します。

我が国では、何から何までユニークであることを称揚する社会の価値観が、本来はスタンダードであるべきエコシステムをも独自化してしまっており、このことがかえってスタートアップの成長を阻害している。

この独自なエコシステムはコンシューマー向けアプリや企業向け SaaS といった「カジュアル×ローカル」なサービスに最適化されてしまっており、グローバルな社会課題であるGX に向けた代替エネルギーや脱炭素のための技術や産業財、ヘルステックやフードテック領域における「シリアス×グローバル」な領域で勝負できる「ユニーク」なベンチャー・ビジネスの成長プラットフォームとして機能していない。(出所:日本取締役協会)

 合点の行く話です。新しく誕生するスタートアップは米中を模したものが多く、それを生み出すのに最適化されたガラパゴスエコシステムでは、高い志をもった起業家が爪はじきされているのかもしれません。

 提言書は、不確実性の高いベンチャー・ビジネスに関して、 リスク・テイキングは投資家が担うべき役割であるはずなのに、日本ではそれを起業家に求め、投資家等はむしろリスク回避的なアプローチで起業家を支援しているといいます。本来、起業家に求められるのはずの「野心」「独自の技術や視点」「将来の社会に対する洞察」「既存の産業や企業に対する挑戦心」、それらに対する情熱とコミットメントがないのかと指摘しています。

かつての起業家

 かつて日本は名だたる起業家を輩出しました。そして、その人たちによって始まった事業は大きく成長しました。そのひとりにオムロン創業者の立石一真氏があげられるといいます。あの著名な経営学者P・F・ドラッカーも生前、立石氏の情熱、努力、才能を絶賛していたといいます。

オムロン創業者の立石一真さん|私が尊敬するカリスマ経営者 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

「自動改札機」「自動券売機」「道路交通管制システム」「ATM(現金自動預払機)」などは立石氏の功績といいます。彼が発想し開発、世に届けた製品だそうです。

SINIC理論

 立石氏は1970年に、「SINIC理論」を提唱したといいます。その理論では、科学と技術と社会の間には円環論的な関係があり、異なる2つの方向から相互にインパクトを与えあっているいいます。

(引用:オムロン

ひとつの方向は、新しい科学が新しい技術を生み、それが社会へのインパクトとなって社会の変貌を促すというもの。もうひとつの方向は、逆に社会のニーズが新しい技術の開発を促し、それが新しい科学への期待となるというもの。この2つの方向が相関関係により、お互いが原因となり結果となって社会が発展していくという理論です。(出所:オムロン

 この理論では、20世紀は、機械化社会、自動化社会、情報化社会という3つのプロセスが進行する100年で、その後2005年からは「最適化社会」、そのあと2025年からは「自律社会」へ移行すると予測しているといいます。

工業社会において人類は物質的な豊かさを手にいれましたが、最適化社会では、効率や生産性を追い求める工業化社会が残した負の遺産を克服し、人間としての生きていく喜びを追求するといった精神的な豊かさを求める価値観が高まると予測しているそうです。また、心の豊かさを求めるソフトやサービスが主要産業として位置づけられるとしているといいます。

効率・生産性を追求するという工業社会の価値観が相対的に低下してくる一方で、人間として生きている喜び、生の歓喜の追求という価値観が相対的に大きくなってきます。その2つの価値観と、それに基づくいろいろな社会システムやパラダイムの葛藤や軋みが顕在化し、新たな社会システムやパラダイムへと消化されていくプロセスが、最適化社会の20年間であるといえます。(出所:オムロン

 GAFAの成功もそうですし、日本取締役協会の提言書からしても、立石氏の予測もまんざらではないのでしょう。そうであるなのなら、もうそろそろ「自律社会」への移行の準備に取り掛かる時期に入っているのかもしれません。

自律社会へ

「自律社会」とは、自立と連携と創造という三つの構成要素から成り立つそうです。

 急速に浸透し始めたAI 人工知能やロボットは「自律社会」への序章なのでしょうか。

  また、グローバルな社会課題である代替エネルギーやヘルステック等ディープテックシーズが日本には豊富にあると日本取締役協会の提言書は指摘しています。これに「自律社会」というワードを加味して思考すれば、イノベーションが萌芽しそうな気がします。

「参考文書」

未来を描く「SINIC理論」 | 経営の羅針盤-SINIC理論 | 企業理念経営について | オムロン

オムロン創業者の「SINIC理論」の先 最適化社会から自律社会への大転換 | マネーポストWEB