Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

「地球の終わり」と嘆く柳井氏の危機感 ファーストリテイリングの「サステナビリティレポート」を読んでみる

 

 「最近SDGsという言葉をよく耳にするものの、企業活動との関連を具体的にどう捉えるべきなのか、いまひとつ釈然としない人も多いだろう」と日経ビジネスはいう。

 SDGs、2015年に国際連合で採択された「持続可能な開発目標」のことをいう。

SDGsという言葉がファッションのように流布していて、本質をよく分かっていない人も“SDGsバッジ”だけを付けている気がする。

投資家が求めるESG(環境・社会・企業統治)投資とも重なる概念があり、自分も含めて本質がよく分からない人が多いのではないか」 (出所:日経ビジネス

 

 

 

SDGs 取り組まないと「しゃれにならない」

『「SDGs」という便利な言葉が後からできた、という感覚ですね』と話される大和証券グループの田代氏の言葉が印象的だ。 

 日系ビジネスが、エール株式会社取締役を聞き手にして、大和証券グループ本社副社長のSDGs担当役員である田代副社長にインタビューする。

 大和証券グループ本社SDGsが採択前から、ワクチン債や働き方改革など社会課題の解決に取り組んできたという。

 それらは、「SDGsが掲げる健康と福祉の追求や働きがいの実現などの目標に位置付きます」という。

 

 

ただ、SDGsが掲げる項目の中で、私たちが取り組んでいなかったことも、もちろんあります。

その部分についても、「取り組まないといけないよね」と比較的素直に受け入れられました。

これまでワクチン債など社会的課題に取り組んできた土壌があったからだと思います。 (出所:日経ビジネス

business.nikkei.com

 「なぜSDGsが必要なのか」、

 「限りある地球資源の中で、人類が仲良く平和に暮らしていかないといけない」、

とエール㈱の篠田氏はシンプルな言葉で説明する。

なかでも、何度もキーワードのように出てくる言葉に「ディーセント・ワーク」(Decent Work、働きがいのある人間らしい仕事)というものがあります。

 どういう境遇であっても、人間らしく働き、人間らしく暮らすということがSDGsの根っこにあるということがよく分かります。(出所:日経ビジネス

  篠田氏はアジェンダを読んでいると、従来、公的機関だけが取り組んできた問題に、みんなで真剣に取り組まないと「しゃれにならない」という切迫感を感じられるのですという。 

 

 

 地球が今の世代で終わると嘆く柳井氏

 ファーストリテイリングが2月2日、「ファーストリテイリング サステナビリティレポート2021」を発行、公式ウェブサイトで公開した。持続可能な社会の実現に向けたビジョンと最新の取り組みをまとめたという。

  これに合わせ、柳井社長が会見に登場、「このままでは地球は今の世代で終わりになってしまうかもしれないと考えている」と述べ、「そうならないためには、全世界の人々、企業が、人類全体の将来を考えて、経済活動はどうあるべきか、地球環境はどうあるべきか、自分のビジネスはどうあるべきか、本当に真剣に考えて行動しなければいけない」と訴えたとハフポストが伝える。

 柳井氏は「グローバルの人の往来が止まり、各国の経済が停滞。世界の大国の間で政治的・経済的対立が激化し、そのことがビジネスの現場にも深刻な影響を与えている。まさに危機的な現状だと思う」と指摘。
このような状況下で必要なことは、「世界中の個人や企業がポジティブに考えて、すぐに行動し、力を合わせてピンチをチャンスにする」ことだと述べた。 (出所:ハフポスト)

www.huffingtonpost.jp

 柳井氏の言葉が、会見のたびに先鋭化しているようにも感じる。

 コロナ渦、米国での政権移行など、変化の激しいときだけに、強い危機感をお持ちになっているのだろうか。

 

利他主義

公開された「サステナビリティレポート2021」では、フランスの思想家で経済学者でもあるジャック・アタリ氏との対談が記されている。

 アタリ氏の最新著作『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』に書かれている「健康、教育、衛生、食料、農業、クリーン・エネルギー」……こういった分野が、次世代のために大きな役割を果たすことになると柳井氏は指摘する。

「そうです。「命の経済」を大事にする社会が、次世代を大事にする「ポジティブソサエティ」なのです」と、ジャック・アタリ氏は答える。

危機的な状況を経験し、それが壊滅的なかたちで終わってからでないと、人類は賢明になることができない──。

そのような見方はしかし、悲観的に過ぎます。そうなる前に、くいとめようとする力をつくり出すのが合理性であり、知性というものです。

紛争を避ける方法は多くあると考え、世界をより良い方向へと動かしてゆく、そのために行動を始める──ポジティブソサエティの根本的な考え方、姿勢とは、そういうことだと私は考えています。

人類と環境の紛争とも言える環境問題も、文化のちがいによる軋轢についても、同じです。ポジティブソサエティの根幹となる利他主義こそが、解決に向けての行動へとつながる起点であり、原動力になるでしょう。 (出所:ファーストリテイリング サステナビリティレポート2021

 

 

 

 アタリ氏は柳井氏との対談で、「独自の価値観を訴求する力と立場を持つ企業が、ポジティブソサエティのリーダーとなって社会を動かしていくことは可能です」といい、「そのような企業が、ポジティブカンパニーなのです」という。

 そして、「これからは企業姿勢の中心に利他主義を据えて、企業活動のなかでその責任を、果たしていかなければなりません」といい、「ファーストリテイリングはその一つのモデルとなる役割が与えられていると思います」と、ファーストリテイリングに期待を寄せる。

www.fastretailing.com

 

サステナブル

 ハフポストによれば、柳井氏は「サステナブルであることはすべての前提である」とした上で、「会社の存在そのものが社会をよりよくする会社になるために、我々は本気で行動することをお約束します」と強調したという。強いリーダーシップを感じる。

 ファーストリテイリングの社員たちは、どんな感情をもって柳井氏と仕事しているのだろうか。同じように本気で、真剣に「サステナブル」を考えているのだろうか。

 NHKによれば、ファーストリテイリングが初めて二酸化炭素の排出量の数値目標を示し、2050年までに事業活動で排出される二酸化炭素を実質ゼロにするとしたという。 

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 利他の精神は、お客さま、社会と目を向けさせる。それには、従業員も含まれる。そうした精神が会社一丸で貫かれれば、利他の精神を基本としたSDGs達成に近づいていくということなのかもしれない。

 

一番大事なことは、自分の気に入った服を長く愛用するということ。今年買った服が去年、2年前に買った服に合うことなんじゃないか」

と柳井社長が会見で述べたという。

 さらに、「そういうことを、小売業、ファッション産業と一緒にやっていきたいと考えている」と語ったという。

 ファーストリテイリングの社員たちは働き甲斐を感じているのだろうか。業績を見れば、そうあるようにも思う。

 

「関連文書」

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長引く緊急事態は変化の始まりになるのか

 

 JR東日本が「新幹線オフィス」の実証実験を始めたという。日本の電車の中といえば、携帯電話の使用禁止が当たり前であったが、車両限定ではあるが、新幹線車内でウェブ会議ができるようになるという。

 読売新聞によれば、車両内では、情報保護のため、周囲の音が聞こえにくくなる音楽を流すという。利用動向をみて今後のサービスを検討するそうだ。

www.jreast.co.jp

 

 

 新型コロナで様々な変化が起きている。

  

巣ごもり需要

 コロナで厳しくなる業界がある一方で、巣ごもり需要の恩恵を授かる業界もある。

 テレワークが急速に普及し始め、またリモート学習も始まり、パソコンやタブレットスマホまでが活況だという。また、家庭用ゲーム機も好調のようで、任天堂「スイッチ」が予想以上に売れ、ソニーのプレステ5も品薄と聞く。しかし、その多くは海外で作られている。コロナ前まではグローバル化が当たり前だったのだから仕方がないのかもしれない。www.bloomberg.co.jp


 歴史にifはないが、国内生産を継続できていたら、このコロナ渦も違った景色になったかもしれない。任天堂は生産の一部をシャープに委託したとブルームバーグが報じる。

 

半導体不足

 巣ごもり需要の拡大で電気製品が売れるようになったおかげか、その製品に使用する半導体が不足していると、どの業界も影響を受けているが自動車産業が深刻のようだ。各国政府まで動き、台湾に供給改善を要請する。かつて半導体王国と言われたりもしたが、今ではその多くを輸入に頼るようになってしまった。

www.nikkei.com

 国内半導体最大手のルネサスが台湾のTSMCに委託した生産の一部を国内生産に切り替えるという。電気代や材料調達費などがかさむが納期を優先したと日本経済新聞は伝える。

 

  

 

資生堂

 コロナ渦の影響で業績が悪化する資生堂が、パーソナルケア(日用品)事業をパーソナルケア事業(日用品事業)を譲渡するという。WWD Japanによれば、日用品事業には「ツバキ(TSUBAKI)」や「専科(SENKA)」「ウーノ(UNO)」など、売り上げ、知名度共に高いブランドが含まれるという。

www.wwdjapan.com

  日用品事業が国内向けに限られ、少子化による先々の市場縮小を見込んでの判断のようだ。コロナ渦が時間を早めただけのことかもしれないが、残念なことに思える。

 

延長

もっと早く収束するかと思っていたが、国内での最初の感染確認からもう1年以上経過した。第3波もようやく峠を越えたようだが、このまま収束していくのだろうか。

 政府が緊急事態宣言の延長を決めたようだ。これで仕舞になればいいのだが、なかなかそうは都合よくいかないのかもしれない。

 効率ばかり追求する経済構造を見直していくことが必要になってきているように思えてならない。

 このコロナ渦で食糧支援を受ける人が増えているという。好調な業界がありながら、それによる雇用がどこか違う国で発生しているなら、少しばかり残念なような気もする。様々なな矛盾が顕在化してきているのだろう。

 生活様式ばかりでなく、色々な変化を起こしていかなければならないのかもしれない。

 

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環境意識に変化か、温室効果ガス削減の取り組みが進んでいないとの声とパナソニックの太陽電池撤退

 

 環境への意識を調べるための世論調査NHKが実施したという。その結果、温室効果ガスの排出量を減らすための日本の取り組みについて、6割の人が「進んでいない」と考えているという。

 

気候変動は人為的なものが9割

 調査では、最近数十年の世界で起きている気候変動について最も近い考えを尋ねたところ、「大部分は人間の活動によって引き起こされている」と答えたのが51%、「自然界の変化と人間の活動の両方が同じくらい影響して引き起こされている」が40%という結果になったという。「人間の活動とは関係ない自然界の変化によって引き起こされている」と答えた人が3%、また、「世界の気候は変化していない」が1%あったという。

国際社会が温室効果ガスの排出削減を目指す中、日本の取り組みがどの程度進んでいると思うか尋ねたところ、「全く進んでいない」(8%)と、「あまり進んでいない」(54%)を合わせると62%で、「とても進んでいる」(3%)と、「少し進んでいる」(34%)は合わせて37%でした。 (出所:NHK

「世界の気候は変化していない」と回答する人が意外にも少ないと感じる。声高な気候変動懐疑派が政界から去り、温暖化対策推進を進める人たちが本流とみなされたからなのだろうか。

 

 

 NHKからのコメントはないが、環境意識が高まってきていると考えてもいいのであろうか。

 

 特選街

 商品情報誌「特選街」が、『【マイクロプラスチックと洗濯機の関係】環境を考えるなら「糸くずフィルター付き」がおすすめ』との記事を出す。

 記事は、「マイクロプラスチックスが問題となっています」といい、洗濯時に発生するマイクロプラスチックスには、日本の「糸くずフィルター付き」洗濯機をおすすめしたいという。tokusengai.com

 内容はともあれ、特選街までがこうした記事を出すような時代になったか感じた。できれば、「糸くずフィルター」で、どのサイズまでのマイクロプラスチックスをキャッチできるか調べてくれてもよかったかなと.....

 

地域に広がるSDGs活動

宮城県では、中小の食品製造販売業23社が、「食のみやぎ応援団SDGs宣言」を発表したと河北新報が伝える。食品ロスを減らす地場産品の開発や雇用環境の改善に向けて連携するそうだ。

 

 

  

 パナソニック 太陽電池撤退  

 パナソニック太陽電池の生産から撤退することが分かったと共同通信が伝える。

 旧三洋電機の子会社で02年から、太陽電池の生産を続けていたが、中国勢との価格競争で採算が悪化、赤字が続いていたという。

this.kiji.is

 仕方がないことなのかもしれないが、残念な気がする。

 国として、カーボンニュートラルを目指し、この先、発電が化石燃料から再生可能エネルギーへと、その主力が置き換わろうとしている。その構成要素を他国に頼るのはいかがなものであろうかと感じてしまう。

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 再生可能エネルギーへの転換は、脱炭素ばかりでなく、輸入に頼る化石燃料はエネルギーの安全保障の面からも意味があったはずである。折角、輸入に頼らずに発電できるはずの再生可能エネルギー。発電設備も純国産化を目指すべきではなかったのだろうか。


dsupplying.hatenablog.com

 

 SDGs、気候変動、そうしたことに少しずつ関心が高まる中、残念なニュースもある。まだ利益ばかりに目がいっているのだろうか。自ら率先して持続可能な社会を作ろうとの気骨、気概はないのだろうか。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

武田製薬が「カーボンニュートラル」を達成したその理由

 

 世界で最も持続可能性の高い100社「グローバル100」に毎年のように武田薬品工業が名前を出すという。

 今年のランキングは71位。アリナミンとか、ベンザで「タケダ」の名前は知っていたが、正直、あまり詳しくは知らない。

 つい先ごろ始まった米モデルナの新型コロナワクチンの臨床試験(治験)を行なうのも武田薬品だという。また、その供給も武田薬品が担うそうだ。

this.kiji.is

 その武田薬品が、2019年度、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成したと発表した聞き、少しばかり興味を抱いた。

 

 

 

 薬は身近な存在だが、意外にもその製薬業界は競争が激化、体力のある少数の企業しか生き残れないというのが業界の常識だという。

 国内では、武田薬品が唯一グローバル市場で通用する力があるといわれていると、ThePageは指摘する。

 

 創業239年の老舗

 2020年6月に「タケダ」は創業239周年を迎えたという。

 1781年、初代近江屋長兵衞が、幕府免許のもと、薬種取引の中心地であった大阪・道修町和漢薬の商売を始めたのが始まりだという。武田薬品によれば、薬を問屋から買い付け、小分けして地方の薬商や医師に販売する小さな薬種仲買商店であったという。

 そして、1954年、「アリナミン」の開発に成功、発売を開始したという。その頃は、戦後の食糧難からくる栄養不足が問題になっていたという。その改善のため、食品強化用ビタミンの供給を始めた。 

www.takeda.com

  

使命

 「人々の健康と医療の未来に貢献するため、何事にも誠実に取り組みこと」、それがタケダのコミットメントだと、クリストフ・ウェバーCEOはいう。

 そのタケダには、「メディカルサイエンスリエゾン(MSL)」という仕事がある。

「日々患者さんに接するドクターにお話を伺い、いまのお薬では解決できていない症状や、よりよい治療へとつながる道を切り拓く職業です」と説明する。

MSLは医学や薬学の先端知識をベースに日々ドクターと議論し、「アンメットメディカルニーズ」を探します。

それが論文や新薬に繋がる可能性もありますが、私たちが目指すのは、まだ知られていない病気や苦しんでいる患者さんをいち早く見つけることです。病で苦しんでいる人、悩んでいる人を誰一人として置き去りにしない。そんな思いを、高度な医薬学の知識で形にするのがMSLです。 (出所:タケダ ) 

www.takeda.com

  こうしたことが製薬会社の使命なのだろうか。それはまた「人の生」を探求するということなのだろうか。

 

 

なぜタケダは「カーボンニュートラル」達成にこだわったのか

 クリストフ・ウェバーCEOは「アンメットメディカルニーズ」の解決と同じように、CO2の排出量削減に取り組むという。

「人の生」とか「健康」を考えるその延長上に地球の健康もあるのだろうか。地球が健康でなければ、人の健康もありえない、そう言っているようにも聞こえる。

www.takeda.com

 

 タケダは、「今回のカーボンニュートラル達成は、2040年度までの事業活動でのオフセットなしでのカーボンゼロ達成に向けた重要なマイルストンである」という。

 今回はその達成のために、12ヵ国で30件以上の再生エネルギーやカーボンオフセットのプロジェクトに投資したという。その他にも、様々なプロジェクトを実行し、カーボンニュートラル活動を推進する。

  • マラウイにおける飲料水の浄化:新たな深井戸を掘削すると同時に、破損した深井戸を修復し、安全な飲料水を提供します。その結果、水の煮沸や浄化を目的とした燃料用木材の使用量が減少しました。
  • ワーキング・ウッドランズ・プログラム:米国テネシー州北東部に広がる8,600エーカー(34.8平方キロメートル)を上回る面積の民間所有の公園を保全し、米国の低所得地域においてレクリエーションを中心とした観光の振興を進めています。
  • 日本での森林管理:日本国内における持続可能な森林管理の実践を通じて、自然の二酸化炭素吸収を促進し、地域の大気の質向上を図ります。
  • 中国での太陽熱調理器導入:中国の辺境の地に居住する農家において、石炭に代えて太陽熱による調理器具を導入できるように投資を行いました。これにより、調理やお湯のニーズに応えるとともに、屋内の空気清浄化に寄与しています。
  • インドでの太陽光エネルギー活用:太陽光エネルギーによる照明や温水暖房の開発を支援し、インド国内の複数の州において化石燃料使用量を削減します。  (出所:タケダ)

 

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 調べてみれば、なるほど、持続可能な企業の証である「グローバル100」に顔出す理由がわかる。

 医療が、CSR社会的責務と深く結びついていることと無縁ではないののかもしれない。

 誠実に本業に取り組めば、必然やらなければならないことも明確になる、そして、その中に気候変動の問題もあるということなのであろうか。

 

 

 本来、どの業界も何かしらの社会的責務を負っている。その解決が本業ということなのだろうけれども、多くの企業がそれを見失っている、そんなことを考えさせられた。

 

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「参考文献」

news.yahoo.co.jp 

これぞ、サーキュラーエコノミー 古着が飛行機の燃料になり空を飛ぶ

 

 JALが、衣料品の綿から製造した国産バイオジェット燃料によるフライトを実施すると発表した。日本初だという。

 そのフライトは、 2021年2月4日のJL319便、13:00発福岡行を予定しているという。使用する機材はボーイング787-8型機。 

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(写真:JAL

10万着で飛ばそう!

 JALがその経緯を説明する。

 2018年10月、「10万着で飛ばそう!JALバイオジェット燃料フライト」というプロジェクトが始まったという。

 3か月の衣服の回収期間中に全国から約25万着の洋服が集まり、その集まった衣料品の綿を原料としたバイオジェット燃料の製造が始まった。

 

 

 2020年3月下旬、燃料の製造が完成、バイオジェットの国際規格であるASTM D7566 Annex 5の適合検査にも合格したという。6月中旬には既存のジェット燃料との混合が完了し、商用フライトへの使用準備が整った。

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(画像:JAL

press.jal.co.jp

 このバイオジェット燃料の製造には、Green Earth Institute㈱の技術サポート、公益財団法人地球環境産業技術研究機構が開発したバイオプロセス、国産技術を結集して実現したそうだ。

 

JALカーボンニュートラル

 JALは2020年6月、「2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す」と発表した。

 バイオジェット燃料の製造から使用までを、日本国内で完結させるこの仕組み作りに取り組めば、自身のみならず、国全体のカーボンニュートラルに貢献できる。

 

 

JALは、豊かな地球を次世代に引き継ぐ責任を果たし、地球にやさしいことが「当たり前」となるように、これからも気候変動への課題解決に挑戦していきます。 (出所:JAL

 JALは、この他にもCO2排出量の削減施策として、飛行中の空気抵抗の削減や地上移動時の片側エンジン停止などの「日々の運航での工夫」を実行するという。 

www.jal.com

 

サーキュラーバイオ™エコノミー 古着が飛行機の燃料に

 このJALが使用するバイオ燃料は、プロジェクトに参加したGreen Earth Institute㈱の技術が生み出す。

 Green Earth Instituteによれば、回収した古着の糖化からそのプロセスは始まるという。

古着(綿製品)をアルカリ処理したうえで、糖化酵素を用いて綿の成分であるセルロースを糖に変換するという。その糖を用い、コリネ型細菌を使用し、イソブタノールに変換、そのイソブタノールからイソブチレン(C4 オレフィン)を作り、そのイソブチレン同士を反応させて C8、C12、C16 オレフィンを作り(オリゴマー化)、その後、パラフィンに変換するそうだ。

 ジェット燃料には沸点範囲の規格があるという。その規格を満足させるため、蒸留装置で分留、沸点範囲を調整、さらに酸化防止剤を添加して国産初のバイオジェット燃料は作られた。

 難しそうなプロセスをいくつか経由して、古着の綿はバイオジェット燃料に変わっていく。 

 


 「世界的にはバイオジェット燃料の実用化が進んでおりますが、国産バイオジェット燃料を搭載したフライトはこれが初めてです」と、Green Earth Instituteはいう。

このバイオジェット燃料の特徴は、国内で集めた古着を原料とし、国内の複数の会社のご協力により国内の既存の設備を用いて国内技術で完成させた、いわゆる「純国産バイオジェット燃料」であることです。 (出所:Green Earth Institute)

gei.co.jp

この製造経験を活かして、その大量生産技術を確立し、一日も早い商業化を目指す

 Green Earth Instituteは、石油を原料としないグリーン化学品の開発・事業化を進め、これまでの「廃棄物」が「資源」となる「サーキュラーバイオ™エコノミー」を実現し、地球規模の環境問題の解決に資する活動をする会社だそうだ。

 

化石燃料

 資源開発最大手の国際石油開発帝石が、2050年のカーボンニュートラル、事業活動で排出する二酸化炭素を実質ゼロにする目標を発表したという。

国際帝石は世界約20カ国で石油や天然ガスの開発・生産を手がけるが、石油や天然ガスは脱炭素化で「需要の下押し圧力が強まる可能性がある」として事業構造を見直す。

天然ガスから水素を生産する事業や、地熱や洋上風力などの再生エネ事業を拡大する。(出所:朝日新聞

www.asahi.com

 朝日新聞によれば、上田社長が「今までの石油、天然ガスを中心とした会社から、新しい分野に挑戦する二面性を持った会社に変わっていく」と会見で話したという。

 少しばかり化石燃料に未練があるような響きがある。長くそのビジネスを続けてくれば愛着があるのかもしれない。

 

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 また、カーボンニュートラル宣言をする企業がひとつ増えたようだ。

 時代遅れな陳腐な技術は、新しい技術に飲み込まれていく。この先、化石燃料の需要は確実に減っていくのだろう。

 

「関連文書」

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「参考文献」

sdgs.edutown.jp


世界で最もサステナブルな企業100社 ランクインした日本企業5社は

 

「グローバル100」、世界で最も持続可能性の高い100社「2021 Global 100 Most Sustainable Corporations in the World index」が、世界経済フォーラムのオンラインイベント「ダボスアジェンダ」で発表されたという。

www.corporateknights.com

 

 

グローバル100とは

 「グローバル100(Global 100)」は、カナダ トロントの「コーポレートナイツ社(Corporate Knights Inc.)」が毎年発表するもので、 世界のあらゆる業界の大企業(2021年は8,080社)を対象に、ESG(環境・社会・ガバナンス)などの観点から持続可能性を評価し、上位100社を選出しているものだという。 

 

 

アパレルからはケリングとアディダスがランクイン

 WWD Japanによれば、アパレル企業でランクインしたのは2社、トップはケリング(KERING)の7位(前年23位)と、アディダスadidas)が76位(前年55位)だったという。 

 WWD Japanによれば、ケリングは、「環境パフォーマンス」「クリーンな収益」「クリーンな投資」の項目で業界内で最高位にランク付けされたという。

サステナビリティ指標と連動の報酬制度」(Sustainability Pay Link)では、さらに高い評価が与えられ、サステナビリティ活動の推進に関連する役員報酬についてのベストプラクティスで100%を獲得した。 (出所:WWD Japan)

www.wwdjapan.com

  そのケリングのサステナビリティは、「地球の限界」が基準だという。

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 アディダスは、「END PLASTIC WASTE」が自らの使命だというが、Global100では76位。もう少し科学的根拠に基づくものがあればいいのであろうか。

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 日本からは5社がランクイン  

 サステナブル・ブランドジャパンによれば、地域別では、米国・カナダが33社、欧州からは全体の約半数にあたる46社がランクインしているそうだ。

 アジア太平洋地域では17社、日本の5社のほか、台湾の半導体ファウンドリーTSMCなどもランクインしたという。その他地域では、南米からは2社、アフリカは1社、中東1社という内訳になっているそうだ。

日本企業5社

16位:エーザイ    32位:シスメックス
41位:コニカミノルタ 51位:積水化学
71位:武田製薬

(出所:サステナブル・ブランドジャパン)

www.sustainablebrands.jp
 

 

16位 エーザイ ESG経営の神髄

 エーザイは、ヒューマンヘルスケア 「hhc理念」を旨とし、患者様との「共感」を目指し、その「共感」が知識創造の最も重要な起点となるという。

「ESGと企業価値の実証研究」を独自に進め、ESGに関わる諸項目が経営指標にも深いかかわりがあることを突き止め、その改善を進める。

 日経ESGはその鍵をデジタル化、DXデジタルトランスフォーメーションが握っていると結論付けていた。一方、エーザイは「デジタル世界の数値、データに意味をもたらすのは、あくまで人間の創造性」という。

dsupplying.hatenablog.com

 

51位 積水化学 クリーンレベニューが牽引

積水化学によれば、クリーンレベニュー、環境貢献投資、安全、従業員の定着率などの項目で高い評価を受けたことで、51位にラインクインすることができたという。クリーンレベニューとは、環境貢献度、社会貢献度の高い製品・サービスの販売によって得た収益のことだという。 

dsupplying.hatenablog.com

 

 昨年、積水化学は、住友化学と協力、“ごみ”のケミカルリサイクルからなるサーキュラーエコノミーを推進すると発表した。

 それによれば、ごみ処理施設に収集された“ごみ”を一切分別することなく、まるごと原料にして、一酸化炭素と水素にガス化、このガスを微生物によりエタノールに変換する生産技術を開発したという。 

 こうした地道な環境貢献度の高い技術開発が評価されたのだろうか。

積水化学と住友化学、サーキュラーエコノミーの取り組みで協力

(資料出所:積水化学公式サイト「積水化学と住友化学、サーキュラーエコノミーの取り組みで協力」

 

 まとめ

 サステナブル・ブランドジャパンによれば、昨年グローバル100に入った企業のうち、26社が今回ランク外になったという。その代表例としてトヨタ自動車と独化学大手BASFを挙げる。

 トヨタ内燃機関車への依存度の高さ、BASFは気候変動対策に反対するロビー活動を行っていると英シンクタンクから指摘されたことが理由になっているようだ。 

注目企業として取り上げられているのは、低価格の新型コロナワクチンを開発・販売し、今後、世界的危機の解決に貢献するとされる英製薬大手アストラゼネカ(82位)。

このほか、米オーウェンスコーニングやトレイン・テクノジーズといったグリーンビルディングや不動産空間関連の事業を行う企業もランク内に増えてきているという。 (出所:サステナブル・ブランドジャパン

 

 

 グローバル100のような評価ですべてを明らかにすることはできないのだろうけれども、それでもランクインする会社はそうでない会社よりは差があるということは確かなことなのだろう。

 トヨタがランク外になったことからすれば、ものづくりをする製造メーカは少し不利なのかとも感じたりする。ただ、それでも数多くの製造メーカがランクインしている事実からすれば、それは言い訳になってしまうのかもしれない。 

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 2050年のカーボンニュートラルの実現が日本の目標になり、循環型経済サーキュラーエコノミーに挑戦する国内企業も増えてきているようだ。来年には、もっと多くの日本企業がランクインして欲しいものだ。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

サブスク&リサイクル ごみがなくなる日が来るまで  

 

 テラサイクル、米国生まれのソーシャルベンチャーで、マテリアルリサイクルやサーキュラーエコノミーを通してゴミの削減に取り組むという。

 そして、企業ミッションに「捨てるという概念を捨てよう」を掲げる。

www.instagram.com

 

 リサイクルは”手作業”から始まる

リサイクルって何か大きな機械に入れたら、素材が出てくるって思っていませんか?

実はリサイクルの一番最初の、一番大切な作業は人間の手で行われています。 (出所:テラサイクルジャパンインスタグラム) 

 雑多に捨てられてしまうごみ。それを資源に変えていくためには、「選別」という大切な工程を人の手に頼って行なう。その工程があるから、ごみは資源に変わっていく。

 

 

地球に恩返し 雪肌精とテラサイクル

 そのテラサイクルがコーセーとコラボして、イオンスタイル上尾の店内で使用される買い物かごを作ったという。その買い物かごには、コーセーの代表ブランドである『SEKKISEI/雪肌精』のロゴが入り、その素材の一部には、テラサイクルが日本国内の海岸で回収した海洋プラスチックごみを由来とする再生樹脂が使用されているという。

 海に漂うごみ、浜辺に打ち上げられるごみ、それらが資源に変り、カタチを変え、生活に役立っていく。

 コーセー雪肌精は「地球への恩返し」という。

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 そんな大袈裟なことでないのかもしれない。汚してしまったものをきれいにする。散らばったものを片付ける。自分の家で当たり前にやっていることを、地球という大きな棲家でもやるだけのこと。

 

 

  昨年11月、全国の「イオン」「イオンスタイル」33店舗で、『雪肌精』を対象にしたプラスチックス容器の回収プログラムが始まった。

 この容器リサイクルを担うのもテラサイクル。 

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 地球の恵みの受ける『雪肌精』として、今回のプラスチック容器のリサイクルプログラムを通じて、限りある貴重な資源を大切に、より一層、資源の持続可能な循環型社会の実現に貢献していきます。 (出所:コーセー

 一歩先行く、グローバル企業に比べてしまえば、出遅れ感も否めないのかもしれないが、それでも、サーキュラーエコノミーを始める企業が増えれば、廃棄物がひとつ減り、それが資源になり、循環していくものも増えていく。 

 

 

 テラサイクルのようなベンチャーや企業が増えればいいのかもしれない。もっと注目されるようになれば、循環型社会が近づいてくるような気がする。 

 そればかりでなく、サブスクにリサイクルを取り入れ、サーキュラーエコノミー循環型社会を目指す、そんな企業まで現れてきた。

 

循環するランニングシューズ サステナブルなサブスク

 スイスの高性能ランニングブランド「オン(ON)」が100%リサイクル可能なシューズのサブスクを始めると、WWD Japanが紹介する。 

 そのサブスクリプションサービスは「Cyclon」という。「ON」によれば、スポーツウェアの無駄をゼロにする世界初のサブスクリプションサービスだという。

 提供されるランニングシューズは、バイオベースの素材で作られた完全リサイクル可能だという。このサブスクサービスの利用すれば、リサイクルプログラムに参加することになるという。費用は$29.99.

 

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ランニングシューズ“サイクロン”は種子が食用油として活用されているトウゴマから得たバイオベース素材で、ソールは軽量かつ耐久性に優れている。幾何学模様の編み目のあるアッパー素材はオーガニックな無染色。かつ一枚の生地で作られているため縫製にも無駄がない。柔軟性や通気性など、ランニングシューズとしての機能性はもちろん、シンプルを極めた無駄のないデザインもまた、コーディネート自在でタウンユースしやすい。 (出所:WWD Japan)

press.on-running.com

 

 ロジャー・フェデラー、男子テニス界のトッププレイヤーが「ON」のファンだという。それがきっかけで、フェデラー氏は今では「ON」の投資家のひとりになっているという。

 

 

 「ON」が日本で初登場したのは2013年のこと。Forbesによればある展示会で小さなブースを構え、「ON」のシューズが売られていたという。しかし、その時、売れたのは3日間でたった16足だけだったという。

 それから2年後。オンジャパンが設立される。

 WWD Japanによれば、「ON」は流通においてもサステナブルな循環を目指しているという。このサブスクは基準を満たすまでは配送されないこともあると明記しているそうだ。

シューズの製造過程で発生する二酸化炭素(CO2)総排出量の2~5%が配送過程にあることから、最小需要量を満たす地域のみに発送し、コンテナの中にシューズが数足のみという事態を避ける。つまり、一定の需要がないと発送しないという選択に踏み切った。自分たちが住むエリアに賛同者が集まらないとスムーズな配送は見込めないのだ。 (出所:WWD Japan)

www.wwdjapan.com

 

 モノのサブスクリプションサービスを利用すれば、ごみ処理が不要となる。商品には寿命があり、その寿命がまっとうされるのとの期待もある。商品の寿命がつき、「ON」のように、サブスク事業者が適正に処理すれば、リサイクルは成立し、サーキュラーエコノミーに近づいていく。

 モノを大切に使い、そして循環させていく、そんな消費のカタチが定着していけばいいのかもしれない。

dsupplying.hatenablog.com

 

「ON」のサブスク「Cyclon」は日本でも始まるのだろうか。

 

「関連文書」

www.on-running.com

forbesjapan.com