Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

「サステナビリティ」はもうあたり前なのか。 テスラの「バッテリー・デー」から学ぶ

 

 「サステナビリティ」が一気に堰を切ったように動き出す。様々なメディアで取り上げられるようになり、それぞれがそれぞれの視点から「サステナビリティ」を語る。それはそれでいいことなのかもしれない。意見の積み重ねが新たな気づきにつながったりするものだ。

 「LIMO くらしとお金の経済メディア」は、再生可能エネルギーを取り上げ、アフリカの無電力地域における有用性を説く。 

 

 

 それによれば、アフリカは人口密度が低くく、従来のグリッド型電力系統の導入は投資効率が悪く、それが、アフリカの多く地域で無電化状態から脱することができない理由だと指摘する。これを打破するため、特に太陽光発電の可能性に注目が集まっているという。小型化も進んでいるため、送電網の届きにくいアフリカ地域での活用が期待されているという。こうした取組みは、その地域の人々の生活環境を大きく改善させ、暗闇に光を照らすことが、その地域の人々の未来に光を照らすことにつながるのですと説明する。 

limo.media

 

小さな成果と大いなる一歩 問題に挑む先駆者たち 

 多くの人が気にかけるようになれば、その問題に取り組む先駆者たちの努力も報われる。新たな気づきで参加する人が増えれば、問題もいつの間にか解決され、問題が問題でなくなるのかもしれない。

wired.jp

 

 wiredが紹介する「WASSHA」が創業したのは2013年(当時はDigital Grid Solutionsという名だった)。それから7年余り、それでもまだ彼が行動を起こしたことで得られた結果は問題の大きさからすれば、微々たるものなのだろう。しかし、それは大いなる一歩になったのかもしれない。 

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(写真出所:パナソニック公式サイト)

 

 パナソニックは、ソーラーランタンの寄贈の他に、「無電化ソリューション」を開発、提供している。無電化地域の生活照明、電源として利用できるエネループソーラーストレージ、高効率太陽電池と蓄電池をパッケージ化し、無電化地域のインフラ電源としての利用促進を進める。 

dsupplying.hatenablog.com

 

 こうした地道な活動があるからこそ、明日の誰かの気づきにつながり、ポジティブな連鎖が始まるのかもしれない。 

 

 

 脱炭素へ テスラは挑戦者なのか 

 米国にテスラという会社がある。一時トヨタ時価総額を超えたということが話題になった。誰もが認めるEVメーカなのだろう。

 

EVメーカなのか、それともエネルギー会社なのか

 しかし、ある人はエネルギーテック会社という。EVの開発・製造ばかりでなく、それ以外に規制クレジットを得ているのが理由だろうか。

 マネクリは、既にテスラが多額の規制クレジットで利益を得ていると指摘する。それに加え、2021年に導入予定のEUにおける排ガス規制の強化で、自動車メーカー各社がこの新基準に適合できなかった場合、巨額の罰金を科されることになり、テスラなどEVなどで先行する他社からカーボンクレジットを調達しなければならなくなるという。EVの販売が伸長するテスラにとってはさらに追い風だと指摘する。

(2016年に)社名を「テスラ・モーターズ」から「テスラ」に変更したことからもわかるように、既存の自動車メーカーとは一線を画す、業界の変革者であると言える。

EVだけではなく、家庭用蓄電池や業務用蓄電池等の関連製品も手がけており、エネルギーテック企業へと進化を続けている。 (出所:マネクリ)

media.monex.co.jp

 

260万円と安価なEVは驚きなのか、失望なのか

 そのテスラが22日、株主総会に引き続いて「バッテリー・デー」を開催し、バッテリーセルの内製化と3年後に260万円という手ごろな価格の新車を販売すると発表したという。

 多くの人たちがその低廉な価格に驚いたが、株主の一部はテスラ株を手放し、株価は一時7%下落したという。理由は、「バッテリーデー」での電池事業の説明に驚き、サプライズがなかったことのようだ。

 

 

 賛否両論はあるものだ。人は自分に理解できないことについて、学ぼうとせず反対するほうが多かったりする。 

数年前までテスラといえば、大衆向けの車っていうよりも高級車とか物好きな人向けの車ってイメージでした。

ところが最近では、約400万円から買えるModel 3のようなモデルが出ていますし、少しずつ一般ユーザーにも普及し始めている印象があります。 (出所:GIZMODO) 

www.gizmodo.jp

 

 IG証券は、イベントの翌日に株価が大幅安となったことについて「(うわさで買って)事実で売る」との格言の実践に過ぎないとの指摘があるという。

 今日、理解できなかったことが、失望につながったりするのだろう。

 IG証券によれば、ドイツ銀行は、自動車の電気化への投資の最善の手段として、テスラ株の安値拾いを長期スタンスの投資家に推奨するとしたという。テクノロジー面での強さがこのイベントで示されたことが理由のようだ。一方、ゴールドマン・サックスは、投資判断を「中立」のまま継続したという。

 同じ現実をみても、人によって判断は異なる。不思議なものである。どちらが正しいのであろうか。 

www.ig.com

 

 テスラとはどういう会社なのか

 テスラの公式サイトの企業情報にこんな記載がある。

世界を持続可能なエネルギーへ。

電気自動車は ガソリン車よりも優れていて、速く、楽しく、運転に妥協する必要がないことを証明したい --- そう願った数名のエンジニアにより、2003年、Teslaは創業されました。

その後、Teslaは100%電気自動車だけでなく、限りなく拡張可能な、クリーンエネルギーを発蓄電する製品をも製造する会社となり、世界の化石燃料への依存に終止符を打ち、ゼロエミッション社会への移行を加速することで、より良い未来を実現したいと考えています。(出所:テスラ公式サイト 企業情報)

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(写真出所:テスラ公式サイト

 

 テスラは、完全に持続可能なエネルギー エコシステムの構築を目指しているという。電気自動車EVの他にも、一般住宅、商用施設用に再生可能エネルギーの生産と蓄電を可能にするソリューションを提供している。国内向けでもソーラーパネルや家庭用蓄電池の販売が始まり、産業用蓄電システムも取り扱う。

 

これはまだ始まりに過ぎません。

Teslaではこれまでで最も手頃な価格の自動車を製造し、より多くの方達の手に届くように今後も製品の開発を続け、最終的にクリーンな移動手段とエネルギー生産の台頭を加速します。

電気自動車、バッテリー、そして再生可能エネルギーの生産と貯蔵方法は既に別々には存在しますが、それらは組み合わせることで更なる力を発揮します。Teslaが目指すのはそんな未来です。 (出所:テスラ公式サイト)

www.tesla.com

 

 

 テスラに死角はないのか

  Forbesによれば、株主総会では、「アクティビスト投資家が従業員の労働状況に関する情報開示と、バッテリーや他の部品に用いる原材料をエシカル(倫理的)に調達することを確約するよう求めた」という。しかし、テスラの取締役は、これらの提案に反対票を投じるよう株主に呼びかけ、否決される見通しだという。

forbesjapan.com

 

 すべてのことを一気に解決することはできないのかもしれない。

 

 テスラが「ゼロエミッション」を実現するために掲げたマスタープランにはこんなことが書かれている。 

スポーツカーを作る。
その売上で手頃な価格のクルマを作る。
さらにその売上でもっと手頃な価格のクルマを作る。
上記を進めながら、ゼロエミッションの発電オプションを提供する。
これは、ここだけの秘密です。 (出所:テスラ公式サイト)

 成功とは、自らにとって価値がある実現可能な目標をひとつずつ実現していく過程にあるとの言葉がある。こうしたことの繰り返しで、「サステナビリティ」持続可能性につながっていくのかもしれない。

dsupplying.hatenablog.com

 

 国内で菅首相が記者会見で、携帯電話キャリアの料金が高いと指摘した。4割くらい安くできるはずだという。5G普及に向け投資もかさむのかもしれないが、だからといって、価格を手軽にする努力を怠っていいのかということなのだろう。

 菅首相の目にはテスラはどう映るのだろうか。当たり前のことをやっている会社にしか見えないのかもしれない。