植物由来代替肉の米ビヨンドミートが中国に工場を建設し、生産を始めるという。中国では代替肉などの植物由来の食品に対する関心が高いという。東洋経済オンラインによれば、ビヨンドミートのライバル インポッシブル・フーズも巨大市場中国への進出をもくろむが、使用する「大豆レグヘモグロビン」には遺伝子組み換え技術が使われていて、それが障壁になっているという。ビヨンドミートは非遺伝子組み換え認証を取得し、合成原料は使用していないという。
世界全体で排出されるGHG温室効果ガスのうち、畜産業で約15%占めるという。肉食を減らせば、地球温暖化や資源枯渇、動物福祉において良い影響がもたらされるという。そうした理由もあって代替肉に注目が集まっている。
代替肉に使われる遺伝子組み換え製品 インポッシブルフーズの場合
インポッシブルフーズに使用される遺伝子組み換えのことが気になる。Yahooニュースの田中めぐみ氏によれば、たんぱく源となる遺伝子組み換え大豆と肉の色や風味を出す物質としてヘムの2種が使われているという。
ヘムは、大豆の根粒からレグヘモグロビンという物質の遺伝子を抽出し、酵母に注入して培養することで生成する。このレグヘモグロビンは昨年、アメリカ食品医薬品局FDAが着色料としてひき肉類似製品への使用を認可したという。
FDAなどによって遺伝子組み換え製品は人間、植物、動物いずれにとっても安全と結論付けており、アメリカでは広く普及しているそうだ。
同社は、遺伝子組み換え技術を採用することで、大豆の使用量を大幅に削減していると説明しています。
当初は非遺伝子組み換え大豆を使用していたそうですが、アメリカで栽培されている大豆の90%以上が遺伝子組み換えであることや、非遺伝子組み換え大豆の栽培時の環境負荷を鑑み、遺伝子組み換えに切り替えたとしています。 (出所:Yahooニュース)
代替肉の台頭と菜食時代へ ?
記事によれば、2040年までに培養肉が肉市場の35%、植物性代替肉が25%を占め、代替肉が市場の半数以上になるとのコンサルティング会社ATカーニーの予測があるという。
田中氏は、自然災害の規模と頻度が拡大する中、環境負荷の高い肉食をこれまでと同じペースで続けることは難しくなると指摘する。
いずれ肉を食べることが贅沢となり、好むと好まざるとにかかわらず、代替肉を消費せざるを得ない日が来るかもしれません。
そして、培養肉が市場に出る時が、菜食時代の幕開けとなるのかもしれません。 (出所:Yahooニュース)
これらの予測の方向に進んでいくのかはわからない。しかし、確実に代替肉の支持者が増えていることは間違いなさそうだ。
国内の代替肉動向とルール作り
時事通信によれば、国内でも、伊藤ハムの大豆を原料としたハンバーグなどの売れ行きが好調で、当初計画の倍の販売になっているという。また、ハンバーガーチェーン「フレッシュネスバーガー」は10月に本格販売するテリヤキバーガーに、ベンチャー企業「DAIZ」が開発したチップ状の乾燥大豆を活用し、肉を一切使わないという。
こうした状況を鑑みてのことなのか、農林水産省が、民間企業と連携して大豆を主原料とする「代替肉」についてのルールづくりに乗り出すという。
代替肉には、牛の細胞から培養して作る「培養肉」もあるが、当面は市場拡大が期待される大豆など植物性たんぱく質を利用する植物由来の代替肉のルールづくりを先行させると時事通信は伝える。
日経BP総研は、「培養肉」のリスクについて、いくつか指摘する。そのひとつは、細胞培養という技術によってつくられる「代替肉」に懸念を持つ消費者への対応があるという。
「遺伝子組み換え食品ではありません」という表示はスーパーなどで日常的に見かけるようになった。
技術と生産工程の透明性を高め、消費者に対して正しく説明できるかどうか、それが代替肉のさらなる普及にとって鍵になる。
食品安全面で確立された指標がまだない、生産・流通システムの構築にあたり既存の食肉業界との調整が必要、といったハードルもある。 (出所:日経BP総研)
「培養肉」ばかりでなく代替肉全体でバリューチェーンの透明性が求められることは必至なのだろう。
まとめ
地球温暖化や国連が指摘する人口増による食糧危機を考えれば、これらは有効な解決策のひとつになるのかもしれない。国内食品大手の間でも「新たなたんぱく源が必要」との認識が高まっているという。
「どの世代の人たちも、少なくともひとつは世界を大きく変える技術に取り組まなければならないといえるだろう。その技術を理解し、適用し、規制する責任を負うのだ」
(引用:「巨象も踊る」 ルイス・ガースナー元IBM CEO)
気候変動が深刻化し、その解決に向け、様々な選択肢が提供され始めているようだ。それらのことについて学び理解し選択する。そんなことが今求められているのかもしれない。そして、その選択が地球を救うことになる。
代替肉をはじめとする様々なバイオテクノロジーを使ったバイオエコノミーが動き出しているようだ。
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