Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

バイオマス発電のヤシ殻問題と花王のサステナブルなパーム油調達活動

 

 マレーシア上空を飛行すると、整然とした森林と蛇行する茶色く濁った河が眼下に広がる。整然とした森林は自然の熱帯雨林ではなく、アブラヤシの林だ。その林からは大量のパーム油と、バイオマス発電の燃料が産出される。

 シンガポールに住んでいた頃は、身近にアブラヤシの林があった。 ゴルフ場にはアブラヤシの林が隣接し、OBを打てば、アブラヤシの林の中でボールを探す回ったりした。ひどいとアブラヤシの幹にボールが突き刺さっていたこともあった。季節になると、インドネシア スマトラ島から大量の煙がシンガポールにやって来る。煙が空を覆い、焦げ臭くなる。アブラヤシ畑を造成するための焼き畑の煙だと聞いた。

  当時は、パーム油から洗剤になったり、食品の原料になることは聞いていたが、そんなに詳しいことは知らなかった。

 

 

 

拡大するバイオマス発電

 バイオマス発電が活況を呈しているようだ。化学工業日報によると、2021年度の国内におけるバイオマスエネルギーの市場規模は、現在計画中や工事中のバイオマス発電所が今後稼働すると6160億円になる(矢野経済研究所の調査)という。
 太陽光や風力発電とは異なり、バイオマス発電には原燃料だ。今、その原燃料の調達が課題になっているようだ。この課題に対応するため、発電事業によっては、原燃料の収集ネットワークの拡充や未利用資源の探索と活用、林業支援、森林育成などに取り組む例がみられると化学工業日報は伝える。

 

注目が集まるヤシ殻(PKS)とその問題

 バイオマスの燃料として「ヤシ殻(PKS)」に注目が集まっている。JETROによれば、PKSの需給の推移をみると、その総量が不足するとの見通しがあるという。国内での発電所の増設計画を鑑みると、PKSなどバイオマス由来の燃料は年間1,000万トン以上必要と想定されている。インドネシア全体のPKS発生量は年間1,000万トンと言われているが、中国、韓国など海外勢もPKS買い付け量を増やすことが想定され、日本の需要を賄いきれない可能性があると指摘する。

 

www.jetro.go.jp

 
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 一方、日本経済新聞は、PKS輸入に歯止めがかかる恐れがあるという。事業者は燃料切り替えや稼働停止を迫られかねないと問題提起する。

 理由は、人権や環境についての第三者認証の取得だと説明する。現在、バイオマス発電の燃料として使用するPKSに必要な第三者認証として認められているのは「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」と「持続可能なバイオ燃料のための円卓会議(RSB)」の2つの国際組織による認定だという。

経済産業省有識者会議は19年11月、22年4月1日から発電事業者が、人権や環境に配慮したPKSを使用しているとの第三者認証を取得しないと、FITによる売電を認めないとする方針を公表。FITの対象の稼働中の発電所は、22年3月末までに認証を取る必要がある。 (出所:日本経済新聞

 

 期日までに全事業者が取得するのは困難と日本経済新聞はみる。新型コロナ禍により、認証組織が査察に行きにくいといった影響が出かねないとの見方もあると指摘する。

 

www.nikkei.com

 

 

 

花王 インドネシア現地の小規模パーム農園のRSPO取得支援を始める

 パーム油を洗剤原料などに使う花王は、農園管理・技術指導グループを編成し、インドネシア現地の小規模なパーム農園を訪問、「RSPO認証」取得に向けた支援を行うという。この支援は現地のアピカルグループ、アジアンアグリとの3社協働で行うそうだ。

 花王によると、支援期間は、2030年までの11年間。インドネシア北スマトラ州、リアウ州、ジャンビ州が対象で、小規模パーム農園数 約5,000件(農地面積:約18,000ヘクタール)が目標になるという。

 花王は、パーム油の調達について、「『持続可能なパーム油』の調達ガイドライン」を公表、森林破壊ゼロの支持を表明した上で、倫理的な課題にも配慮した持続可能な調達の推進と、トレーサビリティの確認を実施しているという。2007年には「RSPO」 に加盟、パーム油認証品の購入に切り替えているそうだ。

 

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(写真:花王


www.kao.com 

 成長が見込まれる市場が生まれると、雨後の筍のように多くの企業が市場に参加しようとする。難しいことかもしれないが、みなが花王の姿勢を見習えば、持続可能なバイオマス発電の実現に近づいていくのかもしれない。

 

アブラヤシ栽培の歴史

 今からはるか前のこと、大正期、あの三菱は農牧事業に乗り出したという。北海道拓北農場や小岩井農場などが直轄事業として営まれていたという。昭和期に入るとその事業は拡大し、当時オランダ領であったインドネシアスマトラ島で、アブラヤシ栽培を大々的に展開し、さらにマレーシアではゴム栽培を始めたという。三菱三代目社長久弥のときの話である。久弥は農牧事業に心血を注いだというが、太平洋戦争の敗北で、それら農園はすべて没収になったそうだ。インドネシアのアブラヤシ栽培にはそんな歴史がある。

 久弥のあとを継ぎ四代目社長となったのは小弥太。その小弥太はこんな言葉を遺している。

「もし不正を以て争わば、我は正義を以て闘うべきである。人 請託を以て地歩を得んとせば、我は勉強と親切とを以て対抗すべきである。正義を守り、不正を斥けて堅実に事業の発展を図らねばならぬ」。

「僥倖を恃み詭計を用いて成功するは最も恥ずべきことである。真正の努力を重ね、苦心を積み、いかなる失敗にも屈せず奮闘してから得た成功こそ真の成功である」。 (引用:岩崎弥太郎と三菱四代)

 

 この当時の方が、より持続可能な社会を目指していたのかもしれない。

 日本経済新聞の記事を読んで、そんなことを思い出した。

 

岩崎弥太郎と三菱四代

岩崎弥太郎と三菱四代

 

 

 

 「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

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「参考文書」

www.chemicaldaily.co.jp