Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【ペットボトルとアルミ缶】無印がペットボトルからアルミ缶へ、追従するメーカはあるのか

 

ペットボトルからアルミ缶へ」。 無印良品が、「ドリンクのパッケージをペットボトルから循環型原料であるアルミ缶へ切り替え、新たに発売」と発表した。

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(写真:良品計画

無印がペットボトル全廃、アルミ缶へ

 無印良品のドリンク全12種をペットボトルからアルミ缶に容器を変更し、今日2021年4月23日(金)から販売を始めるそうだ。

ryohin-keikaku.jp

「環境問題は、『これだけですべて解決する』というものではない」。

ペットボトルだからダメ、というわけではなくて(アルミが)現在選択すべき素材なんだろうということで、切り替えを決定した (出所:Business Insider)

 良品計画の食品部長が記者会見でそう語ったという。Business Insiderによれば、無印良品が苦悩しながら「プラスチック飲料全撤廃」を決定した様子が、そこかしこで伝わる会見だったという。

 今まで500mlであった容量が370mlに減少、価格が100円から90円(税込み)と下がったが、消費者にとってみれば実質的な値上げとなると指摘する。

www.businessinsider.jp

ペットボトルからアルミ缶への転換はあるのか

 無印良品の決断が、他の飲料メーカにも波及していくことにあるのだろうか

 

 

予想を覆した無印のアルミ缶

 国内最大手のアルミ缶メーカ昭和電工がアルミ缶事業を米投資ファンドに売却すると今年初めに発表があった。「アルコール飲料を除いたアルミ缶の需要はペットボトル普及で減少している」ことが判断の理由のひとつであったとSankeiBizが報じていた。

 アルミ缶リサイクル協会によれば、昨年のアルミ缶の需要は、ボトル缶は101%と微増するが、その他は横這いで、輸出入を加味した総需要量はほぼ横ばいの217.7億缶(前年比100%)と予想されていた。

 アルミ缶への転換はまだ先のことかと思っている中で、無印良品の発表は意外だった。いくらアルミが「循環型原料」だといっても、価格は高く、パッケージに使用する原料比率が高まることになったりはしないのだろうか。

[アルミ缶のリサイクルの特長]
・高いリサイクル率(国内)・・・97.9%(うち、水平リサイクル率66.9%)
省エネルギー効果・・・再生アルミはバージン素材からアルミにするのに比較して97%のエネルギー削減 (※データ出典:アルミ缶リサイクル協会2019年度)

(出所:良品計画

 

上昇するアルミ地金 = LME

 アルミ地金価格はここ最近上昇を続けているという。ブルームバーグによれば、4月13日のLME(ロンドン金属取引所)のアルミニウム相場では、約3年ぶり高値に上昇したという。その日の終値は前日比1.4%高の1mt=2293ドルだったという。中国の貿易統計が需要見通しを押し上げたそうだ。

www.bloomberg.co.jp

 水平リサイクル比率が高いことにより、地金の価格上昇の影響をさほど受けないのだろうか。

 一方、ペットボトルの原料になるエチレンは、北東アジアの市場では静かな展開になっているという。エチレンの原料であるナフサとのスプレッド(価格差)が維持され、横ばい状態ということであろうか。ペットボトル原料を安定的に調達できていれば、アルミ缶に転換しようとのモチベーションは起きそうにないのかもしれない。

 

 

米国、アルミ缶需要が上昇 転換加速か

 MIRUによれば、米缶製造研究所(CMI)が、アルミニウム缶の需要が世界的にピークを迎えていると声明を出したという。ペットボトル等からアルミ缶へのシフトが顕著であることが理由のようだ。

環境に配慮したアルミ容器は、かつてないほどの需要が見られている

いくつかのクラフトビール醸造所と清涼飲料大手では、自社製品のアルミ缶の調達が難しいと報告していると付け加えた。 (出所:MIRU)

 米国では、缶の製造工場が3つ新たに建設中で、拡大する需要を満たすために、既存のプラントに新しいラインを追加しているメーカーもあるという。

www.iru-miru.com

 国内では、最大手のアルミ圧延メーカーのUACJが、「海洋プラスチック問題に伴う、アルミ缶材への回帰」を期待し増産投資を行ない、販売量が増加、長期契約更新による数量確保し価格を改定し収益を改善させているという。

 ただこれ以降増産の計画はないようで、2022年までの販売は2020年と同じ数量にとどまるようだ。

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(資料:UACJ「構造改革の実行」

 UACJは、米国アルコア社とノベリス社に次ぎ、アルミ圧延品の生産能力は年間100万トンを超え世界3位。米国でもアルミ缶材を製造しているメーカ。

 

 

まとめ

 アルミ缶のサプライチェーンを調べてみれば、国内ではあまりペットボトルからアルミ缶への転換に関心を示していないように見受けられる。そうした中での無印良品の決断は苦渋の選択だったのかもしれない。缶材をリーズナブル価格で安定的に調達できなければ、長続きはしない。無印はサプライチェーンを構築できたのだろうか。

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(画像:良品計画

 国内製缶メーカ大手の東洋製罐茨城県の石岡工場で4月から増産を始めたようだ。低アルコール飲料の需要増が背景にあるようだが、詳細を明らかにしていないという。

 他社の追従はあるのだろうか。米国の事例からすれば、無印の決断を機に、サプライチェーンに変化が起きてよさそうだが、まだ飲料メーカはペットボトルの水平リサイクルのほうに関心があるのだろうか。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

www.sankeibiz.jp

www.alumi-can.or.jp

【倫理って何だろう】ペットボトル問題とあるライターの惑い

 

 2021年の世界の報道自由度ランキングが、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」から発表された。

 日本は昨年から1つ順位を落とし67位。政府の姿勢や記者クラブの制度、慣習や経済的利益によって記者が権力監視機関としての役割を十分に果たしていないと指摘する。

rsf.org

 報道機関がもう少し反応するのかと思えども、意外にもあっさりとした報道が多い。なかなか自らその問題の核心を突き、意見することが難しいのかもしれない。逆に言えば、それが今の順位ということなのだろうか。

 

 

 そんなことの現れというほどのことではないかもしれないが、「みんなが絶賛するポカリCM、友だち失う覚悟で批判した塩谷舞さんの思い」というGLOBE+の記事がバズっているという。

 取材に応じた本人の意思とは少し異なった「タイトル」が反響を呼んだのかもしれない。

 バズれば、記事としては商業的な成功なのかもしれないが、それで取材に応じた本人のメッセージを伝えることが出来たのだろうか。

globe.asahi.com

 

 GLOBE+の記事ができる前に「ポカリスエットの少女たちが、大人になる頃」という塩谷さんのnoteを読まさせていただいた。

note.com

「.....水平リサイクルが比較的しやすいペットボトルは、プラ容器の中でも比較的「マシ」な分類に入るのかもしれない」とか、

ポカリには粉末があり、緑茶や紅茶には茶葉がある。

目新しいことばかりがニュースになるけれど、前からあって、合理的で、環境負荷が低いのであれば、それを大きな声で「よくね?」と言いたい。 

(引用:「ポカリスエットの少女たちが、大人になる頃」塩谷舞さんのnote) 

 そうした言葉の表現が何かの拍子にトリガーになったりするのだろうか。

 noteを読んだ率直の感想は、彼女の指摘があったかもしれないが、なぜ大塚製薬やクリエイターたちはインパクトのある美しい映像にこだわるのだろうかと。

 


www.youtube.com

 一度成功してしまうと、次はそれを凌駕した作品を作りたいとの衝動に駆られるのだろうか。そうしたことや社会からの期待を自分たちの役割と定義し、それをやり続けてしまうことになってしまうのだろうか。

 そんなことを考えると、彼女の指摘もリーズナブルなことのように思えて、一石を投じることになればと思ったりしながら読んでいた。 

 ただGLOBE+の記事が思いもよらずにバズり様々な反応があると、気持ちが揺れ動いたりするのだろうか。

note.com

……挙げられる理由は色々あるんだけども、ここ数年の自分は極端に良い人、というか「倫理的な人」みたいな顔をしすぎていた気がするのだ。べつに、倫理を代表している訳でもなのに。
しかし如何せん中身が100%の善人ではないので、その不一致にむず痒くなってしまう。出している言葉に嘘はないが、全部ではない。

(引用:「配慮に配慮を加えて煮込んだ甘口カレー」塩谷舞さんのnote) 

 悩み、もがいた挙句に配慮が生まれ、そこからさらに配慮を加えたら「倫理」に近づいたと読めてしまった。「倫理」とか「エシカル」の実践とは、そんな風に自分以外の他者や環境に配慮することではなかろうか。それは自分の心に「善」を萌芽させることなのかもしれない。

 塩谷さんは自分が100%善人ではないという。しかし、この世に最初から100%善人なんているのだろうか。色々な「迷い」や「惑い」も、そこにから生じたりするのだろうか。何か気づきがあれば、違った景色も見えるのかもしれない。

 三十にして立ち、四十にして惑えず、五十にして天命を知ると古語がある。惑えるからこそ、自分の本分に気づき、天命を知り、そこから独創性が生まれたりするのではなかろうか。 

 

 

 塩谷さんがnoteで主張したポカリスエットのことも、個人的には総論賛成各論反対で、事細かなところでは意見の違いはありそうだ。ただそんなことで対立するよりは、プラごみが減ればいいことだし、そこから考えれば、塩谷さんの意見ももっともなことだ。何も目くじらを立てるほどのことでもない。それに共感する人がいれば、もしかしたら、またひとつプラごみが減るのかもしれない。それよりはクリエイターたちに疑問を投げかけることに共感し意義を感じたりした。

 ジャーナリストではないから、その本分は異なるのかもしれないが、ある意味での「権力」としての企業に対し、監視機関とは言わないでも、意見をぶつけることに清々しいも感じたりもした。

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 大塚グループが掲げる環境の取り組み重要項目も、結局出来ていないから、それが目標になっているのだろう。そうであれば、こうした声や反応を真摯に耳を傾け、対応していくべきなのだろう。会社の顔である広報、広告の対応が鋭く問われているような気がする。

 

【SDGs技術の見える化】脱炭素、EV化の遅れを指摘されるトヨタの苦悩

 

 日本特許情報機構がAIを活用し、公開されている特許情報からSDGs(持続可能な開発目標)との関連を推定、企業ごとに集計することで、世界初となる「SDGs 技術企業ランキング」指標の開発に成功したと発表し、SDGs技術を見える化したという。

 それによれば、目標13「気候変動に具体的な対策を」では、トヨタがダントツのトップで、続く2位はパナソニックIPマネジメント。3位以下は団子状態で、東京エレクトロン、日本製鉄、デンソーの名が並ぶ。

transtool.japio.or.jp

 ここでも、トヨタ自動車の名がトップにあがる。SDGsの取り組みでは概して好感が持たれているのではなかろうか。

 

 

 そのトヨタが、地球温暖化防止の枠組みであるパリ協定への取り組みでは苦悩しているのだろうか。

 温暖化対策に対する姿勢が積極的ではないとして、投資家や活動家がトヨタに圧力を強めているとロイターが報じる。

トヨタはこの日出した声明で、「渉外活動がパリ協定の長期目標に整合しているかどうかのレビューと情報開示を年内に実施する」と発表。

多くのステークホルダー(利害関係者)に理解してもらえるように「充実した情報開示に努める」とした。 (出所:ロイター)

jp.reuters.com

 ロイターによれば、トヨタの渉外活動にはロビー活動も含まれ、英国政府が2030年までに内燃機関の使用を禁止することに反対したり、米国での自動車燃費基準に反対したり、気候変動対策を繰り返し弱体化させてきたと指摘する。こうしたトヨタの姿勢に対し、6月の定時株総会前に、運用資産の合計が約2350億ドルに上る4つのファンドが圧力をかけ、地球温暖化防止に向けた国際的な取り組みに反するロビー活動を停止するよう求めていたという。

 パリ協定に反する意図はなくとも、自ら思い描く理想的なモビリティの未来の実現させようとすると、他者からは人類共通の課題である地球温暖化に背を向けているように見えてしまうということなのだろうか。

 自動車のことを誰よりも知る世界トップの自動車メーカならでは苦悩なのかもしれない。

 

 

 そのトヨタは、「ゴールは脱炭素と持続可能性」とトヨタイムズで強調する。

カーボンニュートラルを実現するために新しい技術が必要で、走行時ゼロエミッションであるEVの普及が重要な意味を持つことに疑問の余地はありません。しかし、ゴールはあくまで「カーボンニュートラル」や「サステナビリティ(持続可能性)」であるはずです。

クルマをEVに変えていくことではありません。 (出所:トヨタイムズ)

toyotatimes.jp

「HVに固執している」との声もあるトヨタだが.....

 カーボンニュートラルを目指す自動車産業では、「どの電動車が次世代の本命になるか」というような、技術の対立構造でとらえられている印象がある(出所:トヨタイムズ)。

 それでもトヨタは、電動車のフルラインアップ化の一環として2025年までにEV15車種を導入し、そのEV新シリーズTOYOTA bZでは7車種を導入するという。そして、中国 上海モーターショーでは、そのコンセプトカー「TOYOTA bZ4X」を披露した。

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(写真:トヨタ自動車

 しかし、「こと電気自動車(EV)、特に世界最大の中国市場ではやや遅れを取っている」とロイターは指摘する。 

jp.reuters.com

 ロイターが指摘する通り、トヨタは自動車の居住性や快適性にこだわり過ぎているのかもしれない。そして、特にメカ二カルな内燃機関エンジンについても。

 そこにこだわり、正統性を持たせようと説明すれば、それが言い訳に聞こえるだけなのだろう。 

 

 

 自動車好きにはトヨタの姿勢がわかるような気がする。エコに気を使い静かに街なかを走り、人里離れた道では自動車が持つパワーを楽しんだ走りをする。メカニカルなサウンド(機械音)や振動、その疾走感。モータ駆動するEV電気自動車では味えない、あまりエコではない趣味の世界。そう思えば、「HV」が最適化解に思える。

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(写真:トヨタ自動車

 あらゆるモノで電動化が進み、古典力学を応用したメカニカルな構造が少なくなる。そんなかにあって、エンジンを残していきたいと思うのはかつての機械系エンジニアのはかない夢なのかもしれない。

 そうしたモノがなくなれば、それを生み出す優れた加工技術も廃れていく。陳腐なものかもしれないが、この先も伝承すべき技術ではなかろうか。伝統工芸と同じように。

 ノスタルジアなのかもしれないが、そんなことをトヨタは考えてはいないだろうか。

 そんなノスタルジアな世界は包み隠し、「Mobility for All」を前面に押し出し、その環境に見合ったソリューションを提供していく。そして、市場と対話し、時宜を得るまで待つしかないのだろう。しかし、今のトヨタ経営陣は諦めることはないのかもしれない。

イノベーションはプラクティカル(実用的)でなければ何のインパクトもなく、市場に受け入れられません。 (出所:トヨタイムズ)

 

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【近づく気候変動サミット】求められる野心的な温室効果ガス削減目標 その実現可能性と科学的根拠は

 

 コロナの感染拡大が続く。遠目で見ていた変異株の脅威にさらされている。やはり慣れなのだろうか。それともワクチン接種が始まった安心感なのか。1波、2波、3波と繰り返すたびに波が大きくなった。4波はどこまで大きくなるのだろうか。

 波を繰り返すたびに「大丈夫だった」という実績が、コロナへの恐怖を薄めていくのだろうか。コロナを他人事と感じる人が増えたいうのであれば、この結果にうなずける。結局、人の心理に変化がなければ、抑えることは出来ないということなのだろう。

 科学的根拠、エビデンスにもとづいた対策ではないと見抜かれてしまえば、説得力はなくなる。3度目の緊急事態宣言の発出で、変化はあるのだろうか。休業要請を含め、かなり厳しい措置を検討しているそうだ。

 

 

 「気候変動サミット」がバイデン米大統領の主催で4月22日に開かれるという。

 NDC温室効果ガス削減目標をこのサミットを節目に判断するそうだ。26%だった削減目標を45%(2013年比)に引き上げることを検討しているとの報道もある。

 このサミットで具体的な削減目標の公表はあるのだろうか。  

 2050年カーボンニュートラルと整合的で、世界の物作りを支える国として、次なる成長戦略にふさわしい野心的な目標とすることで、世界の脱炭素化のリーダーシップをとっていきたい。(出所:NHK

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 このサミット後の6月にはG7が開催され、ここでも脱炭素が主要議題になる見込みだという。そして、11月にはCOP26が英グラスゴーで開催になる。

 様々な人々が、それぞれの立場で目標はこうあるべきと発信する。

 

 

 サステナブル・ブランドジャパンは「欧米に並ぶ気候変動のリーダー国になるために、2030年の温室効果ガス削減目標を最低50%以上に」という。

www.sustainablebrands.jp

 国のNDC温室効果ガス削減目標を60%以上(2013年度比)への引き上げと脱原発・脱石炭を求めるのは、「ピースフル クライメイト ストライキ」。オンラインで平和的な抗議を行なっている。

www.p-c-s.tokyo

 この活動は、女性が主体となって気候危機を考えるためのストライキ、2021年4月17日(土)~4月23日(金)の7日間開催され、 水原希子さん、二階堂ふみさんらも参加している。


www.youtube.com

 

 26%だった目標を45%に引き上げればアグレッシブとは言えそうだが、国連がすでに、45%(2010年比)減少させる必要があるといっているという(参考:サステナブル・ブランドジャパン)。

 そうであるなら、45%ではコンサバな数値に見えてしまうかもしれない。ストレッチした数字を目標にすれば、野心的に見えるかもしれないが、実現可能性は遠退き、目標達成を求められる企業はモチベーションを低下させるかもしれない。「どうせ、できるはずがないと...」

 落としどころを見つけるの骨の折れる作業だ。みなが納得できる落着点を見出し、これならできると思わせることも肝要なのだろう。45%からどれだけストレッチするかということになるのだろうか。

 

 

「CO2を原料とする完全リサイクル可能なカーボンニュートラルコンクリートの基礎的製造技術を開発」と東京大学工学部が発表した。

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(資料:東京大学工学部)

研究チームは空気中のCO2を溶かした水に砕いた廃棄コンクリートを入れることで、コンクリートの粒子の間に炭酸カルシウムが析出し、再び強度を高めて再生できることを見つけた。

現状の強度ではまだ建築物などには使えないが、炭酸カルシウムの析出を改善することで2025年に通常のコンクリートと同程度の強度を達成し、30年に再生コンクリート製の低層建築物を建てることをめざす。 (出所:日本経済新聞

www.t.u-tokyo.ac.jp

 セメントは製造時に大量のCO2を排出し、人為的な排出量の5%にのぼるといわれ、地球温暖化対策が急務と言われる産業のひとつだ。

 日本経済新聞によれば、再生コンクリートは1立方メートルあたり124キログラムのCO2を原料として使うという。50年に従来のセメントやコンクリートを半分置き換えた場合、年間で2000万トンのCO2排出を削減できるのに加え、空気中のCO2を620万トン利用できるという。

www.nikkei.com

 

 国のNDC温室効果ガス削減目標は何%となるのだろうか。その説明と科学的根拠が気になる。みなが納得、理解できれば、その実現可能性も高まるのだろう。

 未知のウイルスとの戦いはKKD(経験と勘と度胸)を強いられるのかもしれないが、様々な技術開発が進む脱炭素であれば、煙に巻くこと無くみなが納得できる説明ができるのではなかろうか。

 

【環境先進国へ】CCU開発とカーボンリサイクルロードマップ

 

 変化があると漠然とした不安が生じたりするが、気候変動問題で米中が協力していく意向を示したと聞くと、少しばかり安堵できそうだ。

 相手を挑発するよう言葉を慎めば、禍も少なくなるのだろう。異端を好むのではなく、まずは化石燃料からの転換が世界の目標として共有されればいいのだろう。何も地中深くから資源を掘り出さなくとも、地表には使えそうな資源にごまんとありそうだ。

 温室効果ガス低減を大きな目標とし、それに各国が向け切磋琢磨しながら、イデオロギー的な対立を乗り越えて協力していく、それがこれからの課題ということなのだろうか。

 

 

 化学はあまり得意ではなかった。その影響もあるのかもしれないが、気候変動対策の化学的分野に興味がわく。排出される二酸化炭素を資源にするメタネーションやメタノール製造が実用化されれば、その価値が大きく上がることはないのだろうか。低廉になった化石燃料の価格に対抗することが大きな課題というが、あと7~8年で形になりそうとの声を聞くと期待が膨らむ。

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 こうした技術をCCU=Carbon dioxide Capture and Utilization(CO2回収と利用)という。いわばCO2の有効利用。輸入に頼ってきた化石燃料の代替品となり、国内製造できば、エネルギー供給の安定化につながるばかりか、基礎原料にすることができれば、様々な産業で利用が可能となりそうだ。そして、そこから何かしらの製品が作られ、販売されれば、従来の化石燃料から成り立っていた社会から抜け出る可能性があるのかもしれない。

 経済産業省は2019年6月に「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を公表し目安を示した。

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(資料:経済産業省「カーボンリサイクル技術ロードマップ」

  商船三井は昨年、「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG」を立ち上げ、メタネーション技術を船舶のゼロ・エミッション燃料に活用する実現可能性を探ることを目的とし、具体的には、メタネーション燃料の原料調達・原料輸送・メタネーション・舶用燃料化によるカーボンリサイクルのサプライチェーンを想定し、実現に向けた技術的課題の洗い出しとロードマップ策定を行なうという。

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによれば、この実現可能性の現時点での成果を、今年夏ごろ造船・海運系学会誌に掲載予定という。多少大がかりなスキームかと思われるが、ブルームバーグの取材に答えた商船三井の担当者は前向きな言葉を発信しているようだ。

 

 

 大成建設は製造途上に二酸化炭素を大量に排出するセメントを使わず、CO2から作った炭酸カルシウムを用いるコンクリートの製造方法を開発したという。

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(資料:大成建設

 大成建設によれば、回収したCO2から炭酸カルシウムを、製鉄で発生する高炉スラグ主体の結合材により固化させることで、コンクリート内部にCO2を固定することが出来るという。

www.taisei.co.jp

 炭酸カルシウムなどカーボンリサイクル材料がまだ流通が始まっていないと大成建設は指摘し、今後のカーボンリサイクル材料の開発・市販の状況を踏まえ、このコンクリートを現場打ちコンクリートや二次製品など多様な建設資材に取り入れていくという。

 将来的にはコンクリート用砂利・砂の代替として粉砕した廃コンクリートなどの利用も検討しているという。

 そのためには、ここでも廃材を再利用可能とする処理ルート、そのためのサプライチェーンやスキームが必要になるということなのだろうか。技術開発を世界に先駆けて進めていくことも重要なことであろう。その一方で、その実用化のためには廃材などが循環するためのループ作りも同じ程度に重要なのだろう。

 ここでイニシアティブが取れれば、世界のどこよりも早く環境立国、環境技術先進国と言えるようになるのではなかろうか。

 

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【持続可能な林業】木造高層ビルを作る人、「緑の砂漠化」森を守る人

 

 木工製品を作りたいと思い、小田原市にある工芸技術所を何度か訪ねた。木や木工に詳しかったわけではなかったが、相談に行くことで、様々な学びがあった。挽き物や木象嵌指物など多様な木工技術や木の種類、そして、箱根・小田原地区での木工の歴史について丁寧に教えてくれた。

 小田原地区に箱根の山があったおかげで、木工が栄え、かつては玩具など多くの木製品が海外に輸出されていたという。技術所には、その当時の製品が多数保存され、その歴史を知ることができる。ありとあらゆるものが木から作られていた。

 

 

 また少しずつ木の価値が見直されているのだろうか。

 国内初の純木造の7階建てテナントビルが仙台市に完成したという。国内最高層だそうだ。製材を主要な構造材として使用しているという。東北で初めて、持続可能な森林運営を目指す国際認証制度「PEFC」のプロジェクト認証を受けたという。木の地産地消につながればいいのかもしれない。

 設計・施工したのは山形のシェルター社。シェルター社によれば、複数の製材を束ね合わせて製作する柱や梁、木質耐火部材“COOL WOOD” 等、最先端の技術を採用しているという。

www.shelter.jp

 河北新報によれば、「都市部で中高層の木造建築が実現したことで、都市で生まれた利益を地方に還元できる。森林を活用し、地方創生につなげたい」と、シェルターの木村会長が述べたという。

 

www.env.go.jp

 

 

 東京奥多摩檜原村に「東京チェンソーズ」という会社がある。

 「東京で「儲かる林業」は実現するか――森の管理、木材のブランド化に取り組む若者たち」として、Yahoo Japan CREATOSが紹介する。

creators.yahoo.co.jp

 その東京チェンソーズは、「利益ある成長」、「身近な林業会社」、「地域貢献」などを経営方針に掲げ、持続可能な林業を目指しているそうだ。

 国際的な森林認証制度FSC®認証」を取得、檜原村時坂地区に所有する自社有林で、森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で木材を生産する。

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かつて先人は、子や孫の財産となるよう山に苗木を背負い上げ、一本ずつ丁寧に植えました。夏には大汗をかきながら下草刈りをし、丹念に育て上げた木が、今まさに活用できる時期を迎えています。

しかし、木材価格の下落に伴い、山仕事で生計を立てることが難しくなり、子や孫の世代は山から離れてしまいました。私たちは先人の思いを胸に、山を預かり、丁寧に手入れをし、財産価値を高めることを仕事としています。 (出所:東京チェーンソーズ)

tokyo-chainsaws.jp

 かつては国内の森林を伐採、住宅を建設し、林業が一大産業になっていた。その後、需要は低迷、安価な輸入材に押され、やがて林業は衰退、森は荒廃していった。木々が密集し、森の中は真っ暗、地面には植物がほとんど生えなくなる。森が天然のダムとしての機能を失い、下流域では災害の危険が増す。

 東京、檜原村にある杉林が今そういう状態にあるという。 「緑の砂漠といいます。空から見た時は緑豊かな森に見えるけど、中に入ると林床は砂漠状態なんです」と話す東京チェーンソーズの青木氏の言葉をCREATORSが紹介する。

 

 

 林業がさかんだったころに植えられた木々が樹齢60~70年を迎える。

「木材価格が低迷し、林業に従事する人が減り続けるなか、その豊かな資源は放置されている」と青木氏はいう。

「木のおもちゃの自給率は、数パーセントといわれていて、すごく伸びしろがあるなと感じています。おもちゃ美術館にやってくるのは、子どもたちです。その子どもたちが、檜原村は『自然が豊かな、木のおもちゃの村』と認知してくれる。20年後、彼らが大人になって子どもができた時、『檜原に行けば木のおもちゃが買えるよね』って、またここに来てくれる。

林業は木を植えてから収穫するまで、60年かかります。きちっと地に足をつけて自分たちで市場を作り出していく。そういうことが向いているのかもしれません」 (出所:Yahoo CREATORS)

 青木氏は、檜原村林業の将来をこう語ったという。

 小田原の工芸技術所で聞いた箱根の話を思い出した。かつて輸出までしていた「木のおもちゃ」が輸入に頼頼るようになった。それなのに、国内には資源が余るほどある。少しばかり矛盾も感じたりする。

小田原地方木製品製造業経営課題等把握事業報告書(工芸技術所)

 サステナブル林業が再興すれば、様々な問題も解決に向かうのかもしれない。持続可能であればこそ、そこからは適正な利益も生まれるのだろう。 

 アップルは森林再生に2億ドルの基金を創設した。その意味が理解できるような気がする。

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「参考文書」

www.kdf.or.jp

www.pref.kanagawa.jp

jp.fsc.org

 

【サステナビリティはアップルの美学か】森林再生に2億ドルのRestore Fund(再生基金)開始

 

 アップルから発表されるニュースをみるたびに、一体何の会社なのかと、不思議な気分になることがある。

 Appleは15日、温室効果ガス削減の取り組みとなる2億ドルの “Restore Fund”(再生基金)を発表した。

 それによれば、大気中から二酸化炭素を削減することを目指している森林プロジェクトに直接投資を行うことで、投資家は金銭的なリターンを得ることができるという。乗用車20万台分の燃料に匹敵する年間100万トンの二酸化炭素を削減することを目指し、実現可能な財政モデルを提示することにより、森林再生に向けた投資活動を拡大させることを目的とするという。

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(写真:アップル)

 「森林、湿地、草原といった環境は大気中から二酸化炭素を引き寄せ、それを土、根、枝に永久に貯蔵します。基金の設立を通じて、そこで金銭的なリターンを生み出しながら、二酸化炭素の影響を現実の測定可能な形で示すことで、私たちは将来的により幅広い変化を起こしていくことを目指しています

と、Appleの環境·政策·社会イニシアティブ担当バイスプレジデント、リサ·ジャクソン氏は述べる。

www.apple.com

 アップルは、これは「2030年までにカーボンニュートラルにすること」を目指す多角的な対応の一環だと説明する。この基金で、大気中から二酸化炭素を削減することで、サプライチェーン上に残る二酸化炭素の排出とオフセットすることで解決する。

 カーボンニュートラルが抗し難い世界的な流れだとしても、ここまで徹底してできることには脱帽である。

 

 

 アップルは発表の最後を、2016年から始めた iPhoneの製品パッケージについて説明する。「いつの日かリサイクル素材または再生可能な素材だけを使って製品を作れるようになる」という当社の目標の一環として採用された初の “輪の閉じた” 素材を代弁するものという。

最新の iPhone 12 ラインナップでは、製品パッケージの93パーセントが木材繊維ベースの素材で作られています。これには iPhone のディスプレイを保護する繊維ベースのカバーも含まれ、今回初めて、それまで使われていた標準的なブラスティックフィルムから置き換えられました。 (出所:アップル)

 アップルがパッケージにこだわるのは、お客様が購入した商品に最初に触れる部分だからなのだろう。そこにアップルのすべてのメッセージが集約されているのかもしれない。アップルの美学なのだろう。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 国内で相変わらず石炭火力発電所が議論がくすぶる。国内の総発電量の3割超を非効率な石炭火力で賄う電源開発(Jパワー)の最近の動向を日本経済新聞が伝える。

 それによれば、規制が強化されるなか、石炭依存の経営から脱却を急いでいるという。

計画していた山口県宇部市の石炭火力発電所の建設を断念し、CCUSを組み合わせたCO2フリー水素発電やCO2フリー水素の製造・供給に傾注しているようだ。

www.nikkei.com

 日本経済新聞はこう指摘する。

日本は19年度の国内発電量のうち石炭火力が32%を占め、37%のLNGに次いで2番目に多い。石炭を一気に廃止すると地域の電力需給が崩れるとの見方もある。日本各地で拡大する太陽光や風力は発電量が安定しておらず、大手電力は火力発電所の稼働を調整することで需給を一致させてきた石炭廃止で需給が安定しなくなった場合、大規模停電のリスクが高まる可能性がある

原子力発電所の再稼働がなかなか進まない中で、一定程度の石炭火力は必要とみて高効率のものは稼働を認めざるを得ないというのが日本の現状だ。 (出所:日本経済新聞

 

 

  一見筋の通った論理に聞こえるが、それでは石炭火力を擁護する論理にはなっていないだろうか。需給安定を維持しつつ「脱炭素化」を進めることが目標であって、当座石炭火力に頼らざるを得ないのであれば、そこに必要となる技術開発進め、それで補うことができなければ、カーボンオフセットするとの考えが必要になるのではなかろうか。

 まだ技術開発途上にある水素に一気に走ることにはリスクが高いような気がする。常にバックアッププランを持っているべきではなかろうか。

 

「おなばら発電所」の建設について~河川維持流量を活用した水力発電所を建設~( 電源開発)

 

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(写真:アップル)

  アップルの「サステナビリティ」に関する発表を見るたびに、「孤高の人」アップルと感じてしまう。

「孤高」とは、個人の社会生活における1つの態度を表し、ある種の「信念」や「美学」に基づいて、集団に属さず他者と離れることで必要以上の苦労を1人で負うような人の中長期的な行動とその様態の全般を指すとWikipediaは説明する。

 国内電力事業者にも、アップルの美学を学んでもらいたい、そう感じる。

 

「参考文書」

山口宇部パワー(株) 西沖の山発電所(仮称)新設計画 計画取り止めについて │ ニュースリリース │ J-POWER 電源開発株式会社

GENESIS松島計画の環境影響評価実施に向けた準備開始について
―カーボンニュートラル・水素社会実現に向けて―