時々戸惑うことがある。欧米企業はサスティナビリティに関し、なぜ無理してそこまでやろうとするのか。穿った見方をすれば偽善行為なのではないかと。
ダイヤモンドの英デビアスが11月末、今後10年間に取り組む12の目標を発表した。それには、「職場における男女機会均等の達成」、「ダイヤモンド産出国において1万人の女性起業家を支援すること」、そして「2030年までに自社の操業における二酸化炭素の排出量を相殺すること」などが含まれる。
エシカル 倫理的な行動をリードするダイヤモンド
ダイヤモンドというと、どうしても紛争ダイヤモンドが頭をよぎる。きな臭く、こうしたサスティナビリティの世界とは縁遠いところにあるものかと勝手に想像していた。
デビアスの目標は4つの柱からなるという。
「業界全体の倫理的な行動をリードしていく」、
「地域社会が繁栄していくための提携」、
「自然界を守る」、
「機会均等を加速する」。
(資料:DEBEERS)
デビアスは、2030年までの「ビジョン」を、「私たちは、業界標準を進歩させ、ダイヤモンドの出所の透明性を高め、職人や鉱夫の生活を改善するために、たゆまぬ努力を続けます」とする。
ネスプレッソやペリエがカーボンニュートラルに
世界最大手の食品メーカのネスレが3日、今後10年間で2億本の植樹や、農家やサプライヤーの環境再生型農業への転換を支援すると発表した。ブルームバーグによれば、気候変動対策費として今後5年間で32億スイス・フラン(約3740億円)を投じる計画だという。
カプセル式コーヒー「ネスプレッソ」や炭酸入りミネラルウォーター「ペリエ」、「サンペレグリノ」は2022年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を実現する。 (出所:ブルームバーグ)
ネスレによると、すでに50万人以上の農家と協力して、環境再生型農業を支援しているという。これによって、土壌の健康は改善し、多様な生態系を維持、回復するという。そのために、農家からはプレミアムをつけて商品を大量に購入し報酬を提供するという。ネスレは、2030年までに環境再生型農業を通じて1400万トン以上の原料を調達し、それによって作られる商品の需要を押し上げことができると見込んでいるという。
ネスレは、この他にも、食に安全なリサイクルされたプラスチックの利用を促進しようと最大20億フランの投資計画をすでに進めているとブルームバーグが伝える。
アップルから学ぶべきこと
「気候変動イニシアティブ(JCI)」に参加するソニーやリコー、花王などの国内大手のトップが11月、河野規制改革担当相と面談した。ロイターによれば、面談した4社は、欧州事業では製品の製造で再生エネルギーを最大50%利用できるのに、日本では1%前後にとどまる事例が多々あると訴えたという。
大口の購入先が向こう10年内での劇的な変革を要求する中で、日本企業が窮地に立たされている形だと、ロイターは指摘する。
その背景は、ソニーが取引する米アップルのカーボンニュートラル宣言だ。アップルはスコープ3での2030年のカーボンニュートラルを宣言した。それゆえ、ソニーもアップル同様、納入する製品のカーボンニュートラルを達成しなければならなくなる。
いくらIT業界の巨人・アップルの要請があるとは言っても、政策担当者が立ち遅れていては、変革することはできない。 (出所:ロイター)
スティーブジョブズの頃はアップルはイノベーションの意味を示し、ソフトウェアの重要性を教えてくれた。ティムクックのアップルは、ジョブズの頃とは様変わりし、そうした破壊的なイノベーションはなくなったのかもしれない。しかし、今もアイフォンなどのハードウェアは多くの人々から支持され続けている。
「地球から何も取らずに製品を作る」
それが今のアップルの目標だという。
ティムクックが進める本気のサスティナビリティが、今のアップルのイノベーションなのかもしれない。ただそれは今までのように市場を独占できるとか、そういうことから縁遠いように思える。それでも、アップルは驚くほどの利益あげ、世界一の企業との称号を得る。利益も富もすべて結果に過ぎないということなのだろうか。
アップルだけでなく、ネスレやイケア、デビアスなど多くの多国籍企業が、自社のサプライチェーン上に存在するサプライヤーの事業で排出された温室効果ガスの削減を義務付ける厳しい目標(スコープ3)を掲げているとロイターは指摘する。
時代が大きく変化しているのかもしれない。こうした企業に協力できない、協力する意思がない企業は「負け組」になってしまうだろうとロイターはいう。
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