経済の専門家ではないが、需要がない商売を続けることの危険性くらいはわかる。長く電機会社に勤め、幾度とリストラの現場を目の当たりにしてきた。
経済危機がやってきて売上が落ち込み、早期の回復が期待できなければ、構造改革に乗り出す。市場の動きに追従できず、商品の競争力がなくなり売上が減少すれば、リストラは避けられない。そんなことを繰り返してきた。最後は、落ち込んだ需要、縮小した市場規模の中で商売を継続することは困難との判断で、事業部が解散になった。若手社員を除き、全員が早期退職の対象となった。
社会や市場に文句を言ったところで誰も助けてくれない。今まで親密な関係にあった顧客が手を差し伸べてくれるわけもない。ある意味で、薄情なところがあるのかもしれない。しかし、それが現実なのだろう。
換気と焼肉店
新型コロナ感染拡大で飲食業の苦境が広がるが、「焼肉店」の倒産が急減、過去10年間で最少を記録したとTSR東京商工リサーチが報じる。
コロナ禍で飲食業は“冬の時代”に突入している。2020年の飲食業の倒産は、過去最多の842件を記録し、新型コロナの影響が重くのし掛かる。
だが、換気能力などコロナ対策が有利に作用した焼肉店は、11月は13.6%も前年同月から客足を伸ばし、倒産が減少している。 (出所:TSR)
それによると、2020年11月の焼肉店の売上高は前年同月比9.4%増と2カ月連続でプラスだったのに対し、居酒屋は同41.2%減とマイナスが続くという。コロナ禍で三密回避が求められているが、焼肉店の排煙装置による換気や“一人焼肉”などがプラスに働いたようだとTSRはいう。
一定の条件下の焼肉店は、焼肉無煙ロースターや上引きフードの導入で空気を店外に排気し、約3分半で客席全体の空気を入れ替えることができるという。 (出所:TSR)
公衆衛生の一部といっていいのかはよくわからないが、安心感はあるような気がする。
閉店 ネガティブの連鎖
白木屋や魚民などの居酒屋を展開する外食大手のモンテローザが、都内にある337店の内、61店舗を順次、閉店するという。
共同通信によれば、閉店の理由は午後8時までの営業時間の繰り上げに加え、政府によるランチを含めた外食自粛の呼びかけを挙げたという。
そのモンテローザはプレスリリースを発行した。そのプレスリリースのお題目は、「【永らくのご愛顧ありがとうございました】緊急事態宣言再発出にともない、東京都内61店舗を閉店いたします」、となっている。
何を言いたいのだろうか。同情して欲しいのだろうか。少しばかり恩着せがましいと感じる。 反発という衝動がネガティブな連鎖を生み出してはいないだろうか。
最後に、大手外食企業の皆様、私たちは多くの従業員の雇用を守り微力ながら経済に貢献していることに誇りをもって、この苦難に耐え抜いてまいりましょう。
営業時間を短縮し営業を継続する店舗に関しましては、各自治体の要請に応じるとともに、引き続き、安全対策や感染防止に努めて参ります。店舗をご利用のお客様にはご不便をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。 (出所:PR Times モンテローザ)
政府や自治体からの要請を理由にして、閉店したという文脈に疑問を感じてしまった。
店舗を利用する顧客に、時短営業、感染対策で不便をかけて申し訳ないということにも疑問を感じる。
不便?なのことなのだろうか。このご時世、変わった社会では当たり前になっているのではないのだろうか。
「居酒屋文化を守るため、早期の緊急事態宣言解除が求められます。一部店舗の閉店を含めコロナ感染防止に最大限努めてまいりますが、お客様皆々様におかれても、不要不急の外出を控え、感染防止に努めて頂き、コロナ拡大防止にご協力賜りますようお願い申し上げます」と、言えないのだろうか。
影響を受けるその当事者自ら、そうしたメッセージを発信し、街中に溢れれば、気づきも増えるように思う。
「コロナの影響皆無の外食店」
という記事が食品新聞にある。
ハレの日に少々値が張る外食店を訪れてみた。
おいしい料理と室内から眺められる美しい景観を堪能し、シメのデザートは移動して別室でいただく。
ゆとりのある空間でコロナ対策も万全な様子。
昨年オープンした店で店主にコロナの影響を聞いてみると「予約がとぎれず全く影響がなかった」と即答した。 (出所:食品新聞)
居酒屋文化
一方、焼肉の和民を展開する外食チェーン大手のワタミの渡邉会長は「居酒屋文化はなくならない。コロナで不急ではないかもしれないが不要ではない。この国に必要な文化で、素晴らしい思い出を提供する場所だと思っている」と話したとITmediaビジネスオンラインが伝える。
「午後8時以降、やりたいのはやまやま。企業の社会的責任として、全店で順守することにした」とも話しているという。
「飲食店での会食が感染対策の「急所」といわれることについては「確かに急所なのでしょう。しかし、急所だけをこのような形で塞いでも全ての動向が変わるのか、ということに対して問題提起をしたい」とした。
「海外に店舗を持っているが、外国は人数制限がある。なぜそういったことをしないのか?」と補足しながら、飲食店での感染対策について持論を展開した。 (出所:ITmediaビジネスオンライン)
ITmediaビジネスオンラインによれば、東京都内の大手飲食チェーン店は時短営業協力金の対象となっていないことや、政府がランチの外食も控えるように呼びかけたことに対し、飲食業界は反発しているという。
日本フードサービス協会は営業時間短縮の協力金について、チェーン展開を行う大手企業も対象とするように要請しているそうだ。
協力金の原資は税金である。そのことをまずはわきまえて欲しい。それがわかっているなら、顧客に向かって、緊急事態宣言解除に向け、協力して欲しいと声が聞こえてくるはずだ。それがお互いを助けることになるといって欲しい。
外出禁止令
フランスでは、国内全土を対象に午後6時以降の夜間外出禁止令を出すと発表があったとAFPが伝える。
それによれば、仏首相のカステックス氏は記者会見で、懸念されていた年末の連休後の感染急拡大は起きなかったものの、状況が今後悪化するようであれば新たなロックダウン(都市封鎖)措置が「滞りなく」導入される可能性があると説明したという。
午後8時からの外出禁止令で効果もあるが、ロックダウン回避のため、さらに外出禁止令時間の繰り上げを行なうのだろうか。
また、防災無線が不要不急の外出を控えるように呼び掛けている。