Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【恐いと感じようになった夏】欧州の大洪水、北海道で猛暑日

 

 欧州西部を襲った記録的な豪雨で河川が氾濫、洪水が各所で発生、16日時点でドイツ西部などで約1300人の安否が確認されていないといいます。水位の上昇が続き、一部地域で通信が途絶える中、ドイツとベルギー両国の死者は120人を超えたと報じられています。

jp.reuters.com

 ロイターによると、気象学者は、気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったために今回の豪雨が引き起こされたと指摘し、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかだとし、迅速に対応する必要があるとの考えを示したそうです。

 

 BBCが被害状況を伝えています。ベルギーのアレクサンダー・ドゥクロー首相が、「最終的な犠牲者の人数はまだ分からないが、この国の史上最も壊滅的な洪水になるかもしれない」と述べたといいます。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、気候変動に断固として取り組む必要があると呼びかけているそうです。

ドイツでは捜索救助活動の支援に警官、兵士、救急隊員約1万5000人が派遣された。

村が丸ごと破壊された場所もあり、西部アールヴァイラー郡によると最大1300人の行方が分からなくなっている。 (出所:BBC

www.bbc.com

 ただただ驚くだけです。EUの気候変動対策がさらに厳格に、そして、スピードアップしていくことになるのでしょうか。

科学者はもう何年も前から、人為的な気候変動によって夏季の降雨と熱波はいっそう激しくなると警告してきた

英レディング大学のハナ・クローク教授(水文地質学)は、「洪水によって欧州各地で人が亡くなり建物が破壊される被害が出ているが、これは避けられたはずの悲劇だ。気象予報士は週の初めに警報を出していたが、深刻に受け止められず、準備は不十分だった」と述べた。

「北半球のほかの地域でも、記録的な熱波や森林火災で苦しんでいる。このことからも、気温の上がり続ける世界で今後いかに世界の気象が危険なものになるか、改めて気づくはずだ

科学者たち各国政府に対し、相次ぐ異常気象の原因となっている二酸化炭素の排出量を大幅に削減するのと同時に、これまで以上にさらに激しい異常気象に備えるべきだと呼びかけている。(出所:BBC) 

 地球の平均気温はすでに、産業革命以降1.2度上昇してしまいました。その結果が、世界各地で多発するようになった激甚災害ということなのでしょうか。

 

 梅雨が明けた国内各地では、35℃を超える猛暑日になるといいます。

「太平洋高気圧がもたらす強い日差しと上空の暖かい空気の影響で、今日18日(日)も早い時間から気温が急上昇しています」とウェザーニュースが伝えています。

 午前中で既に北日本や北海道道東で35℃を超えている.....

☆最高気温ランキング(11時20分まで)
1位 一関(岩手県)36.0 ℃
2位 生田原(北海道)35.7 ℃
3位 境野(北海道)35.6 ℃
4位 津別(北海道)35.5 ℃
4位 帯広(北海道)35.5 ℃
6位 佐呂間(北海道)35.2 ℃
7位 北上(岩手県)35.1 ℃

昇温の要因は上空の暖かい空気とフェーン現象です。 (出所:ウェザーニュース

 少しばかり、夏の暑さが恐いと感じるようにもなります。

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 科学者たちは、各国政府が温室効果ガスの排出量を大幅に削減しなければ、平均気温は上昇し続けるといいます。さて、それだけで十分なのだろうか。

  

【ESG投資】日銀の気候変動オペは「グリーンウォッシュ」防止に役立つか

 

 日本銀行は、気候変動対応に取り組み、一定の開示を行っている金融機関を対象に、その取り組みの一環として実施する投融資をバックファイナンスする新たな資金供給制度を導入、年内を目途に実施すると発表しました。

「債券市場ではグリーンボンド(環境債)をはじめとするESG(環境、社会、企業統治ファイナンス市場の拡大につながると評価する声が聞かれる」、とブルームバーグは報じています。

www.bloomberg.co.jp

日銀は気候変動対応オペで、グリーンボンドとローン、環境や社会的目標の達成状況で利率などが変わるサステナビリティー・リンク・ボンド(SLB)とローン、脱炭素移行への取り組みを支援するトランジションファイナンスに係る投融資を対象に、利率ゼロ%で貸し付ける。

当座預金への付利による優遇措置では貸出促進付利制度の中で最も低い0%を適用。それでも金融機関のマイナス金利の負担は軽くなる。 (出所:ブルームバーグ

気候変動に関する日本銀行の取り組み方針について(日本銀行)

気候変動対応を支援するための資金供給の骨子素案(日本銀行)

 

 

 ここ最近、ESG債起債のニュースが増えているようです。こうした日銀の動きをいち早く取り入れようとのことなのでしょうか。

 ヤフーを傘下にもつZホールディングスは7月末までに、環境に配慮した事業に資金用途を限定したグリーンボンド「環境債」を発行、200億円を調達すると発表しました。

 日本経済新聞によれば、ネット産業ではデータセンターの消費電力の増加が課題になっていることから、省エネルギー型のデータセンターの建設や改修、再生可能エネルギーの調達に使用されるといいます。環境債の発行は国内のネット企業では初めてだそうです。

www.nikkei.com

 東京建物は、資金使途を環境・社会の持続可能性に貢献する事業に特化した社債サステナビリティボンド」を初めて個人投資家向けに発行するそうです。

 調達した資金で省エネルギーや持続可能性に配慮した4つの完成済み物件の建設費を借り換えると、日本経済新聞はいいます。

www.nikkei.com

 どちらも、第三者外部評価(セカンドパーティ・オピニオン)を得て、お墨付きのESG債として発行するようです。

 

「資金を供給する以上、日銀として気候変動やグリーンファイナンスとは何か、定義があってしかるべきだ」、「企業の情報開示も重視することで「グリーンウオッシュ」をなくす方向に持っていってもらいたい」、BNPパリバ証券の中空麻奈チーフESGストラテジストが、日銀の新たな取組について、そう述べたとブルームバーグは伝えます。

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 極めて重要なことなのでしょう。

 日本銀行は、「コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえた気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等に基づく開示の質と量の充実を、金融機関に対して促していく」と述べています。奇をてらうことなく、愚直に対応してもらいたいものです。それが気候変動時代の中央銀行の役割でもあるのでしょう。

 

「関連文書」 

dsupplying.hatenablog.com

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 

【トレーサビリティ】ユニクロの新疆綿使用嫌疑は払拭できるか

 

 ファーストリテイリングが決算を発表し、決算発表会見が開催されたといいます。

 毎日新聞によると、岡崎健グループ上席執行役員最高財務責任者CFO)がその会見で「原材料に至るまで自分たちが直接確認できるものを使っていくべきだというのが世の中の要請だと認識している。課題の洗い出しを改めて進めている状況だ」と述べたといいます。

mainichi.jp

 中国新疆ウイグル自治区での人権問題への風当たりが国際的に強まり、今年1月、ユニクロの男性用シャツが米国ロサンゼルス港で、強制労働に関しての輸入禁止措置に違反したとして押収されたことを受けての措置ということでしょうか。

取引先の工場だけでなく、原材料の調達先でも強制労働などの人権侵害がないことを自社でより詳しく把握できる仕組みの構築を目指す。 (出所:毎日新聞

 

 

 バイデン政権になった米国は前の政権より、人権を重視する姿勢を明確にしているといいます。これを受けてのことか、企業は人権順守の対応を進めているとJETROが報告しています。

例えば、スポーツ用品大手アディダスは、新疆ウイグル自治区との綿糸取引を行わないようサプライヤーに勧告し、同自治区政府を介した人材雇用を禁止した。

ナイキも、サプライヤーに該当取引があるかの確認を実施するほか、同自治区の製糸工場を利用する衣料品ギャップは取引先と協議しつつ対策を検討。

飲料大手コカ・コーラサプライヤーに法令順守を求め、第三者機関の監査を活用する。

MUJIブランドを展開する良品計画は、新疆ウイグル自治区に由来する綿製品の対米輸出を中止。インドやトルコ、米国から綿を調達すると米メディアの取材に回答している。 (出所:JETRO

www.jetro.go.jp

 米税関当局は、税関手続きにおける効果的な文書提示を勧告しています。新疆ウイグル自治区からの綿・トマト(派生製品を含む)に関して、強制労働に依拠しないとの証明に必要な書類を例示しているといいます。

 強制労働に関わるILO指標を参考に挙げつつ、調査の検討材料として、第三者機関による監査報告書やサプライチェーンを図示した書類、従業員の生活・労働環境を示す写真なども有効になり得ると説明している。

通商弁護士によると、書類の翻訳(英語化)や正確性(正式な文書であるとの証明)、整理(大量の文書提出の回避)も重要とのこと。(出所:JETRO

 

【綿製品】

  • 綿糸メーカーおよび綿花の供給源からの宣誓書(綿花の調達源を特定するもの)
  • 綿糸および綿花に関する購入注文書類やインボイス、支払い証明
  • 綿糸に関わる生産工程リストや生産記録〔綿(生産者)を特定する記録を含む〕
  • 綿生産者から綿糸メーカーへの輸送書類
  • 綿の収穫を行った従業員に関する勤務表や給与証明など、綿糸生産者に販売される綿に関わる工程報告

(出所:JETRO

 ファーストリテイリングの準備はどこまで進んだのでしょうか。

 準備には途轍もなく労力を要するのだろうけれども、一度しくみができれば、それを正しく運用することは準備ほど手間ではないはずです。そうはいっても、正しく運用されている否かを定期的な監査で確認することは求められるのだろうけれども。

 たとえ、中国ウイグルでの綿調達を止め、調達先を他地域に振り向けたところで、製品の最終工程が中国のままであれば、その嫌疑はいつまでも残るのかもしれません。結局、すべての綿調達において、その健全性の証明を求められることになるのかもしれません。それが、真に「トレーサビリティ」を意味することでもあるのでしょう。

 

2021.7.18 追記

米上院で14日、中国の新疆ウイグル自治区から全ての産品輸入を原則的に禁止する法案を全会一致で可決したといいます。ブルームバーグによると、輸入するには生産過程で強制労働が行われていないことを立証する必要があるそうです。

www.bloomberg.co.jp

米税関・国境警備局(CBP)局長が例外として認めない限り、全ての産品が強制労働の下で作られていると見なす「反証を許す推定」規定も盛り込まれた。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員は「この法案が下院を通過し、大統領が署名すれば、強制労働で生産された製品が米国のサプライチェーンに入り込むのを防ぐ手段が増えることになる」と声明でコメントした。 (出所:ブルームバーグ

 全会一致での可決ということは、下院でも可決、法案は成立することになるのでしょうか。

 建前と本音があるのかもしれませんが、米国の強硬姿勢が少々気になります。

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「関連文書」

www.jetro.go.jp

【カーボンプライシングとは】欧州、中国で先行する国境炭素税、排出量取引とは

 

 EUが脱炭素への動きを加速させています。欧州委員会が、域内の温暖化ガス排出量の大幅削減に向けた包括案を公表しました。

 ロイターによると、フォンデアライエン欧州委員長は「欧州は50年にクライメートニュートラル気候中立を宣言する最初の大陸となり、欧州は世界で初めて具体的なロードマップを明示したと述べたといいます。

 ただ、この包括案はEU加盟国や欧州議会での審議と承認が必要で、約2年を要する可能性があるそうです。

jp.reuters.com

 ガソリンやディーゼルなどの内燃機関エンジン車の新車販売を2035年に事実上禁止する他、域外から輸入する炭素含有量の多い鉄鋼やアルミニウムなどに対する国境炭素税を導入する計画。 (出所:ロイター)

 

 

  中国では、全国的な炭素の排出量取引制度(ETS)が月内に正式に開始されるといいます。

 ETSの第1段階では2000以上の発電所が対象となり、いずれセメントや鉄鋼、アルミニウムなど、他のセクターにも広げると説明した。具体的な日程は明らかにしなかった。 (出所:ロイター)

jp.reuters.com

 欧州の国境炭素税の導入は国際社会の理解が不可欠と言われていました。中国の発表はEU政策を追認すると同じ意味なのでしょうか。 

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 環境省によれば、「カーボンプライシング」とは、排出されるCO2(二酸化炭素:カーボン)に価格付け(プライシング)する温暖化対策の仕組みのことをいいます。

炭素税」:燃料・電気の利用(=CO2の排出)に対して、その量に比例した課税を行うことで、炭素に価格を付ける仕組み

国内排出量取引」:企業ごとに排出量の上限を決め、「排出量」が上限を超過する企
業と下回る企業との間で「排出量」を売買する仕組みのことをいいます。炭素の価格は「排出量」の需要と供給によって決まるといいます。

クレジット取引」:

  • 非化石価値取引再生可能エネルギー(太陽光・風力等)・原子力といった化石燃料でない(非化石)エネルギーがもつ価値を売買するもの
  • Jクレジット:先進的な対策によって実現した排出削減量を「クレジット」として、売買できるようにするもの
  • JCM(二国間クレジット制度):途上国と協力して実施した対策によって実現した排出削減量を「クレジット」として、削減の効果を二国間で分け合う制度
  • ゼロエミッション車クレジット取引:販売するゼロエミッション車をクレジット化し、自動車メーカーに対し一定比率以上のクレジットの取得を求めるもの(米国ではカリフォルニア州など10州で実施 

www.env.go.jp

炭素国境調整措置」:CO2の価格が低い国で作られた製品を輸入する際に、CO2分の価格差を事業者に負担してもらう仕組み。

※CO2の価格が相対的に低い他国への生産拠点の流出や、その結果として世界全体のCO2排出量が増加することを防ぐことが目的

EU・米国で検討が進行中

 

 

 国内では、「カーボンプライシング」については経団連が反対の立場を表明し、経産省環境省との間でも、温度差が生じているといわれています。

dsupplying.hatenablog.com

 国内議論を早期にまとめ上げていく必要がありそうです。

 国内世論がオリンピックで揺れています。気候変動、脱炭素では世界的なリーダシップを発揮できるのでしょうか。

2021.7.18 追記 

 中国で16日、温暖化ガスのETS排出量取引制度の取引が始まったそうです。1トン=48元(7.42ドル)の初値を付けたとロイターが報じました。

 それによると、ETSは第1段階で、約2225の発電所二酸化炭素排出量で40億トン以上を対象とし、排出量で世界最大の市場となるといいます。

jp.reuters.com

初値は、試験的に取引されている7つの市場の平均価格40元より高いが、EUでの平均取引価格の約50ユーロ(59.02ドル)を大きく下回る。終値は6.7%高の1トン=51.23元(7.92ドル)。上海証券報によると、410万トン分の排出枠が取引され、出来高は2億1000万元(3200万ドル)だった。 (出所:ロイター)

 

 EUが示した「炭素国境調整措置(国境炭素税)」の導入案は、EUのETS排出量取引制度で取引されている「排出枠」の価格を基に、輸入品の製造過程で生じた温室効果ガスの排出量に応じて賦課金の額を算出し上乗せする仕組みといいます。3年間の移行期間を経て、2026年から実際に徴収を始めるそうです。

EUに輸出する企業が自国内で「炭素価格」を支払い済みだと証明できれば、その分は控除可能となる。まず想定されるのは、EUのようなETSを導入している場合だ。すでに韓国やカナダが類似制度を持つほか、中国も今年運用開始。米国ではカリフォルニアなど一部の州が導入している。(出所:JIJI.COM)

www.jiji.com

「カーボンプライシング(炭素への価格付け)」の取り組みに遅れる日本が、将来的に影響を回避できるかは不透明だとJIJI.COMは指摘します。

 ロイターが報じた中国の非営利環境団体「環境防衛基金」のフレッド・クルップ理事長の言葉が印象的です。

「中国は気候行動の進展において重要な節目に達した。世界最大の炭素市場に必要な最後のピースが埋まった」。

 企業の権益を優先させるばかりの議論ではなかなかまとまらず、内容も希薄化することはないのでしょうか。企業にとっても気候変動対策は避けることはできないはずです。EU、中国の動きからすれば、十分に対策を行えば、長い目でみれば、それが企業の利益になるということではないのでしょうか。

 社会課題を解決しようという強い意志がなく、未だに短期的に、楽に儲けることばかり考えているようしか見えないのが残念でなりません。

 

【マイクロプラスチックスの実態】漏れ出るプラごみ、流出防止に取り組み始める企業

 

 マイクロプラスチックを採取、調査している団体があります。一般社団法人ピリカ、環境関連調査を手がける団体です。

opendata.plastic.research.pirika.org

 日本財団の助成事業で、国内外の河川や港湾の浮遊マイクロプラスチックスを調査し、結果を公表しています。

 2020年の調査では、120 地点中 112 地点でマイクロプラスチック が 採取され、そのうち 人工芝破片が23%(重量比)を占め、全体でワーストだったといいます。その次にはコーティング肥料の殻が上り、15%に達するといいます。

 意外な調査結果、意外なものが流出しています。

 

 

「流出するマイクロプラスチック 稲作で使うコーティング肥料の殻が海や川に」と、NHKがその実態をリポートします。

 「コーティング肥料」、作業の負担が少なく、安定的な生産ができることなどを理由に、水田で利用することが多いといいます。ただ、多くの農家が、その素材がプラスチックからでき、一部が分解されないまま川などに流出していることは最近まで知られていなかったと指摘します。

www3.nhk.or.jp

 NHKによると、自治体や肥料メーカーは流出させないようチラシを配ったり、肥料の袋に注意書きを書いたりしているそうですが、十分に周知が行き渡っているとは言いがたいのが現状といいます。

肥料で使われているプラスチックの殻は小さすぎて拾えないため、流れ出した時点でマイクロプラスチックになってしまうことが一番の問題だ (出所:NHK

 現状ではこれと言って有効な対策がないといいます。だからと言って、そのまま垂れ流してしまうことが許されるのでしょうか。

 

 

 人工芝を製造販売する住友ゴムは、今年2月から兵庫県西宮市で、スポーツ用人工芝からのマイクロプラスチック流出を抑制するための実証実験を始めたといいます。

 住友ゴムによると、経年変化などを定期的に観察し、対策効果、バリア資材の適性や耐久性、メンテナンスの必要性などの検証を進めるといいます。

 人工芝の維持管理に手間をかけるくらいなら、無理せず天然芝を利用する手もあるのかもしれません。

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(資料:住友ゴム

 アパレル大手のアダストリアは、マイクロプラスチックスの原因になる洗濯時に発生する繊維くずの流出を抑制する洗濯ネット「FIBER HOLD BAG(ファイバーホールドバッグ)」を開発、販売しています。

 アダストリアによると、この新しい洗濯ネットは、通常のネットよりも細かい0.05㎜の網目生地を表面に使用し、洗濯ネットの外に微細な繊維くずが出ない仕様にしているといいます。洗濯ネットを使用しない場合と比べると、平均で80%の流出抑止効果があるそうです。内側に網目の大きな生地をフィルターとして入れ、二重構造にすることで、衣服と繊維くずが洗濯ネットの中で分かれる工夫もされているといいます。

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(写真:アダストリア

洗濯ネットを洗濯時に使用することは衣服同士の摩擦を防ぎ、衣服を長くきれいに保つことにもつながります。着用期間が1年延びると日本全体で4万t以上の廃棄物削減につながるという調査結果も出ており、洗濯ネットの販売を通じて、こうした側面でも環境負荷の低減に貢献できると考えています。 (出所:アダストリア

 製造元が海洋プラスチックごみの原因を探り、それが自らの製品由来であれば、その対策に乗り出す、あってあたりまえのことのようにも感じます。が、アピールすることがでその認知が進めば、その防止に役立つのかもしれません。コーディング肥料についても利用者農家任せにすることなく、対策を講じることが求められているのでしょう。

 アダストリアは、プラスチックごみによる海洋汚染が拡大しており、2050年には海洋プラスチックごみが魚の重量を超えるとも予測されていますといいます。

 早急な行動が求められています。

 

「関連文書」

uminohi.jp

newswitch.jp

【サプライチェーンと人権問題】経済産業省が繊維産業に求めるサスティナビリティとは

 

 日本政府が、繊維産業などのサプライチェーン(供給網)全体から人権侵害を排除する態勢を強化するとニュースが流れています。少し仰々しい表現とも感じますが。

 ようやくといっていいのでしょうか、経済産業省が、「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」の報告書をまとめ、今後、企業、業界が取組むべき内容を提言しています。人権問題もこの中で扱われ、取り組むべき内容が示されています。

www.meti.go.jp

 大量消費、大量廃棄の問題、脱プラの問題、新疆綿をはじめとする人権問題、それに多くの人たちが疑問を持ち始め、声をあげ、ある方向性を見出してきたように感じます。

 今さらとの感も否めませんが、まだ取り残される企業もあり、企業や業界が自ら先導していこうとの姿勢に欠けるのであれば、経済産業省が動くことも致し方ないのかもしれません。

 

 ロイターによれば、この報告書では、人権侵害が行われていないかどうかを確認するための指針の策定を業界団体に求めているといいます。

指針は、繊維関連のメーカーなどでつくる日本繊維産業連盟が国際労働機関(ILO)と協力して2022年をめどに策定する。企業が、取引先が労働者の人権を侵害していないかどうかを調べる際に活用してもらう狙いがある。 (出所:ロイター)


「2015年のSDGs(持続可能な開発⽬標)の採択以降、国内外において、官⺠でのサステナビリティの取組が活発になっているが、⽇本の繊維産業に⽬を向けると、⼀部の企業においてその取組が始まっているものの、サプライチェーンの管理等、取組が⼗分になされているとは⾔い難い状況にある」と報告書は指摘します。

 報告書での提言内容は、「環境配慮」「責任あるサプライチェーン管理」「ジェンダー平等」「供給構造」「デジタル化の促進」から構成されています。

 

 

 「責任あるサプライチェーン管理」では、「デュー・ディリジェンスの実施」「国際認証取得に向けた環境整備」「外国人技能実習生等への対応」を取り組むべき内容にあげています。

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(資料:経済産業省「繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書概要」

人権デューデリジェンス」、企業が事業活動に伴う人権侵害リスクを把握し予防や軽減策を講じること。サプライチェーン(供給網)上での強制労働や児童労働の排除も含まれると日本経済新聞は説明します。

www.nikkei.com

  

外国人技能実習制度」、米国務省が7月1日発表した世界各国の人身売買に関する報告書で、日本の外国人技能実習制度の悪用が問題視されたといいます。

 多くの実習生が劣悪な環境でも働き続けるしかない状況に追い込まれているからだと東京新聞は問題指摘します。

日本の技術を母国に持ち帰ってもらう「国際貢献」の理念は色あせ、逆に「搾取」の汚名を負った。 (出所:東京新聞

www.tokyo-np.co.jp

 

供給構造」では、⼤量⽣産・⼤量消費といった事業活動や消費活動は限界を迎えているとの指摘があり、限りある資源を有効に活⽤することが重要といい、「適量⽣産・適量供給」を⽬指していくことが求められているといいます。

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(資料:経済産業省「繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書概要」

 

 ⽇本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センター法・制度研究グループ⻑⼭⽥ 美和氏は、「アジアにおける責任あるサプライチェーンのリーダーとして」との提言をしています。

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((資料:経済産業省「繊維産業のサステナビリティに関する検討会 プレゼンテーション・ポイント集」))

 その一方で、国内では「外国人技能実習制度」の問題を抱えているという矛盾があります。

技能実習生は毎年増え、昨年10月で40万2356人。外国人労働者の23・3%を占める。賃金は月平均16万1700円で、外国人労働者全体の同21万8100円を大きく下回る。19年に実習先約1万事業所を調べると、7割以上で労働時間や残業代の支払いなどで違反があった。 (出所:東京新聞

 

 

「脱炭素」に注目が集まり、気候変動や環境問題の関心が高まったのかもしれません。しかし、それに比べると、人権問題はまだ取り組みに甘さがあるのではないでしょうか。

 ジェンダー平等や最低賃金、外国人技能実習制度などは企業活動の根幹にかかわる問題です。優先して解決されなければならないはずです。そこに国際的にも批判があるなら、なおさらです。

 変化を行動で示し続けなければ、サスティナビリティ「持続可能な社会」に近づくことはないはずです。リーダーとしての自覚を持ち改革を進めていくことが求められているのでしょう。

 

【独占を許さず】米中で経済政策を見直す動き始まる

 

 世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのラリー・フィンクCEOが、世界銀行IMF国際通貨基金が時代遅れだと、イタリアのベネチアで開催される「気候変動」に関する国際会議で、世界の指導者らに訴えるといいます。

 ブルームバーグによると、途上国に持続可能性をもたらすのに必要な巨額の投資をこれら国際機関がまとめるには抜本的な改革が必要だと主張しているそうだ。

www.bloomberg.co.jp

開発と経済的安定を促進するために融資を行うのでなく、民間投資家のリスクを低減する役割を担うことで、世界がクリーンエネルギーへと移行する上でより有益な存在になれるとの考えを示した。 (出所:ブルームバーグ

 世界銀行IMFが設立されたのは77年前、第2次世界大戦の末期といいます。SDGs 持続可能な社会を標榜する世界に適合しない仕組みということなのでしょうか。

 コロナ渦がきっかけに、これまでの経済政策を見直そうとする動きが世界各地で散見され始めているようです。

 

 

 米国では、バイデン大統領が競争促進の大統領令に署名し、一握りの企業にシェアが偏りすぎないよう規制を強化する方向にかじを切ったそうです。

 日本経済新聞によれば、独占に目をつぶってでも企業の国際競争力の向上を優先する1970年代以来の路線の抜本的な軌道修正になる可能性があるといいます。

www.nikkei.com

グーグルやフェイスブックなどは多くのサービスを無料で提供している。価格のつり上げのような昔ながらの手法で消費者の利益を損なうことはない。一方で新興企業の相次ぐ買収などで市場支配力を高め、取引業者に対して優位に立つ。 (出所:日本経済新聞

 バイデン大統領の特別補佐官のコロンビア大のティム・ウー教授は、IT大手が買収を繰り返して寡占体制を築き、競合他社の商品やサービスを模倣して地位を不当に強固にしたとみているといいます。

 その対策としてM&A審査を産業界や一般市民に広く公開するといった案を提起しているそうです。ウー氏は、「巨大企業が市場を10年以上支配して変化の兆しもない場合、反トラスト法(独占禁止法)で企業分割すべき」と持論を展開しているそうです。

 ただ米最高裁判所の判事は保守派が多数を占めているため、まだ先を読み切れないが、競争政策の改革が始まる可能性を日本経済新聞は指摘しています。

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 中国でも、ハイテク企業への締め付けが強まり、金融サービスやインターネットプラットフォーム、そして多くの大手企業を支えるデータなどに対する規制を強化しようとしています。

 ブルームバーグによると、国外上場を目指すほぼ全ての企業は、サイバーセキュリティー審査を受けるよう義務付ける新たなルールが適用されることになりそうだといいます。

www.bloomberg.co.jp

 中国の富豪が自由に稼ぐことができた時代は今、突然の終わりを迎えているようにみえるとブルームバーグはいいます。 

中国政府が締め付けを強める動機はさまざまだが、その底流には、経済に大きな影響力を持つようになった富豪の力を抑えたいとの意向が見え隠れする。

指導部の考えに詳しい当局者によると、中国政府は自国の富豪が韓国財閥のように経済や政治に強い力を及ぼすのを防ぎたいと考えている。 (出所:ブルームバーグ

 

 

 米中で動機に違いがあるのかもしれないが、これまでの「独占」を許さずとの姿勢なのでしょうか。

「(アリババの)馬氏のような大富豪が臆することなくルールを曲げ、自分たちの企業の成長を促進し、国有銀行など既得権益層に挑戦できた時代は終わった」とブルームバーグはいいます。

 それがあったからこそ、今までは投資家ばかりでなく、消費者からも支持を得ていたのかもしれません。少しばかり気がかりなニュースです。

 国内では、減資する大企業が増え、中小企業の恩恵を受けようとする動きをニュースが伝えています。こちらの主な理由は、コロナ渦による売上減のようです。

www.sankei.com

 その一方で、昨年度の国の税収が60兆8000億円余りとなり、過去最高を更新したといいます。国内でも、色々なところで偏りがありそうです。

 世界に遅れることなく、国内の経済政策を総点検して、時代にあった経済のカタチに変えていく必要がありそうです。