日本特許情報機構がAIを活用し、公開されている特許情報からSDGs(持続可能な開発目標)との関連を推定、企業ごとに集計することで、世界初となる「SDGs 技術企業ランキング」指標の開発に成功したと発表し、SDGs技術を見える化したという。
それによれば、目標13「気候変動に具体的な対策を」では、トヨタがダントツのトップで、続く2位はパナソニックIPマネジメント。3位以下は団子状態で、東京エレクトロン、日本製鉄、デンソーの名が並ぶ。
ここでも、トヨタ自動車の名がトップにあがる。SDGsの取り組みでは概して好感が持たれているのではなかろうか。
そのトヨタが、地球温暖化防止の枠組みであるパリ協定への取り組みでは苦悩しているのだろうか。
温暖化対策に対する姿勢が積極的ではないとして、投資家や活動家がトヨタに圧力を強めているとロイターが報じる。
トヨタはこの日出した声明で、「渉外活動がパリ協定の長期目標に整合しているかどうかのレビューと情報開示を年内に実施する」と発表。
多くのステークホルダー(利害関係者)に理解してもらえるように「充実した情報開示に努める」とした。 (出所:ロイター)
ロイターによれば、トヨタの渉外活動にはロビー活動も含まれ、英国政府が2030年までに内燃機関の使用を禁止することに反対したり、米国での自動車燃費基準に反対したり、気候変動対策を繰り返し弱体化させてきたと指摘する。こうしたトヨタの姿勢に対し、6月の定時株総会前に、運用資産の合計が約2350億ドルに上る4つのファンドが圧力をかけ、地球温暖化防止に向けた国際的な取り組みに反するロビー活動を停止するよう求めていたという。
パリ協定に反する意図はなくとも、自ら思い描く理想的なモビリティの未来の実現させようとすると、他者からは人類共通の課題である地球温暖化に背を向けているように見えてしまうということなのだろうか。
自動車のことを誰よりも知る世界トップの自動車メーカならでは苦悩なのかもしれない。
そのトヨタは、「ゴールは脱炭素と持続可能性」とトヨタイムズで強調する。
カーボンニュートラルを実現するために新しい技術が必要で、走行時ゼロエミッションであるEVの普及が重要な意味を持つことに疑問の余地はありません。しかし、ゴールはあくまで「カーボンニュートラル」や「サステナビリティ(持続可能性)」であるはずです。
クルマをEVに変えていくことではありません。 (出所:トヨタイムズ)
カーボンニュートラルを目指す自動車産業では、「どの電動車が次世代の本命になるか」というような、技術の対立構造でとらえられている印象がある(出所:トヨタイムズ)。
それでもトヨタは、電動車のフルラインアップ化の一環として2025年までにEV15車種を導入し、そのEV新シリーズTOYOTA bZでは7車種を導入するという。そして、中国 上海モーターショーでは、そのコンセプトカー「TOYOTA bZ4X」を披露した。
しかし、「こと電気自動車(EV)、特に世界最大の中国市場ではやや遅れを取っている」とロイターは指摘する。
ロイターが指摘する通り、トヨタは自動車の居住性や快適性にこだわり過ぎているのかもしれない。そして、特にメカ二カルな内燃機関エンジンについても。
そこにこだわり、正統性を持たせようと説明すれば、それが言い訳に聞こえるだけなのだろう。
自動車好きにはトヨタの姿勢がわかるような気がする。エコに気を使い静かに街なかを走り、人里離れた道では自動車が持つパワーを楽しんだ走りをする。メカニカルなサウンド(機械音)や振動、その疾走感。モータ駆動するEV電気自動車では味えない、あまりエコではない趣味の世界。そう思えば、「HV」が最適化解に思える。
あらゆるモノで電動化が進み、古典力学を応用したメカニカルな構造が少なくなる。そんなかにあって、エンジンを残していきたいと思うのはかつての機械系エンジニアのはかない夢なのかもしれない。
そうしたモノがなくなれば、それを生み出す優れた加工技術も廃れていく。陳腐なものかもしれないが、この先も伝承すべき技術ではなかろうか。伝統工芸と同じように。
ノスタルジアなのかもしれないが、そんなことをトヨタは考えてはいないだろうか。
そんなノスタルジアな世界は包み隠し、「Mobility for All」を前面に押し出し、その環境に見合ったソリューションを提供していく。そして、市場と対話し、時宜を得るまで待つしかないのだろう。しかし、今のトヨタ経営陣は諦めることはないのかもしれない。
イノベーションはプラクティカル(実用的)でなければ何のインパクトもなく、市場に受け入れられません。 (出所:トヨタイムズ)