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前進と後退 パリ協定から5年を記念した国連気候サミットが開催

 

 パリ協定、2015年12月12日、フランスのパリで開催されたCOP21 第21回気候変動枠組条約締約国会議で採択された気候変動抑制に関する多国間の国際的な合意のことをいう。この協定では、世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑え、それに加え「1.5度未満」を目指すことに189ヶ国が合意した。

 昨日12日、その「パリ協定」が採択されてから5年が経ち、それを記念した国連気候サミットがオンラインで開催された。日本からは菅首相がビデオメッセージを送り、中国の習国家主席も話をしたという。グローバル企業のリーダーたちも参加、アップルのティムクックCEOも参加したという。 

 パリ協定5年という節目に各国がそれぞれに反応を示す。

 

 

 

パリ協定から5年 見えてきた光

 過去5年間、世界のGHG温室効果ガスの排出は増え続け、米国が協定から離脱し、その目標は達成できないように思われていたと英フィナンシャルタイムズはいう。しかし、今、トーンが変化したともいう。

 科学者たちは、カーボンニュートラル達成という気候公約する国が増え、地球の温暖化の軌道を押し下げる効果があると指摘しているという。

 ここ数か月間の間に、日本を始め、中国、韓国がカーボンニュートラルの目標を発表し、米国が来年1月にカーボンニュートラルの目標を設定すれば、世界の大国のほとんどがその目標を設定することになり、世界の排出量の63%がこれらの目標でカバーされることになる。

 これがターニングポイントになるのかと問われた科学者は、「そうだ」という。世界の大国がカーボンニュートラルの目標を達成できれば、パリ協定の目標は達成可能になるという。

 米ABCもこのトピックスに触れる。英フィナンシャルタイムズの論調に近いのかもしれない。多くの国がカーボンニュートラルの目標を設定したことで、2015年のパリ協定が採択されたときほど暗いの見通しではないという。

 

 

 

 2015年当時、Climate Action Trackerは、世界は産業革命以前から3.6℃の温暖化に向かっていると予測した。現在では2.9℃との予測になっていたというが、カーボンニュートラルの目標に約束した127か国が実際にそれを行った場合、温暖化はわずか2.1℃になるという。

 

abcnews.go.com

 

 ゲームチェンジャーは、中国だとフィナンシャルタイムズはいう。中国がカーボンニュートラルの目標を設定したことで、ドミノ倒しが起き、他の国の目標設定につながったという。

どういうわけか、惑星は再び整列し、多国間主義が勢いを取り戻し、新しい段階に入った」ともいう。

 しかし、その一方で、温暖化の影響がすでに科学者が予測したよりも激しく地球に打撃を与えていると警告する。また、再生可能エネルギーの価格が安いにもかかわらず、気候変動を助長する石炭、石油、天然ガスの使用量は必要なだけ減少していないと米ABCは指摘する。

 

 

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 世界で3番目に大きな排出国となるEUはこの気候サミット前の金曜日、2030年の炭素削減目標を1990年比40%から55%に大幅に引き上げ強化したという。

 

空虚な言葉なのか

  一方、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏は、「(2015年パリ協定が採択以来)多くのことが起こったが、必要な行動はいまだに、どこにも見当たらない」とビデオメッセージで指摘し、世界の指導者らの「空虚な言葉」を批判したとAFPが伝える。

 

www.afpbb.com

 

 英米の有力紙が目標に向かって良い方向に進んでいるといっても、今世紀末には2.1℃上昇するのであれば、見方を変えれば、あまり穏やかな話ではないのかもしれない。

 

 

 

2030年の排出量削減目標が焦点に

 朝日新聞は国連気候サミットでの各国リーダーたちの言葉を紹介する。

 それによると、中国の習近平国家主席は「30年までに、中国の国内総生産GDP)の単位あたりの二酸化炭素排出量を05年より65%以上減らす」と述べたという。9月の国連総会で表明した「30年までに実質的な排出量を減少に転じさせ、60年までにゼロにする」という目標の具体策を示した形だと朝日新聞は指摘する。

「非化石燃料エネルギーが一次エネルギー消費に占める割合を約25%とし、森林蓄積量は05年より60億立方メートル増やし、風力発電太陽光発電の総設備容量は12億キロワット以上にする」とも話した。 (出所:朝日新聞

 

www.asahi.com

 

 朝日新聞によれば、菅首相は、30年までの新たな目標についてCOP26までに国連に提出することを表明し、「日本は成長戦略の柱に『経済と環境の好循環』を掲げ、グリーン社会の実現に努力していく」と述べたそうだ。

 ジョンソン英首相も、30年までの温室効果ガス排出量の削減目標を表明し、1990年比で少なくとも68%削減するとしたという。

 日本は、2030年の削減目標をどの程度にするのだろうか。中国の65%という野心的な数字をベンチマークすることになるのだろうか。

 

「関連文書」

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