Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

続く九州での大雨 気候危機時代のダムに頼らない「いなす防災」、生態系と共存する減災

 

 梅雨空が続く。九州で続く大雨での被害が深刻だ。

 連日の大雨特別警報、九州各地で観測史上最大の雨が降っている。狂暴化する梅雨前線とでも言っていいのだろうか。また、「線状降水帯」が出現したようだ。

 猛烈な大雨、こうしたことがもう普通になってしまったのだろうか。

 

特別警報は「数十年に1度」の災害が差し迫ったときに発表される最大級の警報だ。それが「毎年1度」のペースになっている現実に驚くほかはない。

気象庁は昨夏、豪雨に関し、必ずしも明らかでなかった地球温暖化との因果関係に初めて言及した

温暖化が止まらない限り、海面からの水蒸気をエネルギー源にした豪雨が頻発し、被害は増え続けることになる。 (出所:西日本新聞

 

 昨年8月末に、福岡、佐賀、長崎各県に大雨特別警報が発令されたときの西日本新聞の表現だが、「毎年1度」が毎年数回ということになっていくのかもしれない。

 

 今も続く大雨も、昨年晩夏の大雨と同じパターンということなのだろうか。

 

自治体が作成したハザード(被害予測)マップで、自宅周辺の危険箇所や災害別の避難場所を知ることができる。日ごろから頭に入れておき、避難指示が出ても慌てず、どう行動すべきか判断したい。「避難」とは自らの命を守ることである

 気象庁によると、28日未明から明け方にかけて九州北部で積乱雲が次々と発生し、同じ地域に雨が降り続ける線状降水帯が形成された。近年の豪雨と同じ気象パターンである。(出所:西日本新聞

 

www.nishinippon.co.jp

 

 

 

 6月末、小泉進次郎環境相武田良太防災担当相が、『気候危機時代の「気候変動×防災」戦略』の共同メッセージとして発表した。

 共同メッセージの冒頭にこんな行がある。

 世界の二酸化炭素濃度は工業化以前の約 280ppm から約 410ppm へと 1.5 倍に上昇し、世界中で気象災害が頻発するなど気候変動が現実のものとなっている

 わが国では日降水量 200mm 以上の大雨の発生日数が 20 世紀初めと比べ約 1.7 倍となり、大雨の頻度や強度が増加し、平成 29 年7月九州北部豪雨、平成 30 年7月豪雨、令和元年東日本台風など気象災害は激甚化、頻発化している。

今後も気候変動により大雨や洪水の発生頻度が増加すると予測されており、これまでの想定を超える気象災害が各地で頻繁に生じる時代に入ったことを認識する必要がある。 

(出所:環境省公式サイト「気候危機時代の「気候変動×防災」戦略~「原形復旧」から「適応復興」へ~(共同メッセージ)」

 

 国の正式見解として、受け止めてもよいのだろう。

 

  朝日新聞は、「環境省内閣府は、気候変動のリスクをふまえた防災・減災の戦略をまとめた」と報じ、「ダムや堤防などのハード対策の強化よりも「危ない土地には住まない」「自然の機能を活用する」など「災害をいなす防災」を重視する」と伝える。

気候変動による災害は、常に従来の想定を超える可能性がある

過去の災害規模を参考にしたハード対策では防ぎきれず、ハードの積み増しにも限界がある

戦略では、今後の人口減もふまえて、災害リスクの高い場所で新たな都市開発を抑制する、既存の住宅を移転するなど「災害危険エリアからの戦略的な撤退を進めるべきだ」とした。

 また河川沿いの湿地を災害時に水を逃す遊水地として活用するなど、自然を活用した防災の必要性も説いた。 (出所:朝日新聞

 

www.asahi.com

 

 

 

 環境省が公表した共同メッセージでは、「脱炭素で防災力の高い社会の構築に向けた包括的な対策の推進」が掲げられ、新型コロナの問題と合わせ、感染症に強い国づくりを進める上でも「集中から分散へ」という視点が重要になるという。

 

 以下、環境省公式サイト「「気候変動×防災」に関する共同メッセージの公表について」からの抜粋を記載する。


グリーンインフラ、生態系を活用した防災・減災

 古来の知恵に学び、自然が持つ多様な機能を活用して災害リスクの低減等を図る「グリーンインフラ」や「生態系を活用した防災・減災」の取組を本格的に実行すべきであると指摘する。

インフラ整備と土地利用のコントロールに当たっては、自然環境の保全との両立を図る必要がある。古来、水害に苦しんできたわが国では、地域の特性、自然の性質を活かし、森林による保水力の活用、河川と農地の一体性を確保する伝統的な治水技術(霞堤)、計画的に洪水を貯留する遊水地なども活用しながら川を治めてきた。

例えば、武田信玄は、暴れ川とも言われた釜無川の治水に当たり、自然物によって水勢を抑制し、不連続の堤防を二重三重に築き、氾濫したとしても釜無川に戻しやすくすることにより被害の最小化を図るとともに、堤を維持するためにケヤキ等の水防林を設置した。

こうした自然の性質を活かして整備された森林や遊水地などは、その地域の生物の生息地確保にも貢献した。 (出所:環境省公式サイト)

 

適応策と緩和策の一体的推進

気候変動の影響を最小限とするためには、気候変動への適応策のみならず、緩和策、すなわち、温室効果ガスの削減を通じ、脱炭素社会への移行を進めていくことが不可欠であるという。

2050 年実質排出ゼロを掲げる「ゼロカーボンシティ」が拡大しており、この取組をより一層後押ししていかなければならない。この観点から、地域の資源を活かした再生可能エネルギーの導入加速化が不可欠である。

緩和と適応の両面を兼ね備えた取組として、災害時に避難施設や防災拠点としても活用される公共施設、建築物・住宅、一定の街区に再生可能エネルギー設備等を導入する取組、一般廃棄物処理施設を災害時にも地域にエネルギーを供給するエネルギーセンターとして活用できるよう整備・強靱化を行う取組、災害時に蓄電池として活用可能な電動モビリティの導入を加速していくべきである。 (出所:環境省公式サイト)


「災害をいなし、すぐ興す」社会へ

以上のような包括的な対策を通じて目指す社会は、災害は生じるものとして被害を最小限にするとともに、被害を受けてもより強靱で魅力的な地域に回復する、弾力的かつ安全・安心で持続可能な社会、いわば「災害をいなし、すぐに興す」社会である。 (出所:環境省公式サイト)

 

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(資料出所:環境省公式サイト「気候変動×防災」概要

 

www.env.go.jp

 

 

 

 球磨川が氾濫し、甚大な被害が出た熊本県蒲島郁夫知事が、『「ダムによらない治水」を12年間でできなかったことが非常に悔やまれる』と語ったと毎日新聞が伝える。

 蒲島知事は、「改めて「ダムによらない治水」を極限まで検討する必要を確信した次第だ」とも話したという。

 

mainichi.jp

 

 ひとつダムを作ったからといって、今回のような災害を防ぐことはできないだろう。必要なハード的な対策もあろうが、やはり、環境省も指摘したが、先人の智慧によるのがいいのかもしれない。

 大規模かつ高度な土木技術がなかった時代は自然の力を活用するしか手はなかったはずだ。

 環境省が例として示した「信玄堤」は参考になるのかもしれない。

 

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(資料出所:国土交通省甲府河川国道事務所「歴史に学ぶ治水の智恵 富士川の治水を見る  ● 信玄堤 ● 万力林 ● 雁 堤」

 

 

地球温暖化の進行により今後豪雨災害や猛暑のリスクがさらに高まると予測され、将来世代にわたる影響が強く懸念される」

 政府はこう警告する令和2年版環境白書を6月12日に閣議決定したとマイナビニュースが伝える。

白書は、「気候変動」の問題は今や人類を含む全ての生き物の生存基盤を揺るがす「気候危機」の段階で、海洋プラスチック汚染や生物多様性の損失と相互に関連していると強調。

経済・社会システムや日常生活の在り方を大きく変える「社会変革」を求めている。 (出所:マイナビニュース)

 

news.mynavi.jp

 

 環境白書では、「2020年が節目の年になる」と記されていたが、まさにその通りなのかもしれない。

 このコロナといい、激甚化する災害からしても、真に「行動変容」が求められているということなのであろう。

 

自助・共助の促進

「災害をいなし、すぐに興す」社会をつくるためには、災害に対し、国民や企業が「自分は大丈夫」という意識から脱却し、平時から災害に備えることが必要である。

一人一人が、気候変動により想定を超える気象災害が生じる可能性も認識した上で、

「自らの命は自らが守る」自助や、

「皆と共に助かる」共助の意識を持って、

平時からハザードマップを確認し、自宅、職場、地域の災害リスクを認識し、災害発生時にとるべき避難等の行動を確認するよう防災意識の向上を促す取組が必要である。  (出所:環境省公式サイト)

 

 九州の被害を見て、つくづくそう感じる。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

www.nikkei.com

 

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