国の行政機関はいくつもの省庁分れている。緊急事態宣言が解除されると、早速、各省庁が慌ただしく動き出すようだ。コロナ対策に相反し、その動きの早さに驚く。
「Go Toトラベル事業」の事業開始へ準備指示
赤羽国土交通大臣、「新しい旅行スタイルを国民に明示へ」と航空新聞社が伝える。
航空新聞社によれば、「観光振興の観点からの人の移動について、まずは本日以降6月18日頃まで県内観光の振興を、6月19日頃から県外から人の呼び込みを実施することが想定されている」として、観光庁に対し、段階的な観光再開とその先の観光振興への道筋を検討するとともに、必要な環境整備に万全を期すよう指示した」という。
(資料出所:首相官邸公式ページ「新型コロナウイルス感染症対策本部(第36 回)」)
観光庁や経産省などは近く「Go Toキャンペーン」の運営事務局の公募を開始する予定だ。
運営事務局が公募で決まれば、事務局を通じて自治体や事業者等に対して同キャンペーンへの参画を呼びかけエントリーしてもらうほか、国民にキャンペーンの内容について周知PRするなど準備を進め、最終的には感染状況を見極めた上で、なるべく早期に事業を開始したい考えだ。
現時点で「Go Toキャンペーン」の開始時期は正式には決まっていないが、今後の感染封じ込めを大前提に、キャンペーンの開始時期は最速で7月下旬から、本格的支援は8月からになる見通しだ。 (出所:航空新聞社)
IATA 国際航空運送協会という組織がある。Wikipediaによれば、世界の航空会社で構成される業界団体で、およそ120か国、約265社の航空会社が加盟し、世界の定期運航のうち約83%をIATA加盟の航空会社が占めているという。IATAは航空会社の活動を支援し、業界の方針や統一基準制定に寄与しているそうだ。
そのIATAが、新型コロナウイルスの影響で大幅に減便が続いてる航空業界の再開に向けて、新たに5つの原則を発表したとトラベルボイスが伝える。
1. 常に安全とセキュリティを最優先
科学的根拠に基づくバイオセキュリティ体制を構築、航空は、COVID-19を含む伝染病が拡大する源ではないことを保証する。
2. 危機の状況と科学的根拠の変化に応じた柔軟な対応
COVID-19検査や免疫パスポートなど、信頼性が高く、汎用性があり、効率的な解決策に向けて、新しいテクノロジーを活用していく。
3. 経済回復の重要な推進力としての航空
景気回復に向けた需要に応えるため、できるだけ迅速に供給能力を再整備する。パンデミック後、手頃な価格で航空輸送を利用できるようにする。
4. 環境目標の達成に向けた取り組み
2050年までに純炭素排出量を2005年レベルの半分に削減するという長期目標の達成を目指す。国際航空のためのカーボンオフセット・削減スキームを実行に移す。
5. 各国政府が相互に承認したグローバル基準に従って運航
国際民間航空機関(ICAO)および世界保健機関(WHO)との強力なパートナーシップのもと、航空の効果的な再開に必要なグローバル基準を確立する。
合意された対策が各国政府によって相互承認され、効果的に実施されるようにする。 (参考:トラベルボイス)
ロイターは、「変わる旅のかたち、コロナ後も需要回復に長い道のり」と伝える。
旅行業はこれまでも世界的な危機の後に、しぶとく回復できることを証明してきた。だから、ひとたび新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療法が見つかれば、旅行に出掛けたくてうずうずしていた世界の人たちは再び、ほぼまっしぐらにサムソナイトのスーツケースに飛び付いて支度を詰め込むことが示唆される。
ただし、健康検査と法人旅客には顕著な変化が起きる可能性が高い。 (出所:ロイター)
この先、「免疫パスポート」なるものが、海外旅行に必要になるのだろうか。
AFPによれば、WHOは、「感染リスクのない証明書」を発行できるだけの「十分な証拠はない」と警鐘を鳴らし、感染者は「抗体反応を持つようになり、これが一定の防御につながることはあるだろう」とした上で、「ただし、その防御の程度や、その効果がいつまで続くかはまだ分かっていない」と指摘したそうだ。
ビフォーコロナでは、航空業界の成長産業と目されていた。あのウォーレン・バフェットの投資会社バークシャー・ハサウェイは、コロナ危機の前で、米航空大手4社の株式を大量に保有していたが、ロイターによれば、コロナショックで手放したという。
コロナショックが突然やってきて、成長するはずだった航空業界に少しばかりブレーキをかけたようにも見える。
その航空業界が、再開に向けて、「サスティナビリティ」についても再び言及した。何が何でも、復興ありきではなく、「安全」とともに「サスティナビリティ」を目指すとしたことに少しばかり安堵する。
トラベルボイスによれば、「世界の航空会社は、責任を持って、安全で持続可能な運航再開に向けて動くことになる」とIATAの事務局長がコメントしたという。
人々が以前のように活発に動き出すまでにはもう少し時間がかかるのかもしれない。それは、サスティナブルな空の旅を実現するための時間ということなのかもしれない。
ワクチン次第なのか、それとも、政府キャンペーンや、航空会社、ホテル、オンライン予約サイトが、魅力ある割引サービスを展開することで、再び旅行を始めるかもしれない。
カーボンオフセット・削減スキーム(CORSIA)の実施は 来年2021年の予定だ。( CORSIAとは、Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviationの略で、国際航空におけるカーボンオフセット制度のこと。)
各運航会社は、定められたルールに沿って必要量の排出枠を購入し、オフセットする義務が課される。オフセットの義務については、制度の開始初期は国際航空において2020年より増加したCO2排出量について、各運航者の排出量に応じた割当、2030年以降は段階的に各社のCO2排出削減量を反映した割当に移行していくことが予定されている (出所:カーボン市場エクスプレス)
消費者行動との競争になるのかもしれない。いち早い「IATAの5原則」の実施が求められる。
ANAは、2009年から個人ベースで参加できる「カーボン・オフセットプログラム」を提供している。搭乗する航空機が排出するCO2相当量をオフセットできるというサービスだそうだ。
ポストコロナで、「飛び恥」は死語になるのだろうか。
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