Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【バイオエコノミー】開発が続く様々なバイオマス素材、ANAは機内食容器にサトウキビ由来を採用

 

 3度目の緊急事態宣言で、またも重苦しいゴールデンウイークである。気になっていたことを調べ直してみたりするにはいい機会なのかもしれない。

 私権制限の是非は別として、ただ足元の状況にやきもきし、焦燥に駆られたりする。ここまでコロナ渦が長引いたのも、公衆衛生を育むことができなかったということなのだろう。公衆衛生が成り立ち、その上の経済活動であれば、感染の強弱を繰り返しながら、やがて収束に向かうウィズコロナもあり得たのかもしれない。

 

 

 現実離れした戦略で未来が見通せないより、足元にある問題を解決していこうと成長戦略を描いた方が説得力があるのかもしれない。国策が「脱炭素」と決まると、一切に新技術開発競争が萌芽する。少々混沌感も否めないが、いずれひとつの方向に収束していくのだろう。常に足元では現実的な解が選択され、その2、3歩先を見据えて行動が始まっていく。

 ANAが、機内食の容器を植物由来の素材へ8月から変更するという。機内で使用する物品の脱プラスチックを加速させるそうだ。

 ANAによれば、これにより機内物品における使い捨てプラスチック使用量の約3割にあたる年間約317トンが削減できるという。小さな数字なのかもしれないが、その積み重ねで「脱プラ」、そして「脱炭素」にもつながっていくのだろう。

www.anahd.co.jp

 ANAが容器に採用したのは、サトウキビ由来のバガス素材。

 地球と未来の環境基金によると、砂糖生産に必要な糖汁をさとうきびから絞った後に、茎や葉など大量の残渣が発生する。この残渣を「バガス」と呼ぶ。年間排出量は、世界中で約1億トンにもなるという。製糖工場では、バガスをボイラーで燃やして機械の稼動エネルギーなどに利用するが、アジアや南米などの大規模工場では、それでも使い切れないほど大量のバガスが発生しているという。このバガスを原料した食品容器をバカスモールド(非木材紙)と呼ぶこともあるそうだ。

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 横浜ゴムは、バイオマスからブタジエンを生成する世界初の新技術を開発したと発表した。この新技術は国立研究開発法人理化学研究所理研)他との共同研究だという。

 ブタジエンは自動車用タイヤなどて使われる合成ゴムの主原料で、石油由来のナフサ(粗製ガソリン)から工業的に生産される。横浜ゴムによれば、この技術を確立することにより、石油への依存度が低減でき、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素削減に貢献できるという。

 共同開発した理研も同じことを指摘し、ブタジエンのバイオ生産はこれまで達成されておらず、バイオマス資源から1工程でブタジエンを生産する方法の開発が望まれていたという。この新技術も、グルコース(糖)から始まり、最終的にゴムに変化する。

www.riken.jp

 ブタジエンはクルマ用途の他にも、汎用プラスチックスのABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)にも使われ、世界市場規模は年間1200万トンを超える非常に重要な工業原料で、あのレゴ(LEGO)の素材にもなっている。

 ブタジエンの日本での年間生産量は100万トン以上あり、この合成プロセスの一部をバイオプロセスに置き換えることができれば、低炭素社会実現への貢献が期待できると理研は指摘する。

 

 

 東工大では、熱安定性に優れ、結晶化が速い微生物ポリエステルを開発しているようだ。それによれば、原料として使用するチグリン酸は、植物の種子から得ることができるが、価格が高いため、安価なバイオマス資源である糖質から生産する技術の開発が必要だという。このポリマーの大量生産が可能になり普及が進めば、マイクロプラスチック汚染解決の一助となるものと期待されるそうだ。

www.titech.ac.jp

 

 様々なバイオマス素材の開発と実用化が進むが、その原料にグルコース(ぶとう糖)が利用される。この先、化石燃料と同じように、この「糖」の争奪戦が起きたりしないのだろうか。ただでさえ食糧危機と言われる時代に、「糖」の奪い合いもないような気がする。

 バイオエコノミーの課題なのかもしれない。バイオマス素材の開発と共に、「糖」の生産の確立が求められているのだろう。

 「糖」は植物などに含まれる葉緑体において、太陽光からのエネルギーを使って水と二酸化炭素から光合成によって作られる(引用:Wikipedia)。人工光合成から作ることはできるのだろうか。興味が沸いてくる。

 こうした技術開発と実用化が日本のコアにあって欲しい。AIもデジタルも、こうした技術開発には必要な技ではある。デジタル一辺倒でなく、コアになる技術研究・開発も必要とつくづく感じる。

 

「参考文書」

www.y-yokohama.com

 

【ファッションと気候変動】ファッションがサステナブルになるとき。

 

 1人あたり年平均で18着の衣服を購入し、12着の衣服を手放す。それに加えて、1年間に1回も着られていない服が1人あたり25 着もあるそうだ

 服がごみとして廃棄されると、その95%はそのまま焼却・埋め立て処分され、その量は年間で484,000トンにも及ぶ。これは、毎日、大型トラック約130台分の衣服を焼却・埋め立てしていることになるという。

 服が資源として回収されれば、それだけ燃やされる衣服は減り、地球環境にやさしくなる。 

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(画像:環境省

#SUSTAINABLE FASHION、環境省webページを立ち上げ、「サステナブルファッション」を推奨する。

www.env.go.jp

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(画像:環境省

 1着の服を作るのに、約25kgのCO2を排出し、2300リットルもの水を使う

 環境省が公表している試算結果にそうある。

 必要以上に作らなければ、それだけ地球環境への負荷は軽減され、脱炭素につながり、気候変動対策になる。

 

 

 

 

 カーボンニュートラルが世界的な流れとなり、日本もその流れにのった。2050年に向けてCO2の排出量を減らし、最終的には全体で実質ゼロになるようにしていく。多くの産業がこれに賛同して、各々企業が2030年、2050年の目標を設定し、行動し始めた。そんなことが世の中の流れになった。

 国内のファッション業界では、ユニクロ無印良品などグローバル市場を活躍する企業は感度が高く、それ以外は感度が低いという。感度が高い企業は、環境や人権問題を次重んじる欧米市場を気にし、それに対応する。こうしたことで問題を起こせば、ネガティブスクリー二ングの憂き目にあうという。

 時代の写し鏡のように、時々のトレンドを表してきたファッション業界が、こと環境問題では、そのトレンドをリードできないことが不思議でならない。トレンドを生み出す人たちの中に、環境は意識高い系みたいな盲信があるのだろうか。

 異常なほどの高温や尋常じゃない大雨など気候変動が身に迫る危機となり顕在化し、人々の心の中に将来に対する不安が芽生えたりする。世の中が「脱炭素」に動き出せば、なおさらその危機を意識せざるを得ない。

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(画像:環境省

 まだ行動を起こすには至らなくても関心を示す層を含めれば、半数以上が「サステナブルファッション」に関心を示していると環境省はいう。

 ファッションが、今ある人々の心にある不安を少しでも和らげるようになればいいのかもしれない。それをどんなトレンドワードにすれば、いいのかわからないが、何も他の産業と同じように二酸化炭素削減ばかりを強調しなくてもよいのかもしれない。気づけば、そんな活動に参加していたみたいな自然な流れが出来上がればいいのかもしれない。

 

 

 ポリエステルは衣服全体の6割に使用される主要原料と言われる。そのポリエステルのケミカルリサイクル技術のライセンスに向け、伊藤忠商事帝人日揮ホールディングスの3社が共同協議書を締結するという。伊藤忠商事によれば、繊維業界の幅広いネットワークを持つ伊藤忠商事の強みを活かし、廃棄されるポリエステル繊維製品を原料としたポリエステルのケミカルリサイクル技術の国内外へのライセンス展開や、コスト効率に優れたケミカルリサイクルシステムの構築を検討するという。

www.itochu.co.jp

 素材系も「サステナブルファッション」を後押しするようだ。

 ファッション業界がそろそろ「サステナブル」をリードしてもいいのだろう。 

 

【太陽光と分散型電源】テスラが太陽光パネルと蓄電池のセット販売を始める理由

 

  米国も脱炭素に向けエネルギーミックスで苦慮しているのだろうか。「自然エネルギーの土地利用の問題、貯蔵の必要性、断続性の問題などから、自然エネルギーが国の主力電源になることに多くの専門家が夢物語と考えているとTechCrunchが指摘する。

 広大な土地がある米国でさえそうならば、国内で、同じような議論があっても不思議ではないのかもしれない。そこに原発再稼働の問題が複雑に絡み合う。

 

 

 EVメーカテスラのCEOイーロン・マスク氏が22日、Teslaのソーラーパネルは、バッテリーとのシステムとしてのみ販売されるとツィートした。

家庭を分散型発電所にして、エネルギーの生成と蓄電、そして電力を電気会社へ売電できるようにしたい」と考えているとTechCrunchがその内容を解説する。

 それは彼の信念なのかもしれない。「物理学的には、送電、定置用蓄電池、エネルギー生成には太陽光や風力が有利だ」と主張し、自然エネルギーを活用した蓄電システムに有用性を説いているという。

 マスク氏の主張は、電力会社自身が再生可能エネルギーとストレージを使って脱炭素しようと思ったら、今よりももっと多くの送電線と発電所と変電所が必要になるというものだ。

それに対してテスラの製品を使う分散居住地区システムならもっと良い方法を提供できる (出所:TechCrunch)

 この主張は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の最近の研究にも裏づけられているそうだ。

jp.techcrunch.com

電力会社と規制当局は、住宅の屋根に設置されたソーラーパネルなど、いわゆる「分散型エネルギー資源」が大量に流入した場合に、どのように対処するかを解決する必要があるが、これは電力会社の長年のビジネスモデルとは相反するものだ。 (出所:TechCrunch)

 どこかで聞いたことがあるような話だ。既存の電力システムを議論の起点にするから、問題が複雑化するのかもしれない。 

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 テスラは、太陽光パネル(タイル)「ソーラールーフ」と蓄電池「パワーウォール」をセット販売し、EV電気自動車をこのシステムで充電すれば、ゼロエミッション「脱炭素」で走行することができる。

 そこで生じる余剰電力を売電し、VPPでコントロールできれば、古ぼけたビジネスモデルにしがみつくより、脱炭素への近道になるとマスク氏は考えているのだろうか。個人宅用太陽光パネルと蓄電池が普及すれば、もしかしたら、テスラがVPPに進出することもあり得るのかもしれない。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 脱炭素目標達成のため、太陽光発電など再生可能エネルギーを増やしていくことが求められている。しかし、その設置には景観問題など様々な問題があることも指摘される。

 

 

 一方で、 国立競技場の屋根にはカネカ製のシースルー太陽光パネルが採用され、施工した大成建設は、ビルや建物の外壁・窓で太陽光発電する外装システムを開発し、都市型ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の実現を目指している。

 AGC製の太陽光パネルは高輪ゲートウェイ駅に採用され、採光性を確保したデザインを両立させたという。

 東芝は、透過型の高効率・低コスト化に対応したタンデム太陽電池の開発を続け、充電なしのEVの実現を目指しているという。目標は「シリコン並みの価格で効率30%台」だといい、実用化目標を2025年にしているそうだ。

xtech.nikkei.com

 高効率化ができれば、同じ出力であっても少ない面積で済み、設置場所の制約が軽減されるかもしれない。

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 国内メーカにもテスラのマスク氏のような発信力と創造力があれば、家庭など様々な分散型発電所を中心にしたビジネスモデルが想起に成立するようになるのかもしれない。

 

  

「参考文書」

www.taisei.co.jp

www.agc.com

【サステナブルとプラクティカル】実用化なくしてカーボンニュートラルは実現しない

 

 気がつけば、国内のコロナの累計感染者が57万人を超え、累計者数も1万人を超えている。率に置き換えれば、小さな数字になるが、 その数だけ苦しみや悲しみが存在する。気が滅入る現実だ。

 問題が生じれば、解決すべき課題が浮かび上がってくる。それが社会的な課題と認知されれば、ビジネスで解決しようとする人たちが現れる。

 PCR検査の全工程(検体採取を除く)を自動化し、フル稼働時の処理能力12万件/日になるサービスを三菱重工が始めると日本経済新聞が報じる。

 それによれば、約80分で感染の有無を判定できるという。費用は1件1万円前後で、5月中にサービスが始まるそうだ。

www.nikkei.com

 川崎重工は医薬業界向けのロボット製造の知見を活かし、初めて感染症の検査受託サービスに乗り出すことになるという。

 

 

 国がカーボンニュートラルの達成を目標にすると、温暖化防止が社会課題として認知され、その解決に向け企業が一斉に動き出すようになる。

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三菱UFJが既存の石炭発電設備の拡張にも融資を実行しないと発表した。

 それによれば、「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を改定、 改定前は新設の石炭火力発電所を対象に融資を実行しないとしていたが、今後は新設に加え、既存発電設備の拡張も対象とし、融資を実行しないという。

 ただ、パリ協定目標達成に必要な「CCUS」、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所に限定し、個別に検討、対応するという。

jp.reuters.com

 国内でも石炭火力新設を取りやめるケースが散見されるようになってきた。こうした活動の影響もあるのだろうか。

 

 

 トヨタ自動車の豊田社長が、自動車工業会会長の立場で22日、会見を行ない、メッセージを発した。

「日本らしいカーボンニュートラルの道筋」に言及し、運輸における、EVなどの電動車によるカーボンニュートラル施策に疑問を投げかける。

 その日、トヨタは「水素エンジン」技術開発にモータースポーツを通じ挑戦すると発表しているた。

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(写真:トヨタ自動車

 トヨタによれば、水素エンジンは、ガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させることで動力を発生させるものだという。微量のエンジンオイル燃焼分のCO2を発生させるが、走行時にCO2は発生しないという。

global.toyota

 

 自工会の会見では、「カーボンニュートラル燃料」について言及、こうした燃料が今街中を走るガソリン車などのカーボンニュートラル化に必要と指摘する。

今、エネルギー業界では水素からつくる「e-fuel」やバイオ燃料など、「カーボンニュートラル燃料」という技術革新に取り組まれております。

日本の自動車産業がもつ、高効率エンジンとモーターの複合技術に、この新しい燃料を組み合わせることができれば、大幅なCO2低減というまったく新しい世界が見えてまいります。 (出所:トヨタイムズ)  

dsupplying.hatenablog.com


 ガソリン車の販売を禁じれば、いずれ電動車シフトは進み、脱炭素に近づく。そうした政策を実行できる国が増えればいいのかもしれない。ノルウェーのような先例もある。

 ノルウェーでは、プラグインハイブリッドを含め昨年の新車販売の75%に達しているという。

 一方で、まだ電化されず、電気を使うことが出来ない人々がいるのも現実だ。そうした地域にも、もしかしたら、車は走っているのかもしれない。一からインフラを整備し、普及させるのには膨大な時間がかかる。それよりは既存設備を流用できるシステムがあってもいいのかもしれない。

 新しい技術が生まれ社会課題が解決が向かうのかもしれないが、そこには新たな課題が生じるのかもしれない。

 EVでいえば、すべての人々がEVを利用できるとは限らない。それでいいのだろうか。

サステナブルだけではなく、プラクティカル(実用的)でもあること」と豊田会長は話したそうだ。

toyotatimes.jp

 EVシフトという計画を進めつつも、それが実現化されるまでの間、カーボンニュートラルを穴埋め技術も必要になる。バイオ燃料という現実解があるのだからその普及計画も必要なのかもしれない。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 目標、目的が共有化されたなら、その次は現実的な解、確実に実行できることからやっていくことも求められるのかもしれない。

 

【気候変動と脱炭素】根拠なき思いつきの削減目標46%でいいのか

 

 2030年の温室効果ガス削減目標が46%と国が発表した。国連(IPCC)が示している2030年の目標に近いという。

IPCCによれば、世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量を2010年比で2030年に45%削減、2050年にゼロにすれば66%の確率で1.5℃の上昇にとどめられる。(引用:特定非営利活動法人気候ネットワーク

 先の気候変動サミットでも世界の多くの国々が削減目標をアップデートし、協力して地球温暖化対策に立ち向かうということだろうか。

 

 

 政府が示した目標も、2050年の地球の平均気温1.5℃以内に収めようとする目標達成のための国家としてのコミットメントということなのであろう。

 こうして示された目標を、実際に排出削減に取り組む企業はどう見ているのだろうか。気になるところだ。実現困難と見る向きが多いのだろうか、それとも楽観論とは言わないでも安堵を感じる企業もあったりするのだろうか。

 多くの企業が2050年のカーボンニュートラル、2030年の削減目標を表明するようになり、濃淡様々ではあるが、そうした数字を見れば、決して到達不可能な数字というわけでもなそうだ。

 

 

2030年CO2半減を目指す東京電力

 東京電力は昨年11月に、「2030年度までにCO2排出量を2013年度⽐で半減」する⽬標を設定したと発表した。原発稼働などの条件は付くが、排出量が多く、その40%を占めるエネルギー分野であっても、50%までは挑戦できる数字であることが示された。 

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(資料:東京電力ホールディングス

CO2排出が多い鉄鋼の雄 日本製鉄は30%削減へ

 産業界で最も多く温室効果ガスを排出する日本製鉄は、2030年のCO2総排出量30%削減の実現を目標に定めた。

 日本製鉄によれば、現⾏の高炉・転炉プロセスでのCOURSE50(製鉄所内発生水素吹込み)の実機化、既存プロセスの低CO2化、効率生産体制構築等によって、対2013年⽐30%のCO2排出削減を実現するという。

 実用化していなかった技術を早期に立ち上げることが課題ということなのだろうか。

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(資料:日本製鉄

 推測に過ぎないが、得てしてこうした目標はコンサバに設定するのが常のだろう。どれだけストレッチできるのか、それを問い続けていくことも必要であろう。 

 

 

削減目標はどうあるべきだったのか

 国立環境研究所の温室効果ガスインベントリによれば、 2013年の二酸化炭素(CO2)排出量はで13 億 1800 万トン。

 それに対し、2019年度の排出量は11億800万トン。発生別にみればエネルギー部門が39%を占め、次いで産業部門が25%を占める。家庭部門は5%あまりと少ないが使用別でみれば、14%になっている。

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(資料:国立環境研究所「温室効果ガスインベントリ」)

 発生別でみれば、エネルギー、産業、運輸で82%を占めているのだから、大所からせめれば、ある程度の今後の排出量予測は立てることはできるのだろうか。

 一方、使用別でみれば、産業、商業、家庭での比率が高い。こうした分野で省エネを進めなければ、温室効果ガス削減にアシストすることはできない。

 まずはエネルギー基本計画でどのようなエネルギーミックスが提示されるのか。脱石炭など色々と外堀は埋められつつあるので、原発再稼働が次の焦点になりそうだ。一方、脱原発の意見は根強く無視しえない。温室効果ガス削減を第一義とすれば、脱原発の場合のバックアップ策が作れるか焦点にもなったりするのだろう。

 

 

 こうした状況を鑑みれば、積み上げ方式で目標を作るよりは、バックキャスト方式で目標を作ったほうがいいのかもしれない。現状分析し、認識されるギャップを課題とし、その課題解決の為の計画を作り、PDCAを回して丹念に実行していく。計画が成就となれば、地球温暖化に少し近づくが、計画通りに進むぬことも想定していくべきなのだろう。そうであれば、バックアップ策を同時に進める必要も出てくる。

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 報道にあるように、目標達成は簡単なことではなく、様々な課題があるということなのだろう。とはいえ、それを難しいといってしまえば、地球温暖化防止が遠退く。

 政治のリーダーシップが必要なのかもしれない。みなが納得できるような丁寧な説明と説得が必要になっているのだろう。

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 目標が示されれば、いつものように批判は増える。政府を擁護する気はさらさらないが、IPCC提言に近く、まずは国際社会では認められる目標であったのだろう。

 ただ、スピード感に欠け、根拠不十分との印象はあるのかもしれない。大臣の失言もあれば、なおさら不信感は募ったりするのだろう。

jisin.jp

 こうした目標も政治がらみになれば、国際情勢や様々な思惑やしがらみが交錯するのだろう。しかし、そうであっても温暖化防止のための温室効果ガス削減という第一義をもう外すことはできないはずだ。

 政治家は襟元を正し、丁寧な情報発信に努めて欲しいものだ。

 

【活気づく脱炭素】郵便局でも太陽光発電、EV充電器も設置へ

 

 日本郵政グループが、東京電力と戦略的提携を結び、カーボンニュートラルを推進すると発表した。

 政府指針に沿い、「2030年度までに温室効果ガスの2019年度比46.2%削減を目指す」という。

 郵便局太陽光発電設備を導入し自家消費することにより購入電力量を削減、電力は再生可能エネルギーへ切り替える。普通、急速充電器を設置し、急速充電器は、集配用EVのみならず、来局するお客さまや企業など向けにも提供するという。また、集配用EVのバッテリーは災害時における停電への備えとするそうだ。

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(資料:日本郵政

 問題が多いもの同士が組み合わせれば、何か新しいものが生まれたりするのだろうか。四則演算でもマイナス同士を乗じればプラスになる。

 この実証実験を今年秋から沼津郵便局と小山郵便局の2か所で実施するそうだ。

 

 

 政府が「2030年の温室効果ガス削減目標46%」を発表し、小泉環境相は住宅への太陽光パネル設置義務化に言及した。

 「未利用の土地に徹底的に太陽光を使っていく

 JIJI.comによれば、小泉環境相が官庁の建屋の屋根に太陽光パネルがないことを指摘、「公共分野の建物の屋根はだいたい太陽光パネルが置いてあるという未来をまずつくる」と、インタビューで話したという。

www.jiji.com

 再び太陽光発電が注目されるようになり、その設置が急速に進んでいくのだろうか。

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 NTTが2030年度までに自前の発送電網を整備し、再生可能エネルギー事業に本格参入すると日本経済新聞が報じたのは昨年6月のことだった。

 それによれば、全国約7300の電話局の大半に太陽光パネルと蓄電池を設置、「電話局を中心とするマイクログリッド」が生まれるという。設営される「自営線」では「直流」で送電するとしていた。 

dsupplying.hatenablog.com

 NTTは今年1月、千葉県でその実証実験を始めると発表、それによれば、NTT東日本の通信施設敷地内の遊休地に太陽光発電設備と蓄電池を設置、避難所に指定されている白井中学校へ「自営線」により「直流」で供給するという。

 

 

 伊藤忠商事などが出資する企業は、太陽光パネルとEV用充電設備をセットで設置する事業を2019年から始めた。

 日本経済新聞によれば、店舗側の費用負担はなく太陽光発電を使うため充電の料金は通常より約2割安くできるそうだ。

 沖縄電力は、戸建住宅のお客さま向けに、太陽光発電設備と蓄電池を無償で設置し、電気を供給する「かりーるーふ」というサービスを4月1日から開始した。

dsupplying.hatenablog.com

 こうしたサービスはどのくらい普及しているのだろうか。 この先、さらに拍車がかかることになるのだろうか。

 

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 EVをつくるテスラも家庭用太陽電池パネル「ソーラールーフ」を製造販売している。

「ソーラー・ルーフ」は全天候型の強化ガラスでできたタイルです。

そして従来の屋根瓦の3倍以上の強度を持つ上、保証期限が25年というプロダクトとなっています。

屋根で集めた太陽エネルギーは、テスラのインバーターを通じて家庭用バッテリーに蓄積され、夜間や停電時に利用することができます。そしてシステムの制御や管理をスマホ用アプリで行なうことができます。 (出所:GIZMODO

www.tesla.com

 かつてテスラとパナソニックが蜜月だったころ、このパネルにパナソニック太陽電池セルが使われる予定だったが、中国製に替わったという。

 パナソニック太陽電池製造から撤退と発表したことをふと思い出す。続けてくれていれば、今頃はもっと活気づいていたのかもしれない。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

 

 

 

 

【気候変動サミット】「削減目標50%への挑戦」は企業など290社の声を聞入れたのか

 

 米国が主導した「気候変動サミット」が閉幕した。各国が新たな目標を公表した。米国は2030年までの温室ガス排出削減目標を50~52%に引き上げ、中国は石炭消費量を段階的に削減する方針を明らかにし、ブラジルはアマゾンの違法森林伐採根絶に言及した。

 日本は、2030年の温室効果ガスの排出量を46%削減(2013年比)する目標を示し、「50%の高みに向けて挑戦を続ける」とするとした。

 

 

 久々に世界が足並みを揃え、この問題に立ち向かっていこうと共有されたのだろうか。

同床異夢の協力」と日本経済新聞はいう。「米国は国際社会での指導力回復をめざし、中国は緊張緩和の足がかりにしたいとの思惑がある」と指摘する。

www.nikkei.com

呉越同舟」、仲の悪い米中も、気候変動という災難を前にすれば利害は一致し、協力することもできるということでもないのかと感じる。

 気候変動サミットも「大義」の捉えどころを変えれば、見解もそれぞれに異なる。思惑があって開催されたサミットであっても、表向きの「義」は気候変動問題の解決を目指すものであって、目標が明快だからこそ、表面上の協力を引き出すことができたりする。

 こういうときは深読みしてイデオロギー的な対立を助長する文章はあまり好ましくないように感じる。対立があっても、気候変動では協力関係を維持、切磋琢磨、競争し合って問題を解決してもらわなければ目標達成が困難になる。そうならないようにすることがサミットの目的でもあったのであろう。

 そうは言っても競争すれば、覇権争いが生じるのかもしれない。それをコントロールしていくのが政治的手腕ということなのだろう。

 今回は米国の呼びかけに応じて、中国が同じ舟に乗り込んだ。舟が小舟であれば、転覆させるような大きな争いは起きないものだ。出航前から、周りがとやかく口出しし、ことを大きくしたり、波風を荒立てないことのほうが賢明だろう。そうした方が問題解決に近づく。

 

 

 気候変動サミット開催前の19日、 JCI気候変動イニシアティブが「パリ協定を実現する野心的な2030年目標を日本でも」とのメッセージを公表した。政府に「45%を超え、50%削減へのチャレンジを」との書簡を送付したという。

  このメッセージには290団体(企業 208、自治体 22、その他団体・NGOなど 60)が賛同したそうだ。

japanclimate.org

 奇しくも、政府発表はJCIのメッセージに近い。JCIのロビー活動が功を奏したのだろうか。

 今回の気候変動サミットでの目標共有で、ようやくみながスタートラインに並んだということなのだろう。目標を達成し、地球温暖化を遅らすことが出来るか否かはそれぞれの国、そして、企業や個人のこれらからの努力によるのだろう。

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 JCIのメッセージに290もの団体が賛同していることは心強いことなのかもしれない。それぞれが共有された目標に向け、行動すれば自ずと目標達成に近づいていく。

 ただ残念なことに排出量が多い産業はこのメッセージに賛同していないようだ。

 

 

 コロナ対策も、気候変動と同じなのかもしれない。

同床異夢」、みながコロナを封じ込めたいと願うのだろうけど、それぞれがみている夢は違うのかもしれない。

呉越同舟」、様々な思惑と違った夢を描いていても、利害が一致、理解、共有できば、互いが協力できるもの。変に深読みして揚げ足取りをしてもあまり意味がないのかもしれない。いつまでも悪い状態が長引くばかりだ。

 明日25日から三度、緊急事態宣言体制となる。感染拡大は収束するのだろうか。