グリーンリカバリー、コロナ渦で冷え切った経済を「脱炭素社会の実現」などを通し再興させようとの考えが、欧州で提唱され、世界各地に広がった。
その背景には、地球温暖化が急速に進み、気候変動を目の当たりにする一方で、新型コロナで停滞した経済活動で、一時的にせよ、地球環境が改善したことにあったのかもしれない。それは、今までの経済がいかに地球環境を劣化させ、サステナブル、持続的でなかったことをあらわにしたようなものだった。
脱炭素、カーボンニュートラルの実現を経済活動に組み入れ、その目標が経済活動の一部になれば、その延長線上に、サステナブルな生活があったり、サステナブルな世界に近づいていくと夢想したりする。
30年後の2050年が目標だ。温室効果ガスの濃度が徐々に低下していき、気温上昇が緩和され、異常気象の発生も徐々に減少していく、そんなことを目指すのだろうか。その目標達成のために、技術開発を進め社会実装し、その上に経済活動を成り立たせていく。その移行期間がこの先30年ということなのだろうか。
情熱を持ったゼネラリスト
イーロン・マスク、テスラ・モーターズ(テスラの創業時の社名)の創業者であり、ボーリングカンパニー、スペースXも同時に経営する現代の「博学者」、「エキスパート・ゼネラリスト」と、ライフハッカーはいう。
一つの専門領域に精通することが成功の条件として、今も昔もそう信奉される。
そんな常識をマスク氏は覆し、「多岐にわたる分野の知識を学ぶと、イノベーションを推し進めるのに必要な情報上の利点が得られることを示してくれています」とライフハッカーは指摘する。過去においても、レオナルド・ダ・ヴィンチやトーマス・エジソン、ニコラ・テスラのような人たちは博学者であり、その広範な知識をイノベーションに結び付けてきたという。
イーロン・マスクの「セマンティックツリー」
「セマンティックツリー」とは、知識を基本原則に分解して、しっかりとした基盤の上に新たな学びを構築できるようにすることですとライフハッカーは説明する。
1. 主題を特定します。
基本的なレッスン、大学の教科書や信頼できる雑誌記事などのリソースを見つけて、基礎を学びます。
2. 情報を書き留めます。
重要な事実やアイデアを自分の言葉で要約して、読んだ内容を確実に理解します。理解するまで何度もノートを見直しましょう。
3. 範囲を広げます。
1つの本から基礎を理解したら、そこからの参照や引用をチェックして追加のリソースを探します。
4. 知識を自分でテストします。
実用的な知識なら実際に試してみましょう。理論的なものは、友人や同僚に説明すると自分の理解度が確認できます。 (出所:ライフハッカー)
イーロン・マスクだとか、イノベーションというと大言壮語を言っているような気分になる。しかし、マスク氏のその素養を「脱炭素」や「サステナブルな世界」の実現に向けて取り入れてみるのもいいのかもしれない。
旺盛な開拓精神とよき好奇心
ゼネラリストと聞いて、昔学んだトヨタの生産方式を思い出す。その当時はよくゼネラリストになれといわれた。
ひとつの研究領域の深い専門知識に精通する一般的なエンジニアよりも、広い領域に対する「理解」を基礎とし、管理技術の専門知識と経験を磨けといわれた。様々な一般的なエンジニアと同等程度の知識を持ち、それを横に広げろと言われた。人間的な要素を無視せず、経営、経営管理に関する知識まで勉強せよとも、厳しかった上司によく言われていたことを思い出す。
旺盛な開拓精神と、よき好奇心を養え。
そんなことを学んだかなり古い教科書には、こんなことが書かれている。
.....「経済的」という表現が誤解を招くおそれが出てきたので「最適」と改めた。
環境問題のクローズアップや人間性尊重といった時代背景の中にあって、「経済性」を狭く解釈するあまり、利益さええられるならば公害や人間疎外の問題はどうなってもよいのかといった類の発想が出てきた。
そこで、誤解を避けるとともに、より多元的な観点から評価する意味で「最適」という表現に改めることにした。 (引用:IEの基礎 第1章序説P2)
こんな前から叩き込まれていたのかと今更ながら気がつく。
アート & サイエンス
人は常により良いものを追求する存在であるし、その文脈において、仕事もまた同様でなければ、人々の期待に応えることはできない。
より良きものは過去にあったものを少し改善することで、全く新しいものになったりするのだろう。
「サスティナビリティ」、持続性というものもそういうもののような気がする。藤田がいう「不断の、そして無限の改善」という言葉に本質があるように思う。
当時の教科書「IEの基礎」を書いた藤田は、Art & Scienceの素養が必要不可欠と説く。
自分自身のartを自ら分析的にとらえ、その中に論理性や法則性を見つけよう、それを人の経験と交流し客観化しよう・・・、といった一連の態度が、基本的にある。
(引用:「IEの基礎」 旧版へのまえがき ⅵ)
artとは、「経験的知識やカン、あるいは直観的な認識などを包括した概念」で、一方、scienceは、「論理的、客観性、法則性などの属性をそなえた知識・技術や認識を含む概念」と、藤田は教える。
そして、そのようにartを少しでもscientificなものにしようとする努力により得られた<科学的なもの>は、実は、より高次のartを得る手段にもなるのである。
(引用:「IEの基礎」 旧版へのまえがき ⅵ)
(これを教科書として、研修で座学として学んだ。本書の大部分を占める手法でなく、序章や経済性評価、改善(問題解決)へのアプローチを学んだ)
複雑、多様な時代における問題解決は個人の能力を越え、異なる立場や専門を有する人々とのタスク・チーム方式がよりベターであると藤田はいう。そのためには、共創する「場」が必要なるし、また、その問題を共通認識として取り組んでいこうとする「空気」も必要になるのだろう。そして、そのためには幅広い知識が必要になると藤田は指摘する。もしかしたら、イーロン・マスクはそうしたことをいとも簡単にこなしているのかもしれない。
場づくり
コミュニティデザインに「場づくり」の新たなうねりが起きているとオルタナはいう。様々な人たちが自分の可能性を伸ばしたり、一人ではできないことを達成する具体的な仕掛けだという。
ビジョンや目的に固執するあまり今を大切にできなければ意味がない。
意義や価値に固執するあまり楽しむことができなければ意味がない。
課題を解決することも重要だが、同様に新しい価値観や行動様式をつくること、別の(社会)構造をデザインすることも大切。 (出所:オルタナ)
「場づくりという冒険―いかしあうつながりを編み直す―」という著書の作者藤本遼氏が、「場づくり」とは「小さくてやわらかい社会変革ではないのか」と語った、とオルタナが紹介する。
「何かを成し遂げたい、ある状態を作り出したいと思って、しかも現状からそこへ到達する道筋がわからない状況を「問題」という。
(引用:「IEの基礎」 第12章改善(問題解決)へのアプローチP327)
「場づくり」は、自由な発想からの飛躍、転換を試みる、「最適」を志向しようとすることの表れなのかもしれない。問題解決に色々なアプローチがあっていいのだろう。
様々なアプローチがあって、そこから「サスティナビリティ」が生まれ、脱炭素社会の実現に近づいくのかもしれない。