マイナンバーカードを使った各種証明書の誤交付の報道が続いています。このシステム開発を担ったのは富士通Japan。この事態を受け、富士通が「住民が利用する行政サービスへの信頼を損ねた」と謝罪し、再発防止策を明かしたそうです。
富士通、相次ぐコンビニ交付サービス不具合に謝罪 「行政サービスへの信頼損ねた」 再発防止策を開示 - ITmedia NEWS
記事によると、「行政サービスでは、品質統制が不十分なプロジェクトがあった」と問題を認め、「利用シーンや利用者の変化に適した実装技術に関する考慮が不足していた」と分析した結果を明かしたともいいます。
イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと
たいそうなパーパスを掲げていますが、お粗末な結果と言わざるを得ないような気がします。
経営改革
スーパーコンピューター「富岳」などを共同開発するほどの高い技術力を持つはずの富士通、また、製造業や官公庁の基幹情報システムなどに強いとされていました。しかし、この20年間、売上は低迷し、社内には閉塞感が覆い、「FUJITSUブランドは通用しなくなる」との危機感があったといいます。
この空気を一掃して社員のやる気を引き出すため、2019年に就任した時田社長は、「IT企業からデジタルトランスフォーメーション(DX)企業への転身を目指す」と表明、グループ再編を伴う経営改革に取り組み始めたそうです。
世界を知る
その時田社長は2020年の「世界経済フォーラム年次総会」に参加し、名だたるグローバル情報通信企業のCEOが語る内容に衝撃を覚えたといいます。
「5Gを普及させる以前に、世界には3Gや4Gすら使えていない人がいる。そうしたデジタルデバイド(格差)の要因ともいえる貧困をどう撲滅するのか」――。話題は、そんな領域まで広がりを見せた。(出所:プレジデントオンライン)
「彼らは事業を語るときに、必ず社会課題やサステナビリティについて考えています。ビジネスを通じたグローバルな社会課題の解決を、自社の存在意義(パーパス)として言及しており、正直なところ大きな衝撃でありながらも、とても共感を覚えました」と語る時田社長の言葉を記事は紹介しています。
「顧客の悩みを把握して、新しい解決法を提案し、何か新しい変革をもたらすようなビジネスは、これまで思うような結果を出せていませんでした」と、時田社長はダボスでの体験からそう語ったともいいます。
例えば、SAPはその企業の存在意義を「サステナビリティを中心として、より良い世界の実現と人々の生活の向上を支援すること」としており、そのイネーブラー(目的達成のための人・組織・手段)として自社の商品を位置付け、その事業運営を目的実現のための模範となることと定めている。つまり、グローバルIT企業でありながら、社会課題の解決を戦略の中に織り込んでいる企業へと変革が進んでいたのである。(出所:プレジデントオンライン)
時代が移ろい、ビジネス環境が変化しているにもかかわらず、何十年も前に流行ったビジネスモデルのままで戦えようはずもありません。まして 技術論や活用方法だけに終始しているようであれば...、それが高い技術力になるのかもしれませんが、社会や人の暮らしに役立つものではないということだったのでしょう。
少々信じ難い話です。富士通ほどの企業のトップがダボスに行って初めて感じるとはあまりにも鈍感しないでしょうか。社内の競争に勝ち残りトップの座を射止める、しかし、その競争においては、世界も社会も、ましてそこに暮らす人々のことをまったく考えていなかったということでもありそうです。
よりよい社会のために、人々の生活に役立つためとの意識が薄れているから、品質も劣化していくのかもしれません。これが日本の現実なのでしょうか。