瀬戸内海、日本最大の内海、東西に450km、南北に15-55 km、700以上の島があり、かつては豊かな生態系を持っていたという。
Wikipediaによれば、19世紀後半の1860年、瀬戸内海を訪れた、シルクロードの命名者でもあるドイツ人地理学者フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは『支那旅行日記』で「これ以上のものは世界のどこにもないであろう」と世界中に紹介したという。
かつては、ニホンアシカやクジラ、ウミガメやサメ類の一大生息地でもあり、コククジラ やジンベイザメ、ホホジロザメ、マンボウなどの大型魚類やオサガメなど、現在では絶滅危惧種となっている大型の生物も多く見られたという。
その瀬戸内海が赤潮で苦しめられることになったのは1970年代のこと。工場排水や生活排水により汚染され、瀬戸内海は「死の海」と一時呼ばれるようになったという。
1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定された。さらに2001年には窒素、リンなどの総量規制が導入され、これにより瀬戸内海の赤潮発生が減少するとともに海の透明度も増してきたという。
その瀬戸内海に、また異変が起きているとNHKが報じる。
「コンビニのおにぎりに異変?」。瀬戸内海で取材中に記者はこのことばを聞いたという。
のりを使わないおにぎりが増えている。
その理由が、「海がきれいになりすぎたことだ」というのです。 (出所:NHK)
瀬戸内海がきれいになった一方で、養殖海苔の色落ちが頻発し、プランクトンを餌とするイワシやイナカゴ、それらを捕食するサワラなどの漁獲量も低迷していると、Wikipediaも指摘する。
これらの原因を「海がやせた」こと、つまり栄養塩の過度な減少、いわば富栄養化の逆の「貧栄養化」に求める研究者も存在する (出所:Wikipedia)
水質改善などによって、栄養塩がこの20年で3分の1にまで減少したとNHKも指摘する。
それにともなって、瀬戸内海特産のイカナゴの水揚げは最盛期の3割に。
かきが小ぶりになり、のりも色落ちが目立つようになりました。 (出所:NHK)
「瀬戸内海全体でのりの収穫量」はこの25年で半減したそうだ。
瀬戸内海産ののりに頼ってきた大手コンビニチェーンのおにぎりが、のり不作のため、のりを使わないようになり、そうした商品が年々増えているという。
2015年に「瀬戸内海環境保全特別措置法」が改正になり、従来の瀬戸内海の「水質を保全」する考え方から「地域性や季節性に合わせて水質を管理」する考え方に改めたという。
干潟や藻場の再生を行っていくなど瀬戸内海を取り巻く環境を整備することで生物多様性・文化的に「豊かな海」へすべく対策が行われることになったそうだ。
NHKによれば、実際に岡山県で下水処理場から排出する窒素を基準を超えない範囲で多くするようにしたという。
「人間が海の窒素の濃度を管理するのは難しいと考えていたが、人為的にできたことは価値がある。下水処理施設だけでなく、山林や川などからどれほどの栄養塩の供給があれば豊かな海を取り戻せるのか考えていきたい」 (出所:NHK)
また人の手が加わることになる瀬戸内海。
「どんな変化をもたらすのか」。未知数なだけに、しっかりとした検証も必要ですとNHKの記者は指摘する。
「地域の合意を形成しながら、いまの時代にあった「豊かな海」をどう作っていくのか」、「そこに暮らす私たち自身が答えを探していかなければいけないと感じました」と話す。
かつて、瀬戸内海にジンベイザメやクジラが生息したと聞くと、その生態系の豊かさに驚く。
人の手によって壊された自然と生態系。豊かな海を作るというと、人の驕りのようなものを感じる。自然破壊したように、また何か違ったものを作ったりしないだろうか。
元の自然と生態系を回復することを目指してもらいたいものだ。その先に「豊かな海」があるのではなかろうか。