このところ再エネ関連のニュースが相次ぐ。 エネルギービジネス、電力事情が変化するのだろうか。
2016年に電力が完全自由化され、新電力が多数立ち上がった。家庭への電力供給が大手電力メーカだけでなく、複数の会社から選択可能になった。しかし、発送電はまだ大手に頼るところがあった。
それから4年余り、また変化が起こりつつあるようだ。
マイクログリッド
NTTを始め大手企業がエネルギービジネス、電力インフラに進出し始めている。
日本経済新聞が「NTT、再生エネ本格参入 自前の発電・送電へ投資1兆円」と伝える。これまでの新電力とは違い、発送電網を全国で展開できる事業者の参入となり、こうしたケースは初めてとなるという。
NTTは、全国約7300の電話局の大半に太陽光パネルと蓄電池を設置、ミニ発電所としても使うようだ。「電話局を中心とするマイクログリッドが全国に生まれる」と日本経済新聞はいう。
大手電力メーカとは別に自営線網(配電網)を整備し、全国の電話局から近隣の工場やオフィスビルに電力を供給する。この自営線では「直流」での送電を行うことで高効率を目指すという。
「資金力と技術を持ったNTTの電力本格参入は、電気料金の引き下げにもつながる。既存の電力大手の市場支配を切り崩すきっかけになりそうだ」と日本経済新聞は伝える。
仮想発電所 VPP
こればかりではない、NTTは三菱商事と連携するという。
6月30日、両社は、「三菱商事グループの電力事業に関する知見やノウハウと、NTTグループの有するICT技術・直流給電技術を融合させ、環境負荷の低いクリーンなエネルギーの提供や、レジリエンスを高めるエネルギーマネジメントサービスの提供を目指します」と発表した。
(資料出所:三菱商事公式サイト 「エネルギー分野における協業に向けた検討の具体化について」)
日本経済新聞によれば、三菱商事とNTTが構築する独自電力網に「ローソン」を組み込むことも見据えて協議するという。これを機に、三菱商事は点在する電力設備を一括運用する仮想発電所(VPP)事業に本格参入するという。
余剰電力を取りまとめて電力会社に販売することは想定せず、再生エネの安定利用というメリットをアピールして顧客を取り込む。
経年劣化で容量が減ったものの、まだ使える車載電池を商業施設など向けの大型蓄電池に仕立て直して再利用する仕組みもつくり、収益源の1つにする。 (出所:日本経済新聞
NTTの計画には驚きだ。日本の再生エネルギー発電容量の1割にあたる750万キロワットの発電力を確保し、独自の発送電網も使って顧客に直販するというのだから。
日本経済新聞は、「脱炭素の流れが強まるなか、資本力がある再生エネルギー事業者が生まれることで国内電力の競争環境が一変する」という。
この計画が実現すれば、政府が掲げる30年の再生エネ比率22~24%の目標達成が現実味を帯びてくるともいう。
温度差
ただ気になることもある。
こうした大手企業の技術提携先が海外企業が多いということだ。大手企業だからこそ、海外市場への進出も視野に入れたことなのだろうけれど、もう少し国内企業との連携があってもよさそうだ。
EVのバッテリー再利用は、「サーキュラーエコノミー」への移行にもつながり期待したいプランだが、こうしたところで、独ボッシュの技術に頼らなければならないというのが少しばかりさみしい気もある。
DeNAは、関西電力と共同で、「石炭火力発電所の燃料運用最適化を行うAIソリューションを開発した」と電気新聞が伝える。
米アマゾンの社員は、過去何度も、化石燃料関連企業との関係を絶つことや、AWSサービスの提供をやめることを求める抗議活動を起こしたりする。ベゾス氏のその動きに応えるかのように、気候変動対策に本気で取り組む姿勢を見せる。
国の違いはあれ、同じIT系企業でも差があるものだと感じる。
グーグルは、「化石燃料の採掘を行う石油・天然ガス企業向けのカスタムAI(人工知能)ツールや、機械学習システムの提供を停止すると宣言した」とForbesが伝える。これは環境保護団体の抗議を受けての措置のようだという。
グーグルはこれまで化石燃料の採掘を行う企業に専用のAIツールを提供し、採掘プロセスの合理化を支援してきたが、そのプロジェクトを中止することになる。 (出所:Forbes)
こうしたことも影響しているのだろうか。
「関連文書」
dsupplying.hatenablog.com
「参考文書」
VPP:バーチャル・パワー・プラント
VPPは、小規模で点在する太陽光や風力の発電設備と蓄電池を一括して制御し、あたかも1つの発電所のように機能させるシステムで、天候などで出力が変わる再生エネは需給を安定させるシステムが欠かせない。VPPは発電量が多いときは蓄電池に電気をためて供給を絞り、需要が増えたら電気を出す。風が吹いている地域の風力発電をほかの地域に送るといった制御もする。 (出所:日本経済新聞)