秋サケや秋刀魚が不漁と聞く。季節の定番が変ってしまうのだろうか。
地球温暖化によりコメの収量減や魚の分布の変化が生じ、今世紀中に国内の1次産業に深刻な影響が出ると、共同通信が伝える。
この報道にもとになっているのが、環境省の有識者会議がまとめた「気候変動影響評価報告書」案だ。
漁業では、マグロ類は今世紀末ごろに「太平洋の亜熱帯域で漁獲量が減る」と評価。
サケ・マス類は日本周辺の生息域が縮小し、サンマは漁場が遠くなる上、小ぶりになるとしている。 (出所:共同通信)
この報告書案は一般からの意見募集を経て正式に決定されるという。
気候変動影響評価報告書
環境省が公表している資料を確認してみると、農業など1次産業から産業・経済活動、私たちの健康まで様々な分野について、気候変動による影響評価がされている。
メディアで報道されない内容もある。
(農業)
・コメの収量・品質の低下(一等米比率の低下等)
・露地野菜の収穫期の早期化、生育障害の増加
・果樹の栽培適地の変化(ミカン、リンゴ、ワイン用ブドウ等)
・大豆、麦の減収、品質低下、一番茶の摘採期の早期化
・家畜の生産能力、繁殖機能の低下(牛、豚、鶏等)
・害虫の分布域の拡大、病害の発生地域の拡大(水産業)
・回遊性魚類(まぐろ類、ブリ、さけ・ます類等)の分布域、回遊経路の変化
(資料出所:環境省公式サイト「気候変動影響評価報告書(詳細)の概要」)
また、この報告書案では、「気候変動の観測結果と将来予測」という項目で、極端現象の予測もなされ、猛暑日、熱帯夜などについて考察する。
観測結果
「日最高気温、日最低気温に基づく猛暑日や熱帯夜等の日数について 13 観測地点11の観測値を用いて解析を行ったところ、1910 年から 2019 年の統計期間の間で、日最高気温が 30℃以上の日(真夏日)及び 35℃以上の日(猛暑日)の日数はともに統計的に有意に増加している(信頼水準 99%以上)。
特に、猛暑日の日数は 1990 年代半ばを境に大きく増加している。一方、同期間における日最低気温が 0℃未満(冬日)の日数は減少し、また、日最低気温が 25℃以上(熱帯夜)の日数は増加している(いずれも信頼水準 99%で統計的に有意)」
(出所:環境省公式サイト「気候変動影響評価報告書(総説)(環境省案))
将来予測
21 世紀末(2076~2095 年平均)には 20 世紀末(1980~1999 年平均)と比べ、RCP8.5 シナリオの下では猛暑日となるような極端に暑い日の年間日数が全国的に有意に増加すると予測される(確信度は高い)。
北日本では主に夏に、東日本以西では夏から秋にかけて増加すると予想される。真夏日の年間日数も同様に全国的に有意に増加し、その増加量は北日本太平洋側で 30 日程度、沖縄・奄美で 88 日程度となることが予測される。
熱帯夜の年間日数も、全国的に有意に増加することが予測される。特に、沿岸部など標高の低い地域でより多く増加する。
(出所:環境省公式サイト「気候変動影響評価報告書(総説)(環境省案)」)
この「気候変動影響評価報告書」は2015年に初版が発行され、今回はその内容を見直し、2015年からの変化点が記されている。劇的に悪化とは言わないでも、この5年で、悪化方向にあることは間違いなそうだ。
東京電力が温室効果ガス排出量の削減 へ
東京電力が、発電時のCO2排出量を2030年度までに13年度比で50%以上削減するという。大手電力が業界単位ではなく個社で削減目標を設定するのは国内で初めてのことだと日経ビジネスが伝える。
30年度のCO2排出量を13年度と比べて半減する目標を設定した。
具体的には、顧客に届ける電気の、発電時のCO2排出量を50%以上減らす。今秋発行の統合報告書にも掲載する。
50年目標も現在検討中で、21年度以降の決定となるだろう。グループの電源のCO2削減に加え、顧客の省エネも促して達成を目指す。 (出所:日経ビジネス)
東電がGHG温室効果ガスのひとつCO2を削減したところで、気候変動が収まるわけではない。みなが応分に責任を負って、GHGの削減にチャレンジしていかなければ、何も変化しない。
東電が初めてのこととは少しばかりさみしい気もする。これがきっかけになって他の大手電力も続くのだろうか。
「気候変動の適応と緩和」を政策の1丁目1番地に
九州での豪雨、連日続くようになった猛暑日、そして、先日の台風10号と、この夏の異常気象には驚かされ続けた。
Typhoon Haishen pic.twitter.com/TbnlJC7taw
— Chris Cassidy (@Astro_SEAL) 2020年9月6日
DX デジタルトランスフォーメーションも重要なことであろうが、新しい政府には、何としてでも、「気候変動の適応と緩和」を政策の1丁目1番地にして欲しいとつくづく感じる。
「参考文書」